国会代表質問で菅首相の日本学術会議任命拒否の説明が支離滅裂、矛盾だらけ!『NW9』では「説明できないことがある」と開き直り

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衆院本会議での菅首相(衆議院TVインターネット審議中継より)


 日本学術会議の任命拒否問題で支離滅裂な説明を繰り返している菅義偉首相だが、本日衆院本会議でおこなわれた代表質問では、さらに辻褄の合わない、めちゃくちゃな答弁を披露した。

 まず、代表質問に立った立憲民主党の枝野幸男代表は「総理自身の判断ではないのか。誰がどんな資料や基準をもとに判断したのか。任命しなかった理由は何なのか」と追及。すると、菅首相は「過去の国会答弁は承知している」としながらも、「日本学術会議の会員についても必ず推薦の通りに任命しなければならないわけではないという点については内閣法制局の了解を得た政府としての一貫した考えであります」とこれまでと同じ主張を展開。詳しくは後述するが、総理が任命を拒否することは「一貫した考え」などではまったくなく、この時点でもう破綻しているのだが、さらに菅首相はこうつづけたのだ。

「個々人の任命の理由については人事に関することであり、お答えを差し控えますが、任命をおこなう際には総合的・俯瞰的な活動、すなわち専門分野にとらわれない広い視野に立ってバランスのとれた活動をおこない、国の予算を投じる機関として国民に理解される存在であるべきということ、さらにいえば、たとえば民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りが見られることも踏まえて、多様性を念頭に私が任命権者として判断をおこなったものであります」

 え?「私が任命権者として判断をおこなった」って、菅首相は「(もとの推薦者名簿は)見ていない」と言い放っていたではないか。名簿も見ていないというのに、どうやって判断をおこなったと言うのか。

 しかも支離滅裂なのが、最近になって口にしはじめた「民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りが見られる」という言い訳だ。

 そもそも、日本学術会議法17条にもあるように、会員候補者の選考基準は〈優れた研究又は業績がある科学者〉であり、年齢や出身、大学を考慮することは求められていない。業績を残していることを考えれば、年齢などである程度の偏りが生まれるのは当然だろう。さらに、菅首相は今回の任命拒否の根拠にしている2018年の内閣府による文書でも「会員候補者が優れた研究又は業績がある科学者であり、会員としてふさわしいかどうかを適切に判断しうるのは、日本学術会議であること」と明記しているのだ。つまり、「若手が少ない」だの「出身・大学に偏りがある」だのといったことを理由に会員にふさわしいかどうかを総理大臣が口出しすることはできないのだ。

 だいたい、今回任命拒否された6人を外したところで、年齢のバランスや出身・大学の偏りを是正できるようなものでもない。そして、繰り返すが学術会議側から提出された推薦者名簿を「見ていない」人間が、どうしてそんなことを判断できたというのだろうか。

NHK有馬アナに「説明できることとできないことってある」と逆ギレした菅首相

 ようするに、確固たる業績のある6人を「排除」したことの理由は、「政権の政策を批判していたから」にほかならないのだが、独裁国家であることを自ら認める本当の説明ができないために、まったく道理が通らない、後付けにさえなっていない取っ散らかった嘘をつきつづけているのだ。

 実際、菅首相は所信表明演説をおこなった26日にNHKの『ニュースウオッチ9』に出演し、「民間の人も若い人、地方大学を満遍に選んでほしい」などと言い出したのだが、このとき、有馬嘉男アナが国民への説明が必要と突っ込んだのに対し、キレ気味にこう述べていた。

「説明できることとできないことってあるんじゃないでしょうか。105人の人を学術会議が推薦してきたのを政府がいま追認しろと言われているわけですから。そうですよね?」

「説明できないことをやった」と総理大臣が自ら公共放送でゲロってしまう──。まさしくあ然とするほかないが、この「説明できることとできないことってあるんじゃないでしょうか」という開き直り発言は、非常におそろしいものだ。つまり、菅首相は国民に説明できないようなことも自分の判断があれば実行できる、と言っているからだ。

 自分は国民に説明できないようなこともやってしまえる立場にあると言ってしまう、この思い上がりと強権性。実際、菅首相が現在、任命拒否の根拠にしている、前述した2018年の内閣府の文書はその最たるものだ。この文書では学術会議の推薦通りに任命する義務は首相にないとする見解がまとめられているが、当時から菅氏は自分の手下である杉田和博官房副長官を使って学術会議の人事に介入していた。この文書も安倍政権が介入を正当化するために変更させたものとしか考えられない。

 だが、菅首相の任命拒否の説明が破綻していることを示す文書も出てきている。「推薦者の任命を拒否しない」という過去の答弁と整合性がとれていないことについて、菅首相は5日のグループインタビューで、学会の推薦制だった当時から現在は個々の会員による推薦制に変更されている点を挙げて「それぞれの時代の制度のなかで法律に基づいて任命をおこなっているという考え方は変わっていない」と述べた。だが、立憲民主党の小西洋之・参院議員が入手した資料では、総務省は推薦方式が現在のかたちへと変更された2004年に〈内閣総理大臣が任命を拒否することは想定されていない〉と明記していたのだ。つまり、推薦方式の変更を理由にすることはできないのだ。

 この任命拒否問題を看過してしまえば、菅首相はさらに増長してより強権的に、やりたい放題になっていくことは目に見えている。菅首相はきょうの答弁のなかで「私はつねづね国民から見て当たり前のことを実現すべく取り組んできた」と述べたが、「国民に説明できないこと」をやってもいいなどと考えている総理大臣を、国民は当たり前だと思ってはいない。そのことを、いま国民が突きつけなければ、取り返しのつかないことになるだろう。

最終更新:2020.10.28 09:46

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