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日本学術会議任命拒否の主犯・杉田和博官房副長官「公安を使った監視と圧力」恐怖の手口! 菅政権が狙う中国並み監視・警察国家
首相官邸HPより
日本学術会議の任命拒否問題に、やはり、あの男が関与していた。杉田和博官房副長官だ。
菅義偉首相は、9日におこなわれた内閣記者会の「グループインタビュー」で、任命拒否した6人を含む、日本学術会議側が提出していた定員105人の推薦候補者名簿について「(自分は)見ていない」と、あり得ないことを言い出していた。菅首相が見ていないというのは嘘かごまかしの可能性が高いが、任命拒否の時点で違法なのにくわえ、菅首相がリストを見ていないとなれば、任命権のない者が勝手に推薦候補者を外したことになり、二重の法律違反となる。
いったい、誰がどのようなプロセスで、どんな理由で、6人の学者を任命拒否の判断をしたのか。それが焦点となっていたが、12日になって、杉田和博官房副長官の関与を複数のメディアが報じたのだ。杉田官房副長官が菅首相の決裁前に排除する6人を選別、菅首相も「今回任命できない人が複数いる」などと報告を受け6人の名前を確認していたことを政府関係者が明かしたという。
本サイトでは、早くから杉田官房副長官の関与を指摘してきたが、やはりという感じだ。
杉田官房副長官といえば、警察庁で警備・公安畑を歩み警備局長を務めた公安のエリートであり、安倍氏が内閣官房副長官だった時期に同じ内閣官房で内閣情報官、内閣危機管理監を務めたことで急接近し、2012年の第2次安倍内閣誕生とともに官房副長官(事務担当)として官邸入り。官房長官だった菅首相の最側近で、多くの政権スタッフが入れ替わるなか、菅政権誕生後も引き続き官房副長官を務めている。
官房長官時代から菅首相が官僚支配に力を注いできたことは周知のとおりだが、その中心的役割を担ってきたのが、杉田官房副長官だ。2017年からは官僚人事を掌握する内閣人事局の局長も兼務しているが、こうした表向きの人事にとどまらず、実は安倍・菅官邸は、公安警察を使って勤務時間外の役人をも監視下に置いてきた。しかも、監視や尾行、周辺の聞き込み等の行為も行われてきたといわれる。
もっとも有名なのが、前川喜平・元文科事務次官に対する監視・謀略攻撃だろう。2017年5月、加計問題を告発しようとしていた前川氏は、読売新聞に“出会い系バー通い”という謀略記事を書かれたが、これは官邸からのリークによるものだった。この報道の前年秋に事務次官在職中の前川氏はこの件で厳重注意を受けていたが、当時、前川氏を呼び出し注意したのは杉田官房副長官だった。
また、2017年6月には、韓国・釜山の森本康敬総領事が、任期途中に電撃更迭されるという異例の人事が行われたが、この異例人事の裏にも官邸による官僚監視があった。2016年12月、慰安婦問題を象徴する少女像が釜山日本総領事館前に設置されたことに対し、安倍政権は報復措置として、森本氏と長嶺安政・駐韓大使を2017年1月から約3カ月間帰国させた。電撃更迭は、森本氏がこの政権の対応について不満を持ち、官邸を批判したことが原因だったのだ。
プライベートな会食での政権批判を理由に更迭!恐ろしい官邸の監視網
しかも恐ろしいのは、この森本氏の批判が公の場でなされたのではなく、知人との会食というプライベートの席で出たものにすぎなかったことだ。官邸が森本氏の「私的な会食」での発言をなんらかの方法で掴んでいた。つまり、官邸は森本氏の発言を密告させたか、あるいは監視・盗聴の類を行なっていたということになる。
前川氏、森本氏らのケースを見れば、官邸が、官僚とくに官邸の意向に沿わない官僚に対して、監視や尾行、周辺の聞き込みなどを行なっているのはまず間違いない。
本サイトでは何度も指摘してきたが、安倍・菅官邸では公安出身の杉田官房副長官と北村滋・国家安全保障局長(2019年9月まで内閣情報官)という公安出身の警察官僚が重用され、警察組織を手足として使ってきた。この間、流された安倍政権批判へのカウンター情報や、政権と敵対する野党や官僚、メディア関係者のスキャンダルのかなりの部分は、内閣情報調査室ではなく、警視庁公安部が収集したものといわれている。なかでもこうした官僚の監視はもっぱら、杉田官房副長官が中心になって行われてきた。
「杉田氏は警察庁警備局長を務めた元エリート警察官僚で、“公安のドン”ともいわれています。退官後は、世界政経調査会というGHQ占領下の特務機関を前身とする調査団体の会長を務めていたが、第二次安倍内閣で官房副長官に抜てきされました。ただ、パートナーも棲み分けされていて、情報官だった北村NSC局長が安倍前首相に直接、報告をあげていることが多かったのに対して、杉田氏はもっぱら菅官房長官の命を受けて動き、その内容を逐一、菅官房長官にあげていたようですね」(官邸担当記者)
この公安警察による監視ネットワークはどんどん広がり、すべての省庁を完全にカバーしているともいわれている。たとえば、宮内庁については官邸が動きを把握できない、といわれていたが、それも2016年、明仁天皇の「生前退位の意向」のリークに対する報復人事で、杉田官房副長官が宮内庁トップ2の次長に警察官僚の西村泰彦氏(第90代警視総監)を送り込み、監視体制を築いた。
NHK『クロ現』国谷裕子キャスター降板でも杉田官房副長官の存在が
しかも、杉田官房副長官のターゲットは、官僚だけではない。政権に批判的なメディアやジャーナリストにもその攻撃の刃は向けられている。
代表的なのが、NHK『クローズアップ現代』の国谷裕子キャスター降板事件だ。国谷キャスターは2014年7月の『クロ現』生放送で、菅官房長官にインタビューしたのだが、当時、閣議決定されたばかりの集団的自衛権容認について厳しい質問を繰り出したことから、菅官房長官と官邸が激怒。その後、政権側は『クロ現』のやらせ問題を隠れ蓑にして圧力を強め、最終的に国谷氏のキャスター降板まで追い詰めた。
『変容するNHK 「忖度」とモラル崩壊の現場』(川本裕司/花伝社)では、NHK報道局幹部が「国谷キャスターの降板を決めたのは板野放送総局長だ」と証言。板野放送総局長というのは現在NHKの専務理事を務める板野裕爾氏のことだが、さらに、別の関係者は板野氏についてこう語っている。
「クロ現で国民の間で賛否が割れていた安保法案について取り上げようとしたところ、板野放送総局長の意向として『衆議院を通過するまでは放送するな』という指示が出された。まだ議論が続いているから、という理由だった。放送されたのは議論が山場を越えて、参議院に法案が移ってからだった。クロ現の放送内容に放送総局長が介入するのは前例がない事態だった」
じつは、こうした板野氏の官邸の意向を受けた現場介入については、他にも証言がある。たとえば、2016年に刊行された『安倍政治と言論統制』(金曜日)では、板野氏の背後に官邸のある人物の存在があると指摘。NHK幹部職員の証言として、以下のように伝えていた。
〈板野のカウンターパートは杉田和博官房副長官〉
〈ダイレクトに官邸からの指示が板野を通じて伝えられるようになっていった〉
『クロ現』国谷裕子キャスター降板、『クロ現』解体の背後にも、杉田官房副長官の存在があったのだ。
また、官房長官会見で菅首相に厳しい質問を繰り返していた東京新聞の望月衣塑子記者の身辺を、公安が探っていたというのも有名な話だ。
公安を使って政権に批判的な者を監視・排除する安倍・菅官邸
今回、日本学術会議に任命拒否された6人は、安保法制や共謀罪といった安倍政権の政策を批判してきた学者だが、杉田官房副長官による学者の言論監視・排除も今回がはじめてではない。
前述の前川喜平氏は、文科事務次官時代の2016年、文化功労者や文化勲章受章者を選ぶ審議会の人選において、大臣の了解が出ている委員の候補案を杉田官房副長官に持っていったところ、「好ましからざる人物」「この候補は任命するな」と言われ、候補者2人の差し替えを要求されたことを証言(TBS『news23』9日放送)。本サイトで2017年に掲載した作家・室井佑月との対談でも、「安保法制に反対する学者の会議に入っているから外せ」と指示されたと語っている(既報参照→https://lite-ra.com/2017/09/post-3473.html)。
このように杉田官房副長官は、安倍政権時代から公安警察を使って、政権に批判的な官僚、ジャーナリスト、学者を監視、排除してきた張本人なのだ。
杉田官房副長官の関与が確定的になったことで、あらためてハッキリしたのは、日本学術会議の任命拒否問題も、ようするに、こうした菅首相・杉田官房副長官コンビによる公安案件の延長線上にあるということだ。
警察官僚を重宝してきた安倍・菅官邸がそのルートを使って官僚や学者、ジャーナリストを監視し、政権を批判している者や不満を持っている者たちをあぶり出しているとなると、それはもはや恐怖支配というほかない。
そして言うまでもなく、誰が“反乱分子”かは、監視活動によって初めてわかる。政府による監視は、想像よりも広く実施されていると考えたほうがいい。
しかも、これは何も官僚や学者だけに限った問題ではない。たとえば、共謀罪が成立したことで、一般市民に対する警察当局の監視活動にもお墨付きが与えられた。また安倍政権は2016年にも通信傍受法(盗聴法)を改正・施行し、法的な監視権限を強化した。盗聴法改正、特定秘密保護法、共謀罪は、警察官僚(とりわけ公安関係者)らが以前から成立を熱望していたといわれているが、こうした捜査権限の底なしの拡大を許した先にあるのは、市民のプライバシーが政府に筒抜けとなる監視社会・警察国家にほかならない。
安倍政権下で進んだ監視・警察国家化 菅政権でさらに中国並みの監視国家へ
学術会議任命拒否をめぐっては、是枝裕和監督ら映画人が抗議声明を発表。〈この問題は、学問の自由への侵害のみに止まりません。これは、表現の自由への侵害であり、言論の自由への明確な挑戦です〉〈放置するならば、政権による表現や言論への介入はさらに露骨になることは明らかです〉と訴えたが、その通りだろう。
「学問をするのは学術会議だけではない、学問の自由の侵害ではない」などと嘯く冷笑系の輩もいるが、これは学問の自由の問題にとどまらない。
今回の学術会議問題は学者だけの問題ではなく、すべての国民の言論の自由にかかわる問題であり、安倍政権の8年で日本の警察国家化・監視社会化が想像以上に進んでいることの証左だ。
しかも、菅政権は任命拒否を撤回する気が1ミリもないどころか、学術会議に対する攻撃をさらに強めている。
右派連中は、学術会議が中国政府とつながっているなどというデマを盛んに喚いているが、菅政権のやっていることこそ中国そっくりのスーパー監視国家まっしぐらだということをわかっているのだろうか。
〈ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった 私は共産主義者ではなかったから〉に始まり〈そして、彼らが私を攻撃したとき 私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった〉で終わるニーメラーの警句を引くまでもなく、いま声を上げないとあっという間に手遅れになる。
(編集部)
最終更新:2020.10.15 07:01
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