ゴーンが会見で「逮捕を仕掛けた政府関係者の実名」告発を取りやめた理由! 日本政府がレバノン政府に圧力を依頼か

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カルロス・ゴーン『ゴーンテキスト ビジネスの教科書』文藝春秋


 昨日8日夜、日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏がレバノンのベイルートで会見をおこなった。ゴーン氏は自身の逮捕は「でっちあげ」であり、「ルノーとの経営統合を阻止するため、日産内部や日本政府が企てた陰謀」だと主張。逮捕や拘束時に自分が置かれた状況がいかに非人権的であるかを告発ながら、日本の司法と検察の後進性、非民主性を繰り返し批判した。

 これについては別稿で論じたいが、もうひとつ、ゴーン元会長が自分の逮捕・起訴の背後に日本政府の関係者がいたとして、「実名で告発する」と予告していた件はどうだったのか。本サイトは、ゴーン元会長が菅義偉官房長官と今井尚哉首相補佐官の名前を出すのではないかと予測していたが……。

 ゴーン氏は昨夜の会見でまず、「自分を排除しようとした主要な人物」として、日産の前社長・西川廣人氏、前副社長の川口均氏、副社長などを歴任し昨年まで監査役を務めた今津英敏氏、専務執行役員のハリ・ナダ氏、元秘書室長の大沼敏明氏、そして社外取締役の豊田正和氏という6名の日産幹部の名前を挙げた。

 こうした人物の名前が出てくるのは予測されていたことだ。ハリ・ナダ氏と今津氏、そして川口氏は、ゴーン氏の不正を調査していた日産内部の極秘調査チームの中心人物だったといわれる。大沼氏は長らくゴーン氏の秘書室長を務め、不正を内部告発した人物だが、一部メディアからは、有価証券報告書の過少記載をめぐって特捜部との司法取引に応じたと取り沙汰された。社外取締役の豊田氏も反ゴーン勢力と連携しており、ゴーン逮捕以降、マスコミに情報をリーク。〈「夜の広報担当」といった存在〉(ダイヤモンド・オンライン2018年12月11日付)になっていたといわれる。

 しかも、このうち、川口副社長と豊田社外取締役は、まさに安倍政権とのパイプ役といわれていた。たとえば、川口前副社長は、菅官房長官と非常に親しい関係にあった。川口氏は、特捜部がゴーン氏を逮捕した直後も菅官房長官を訪ねて、逮捕の報告と謝罪をおこなっている。菅官房長官には川口氏から逐一、情報を受け取り、相談をしていたとの見方が有力だ。

 また、ゴーン氏が「日本の当局との橋渡し役」という表現で名前を挙げた社外取締役の豊田氏は経産省から天下りした元高級官僚で、まさにゴーン下ろしのために経産省が送り込んだといわれていた人物だ。

 経産省は日産がゴーン体制になってから、経産省OBの天下りを受け入れなくなったうえ、ゴーン氏は途中からルノーとの吸収合併に積極的になった。そこで、日産の海外移転を防ぎ、自分たちの影響力を復活させたい経産省がゴーン下ろしのために送り込んだのが、豊田氏だったのである。

 実際、2018年6月に豊田氏が突如、非常勤取締役に就任し、その約半年後に、ゴーン会長が逮捕。そして、豊田氏は後任社長を選考する指名委員会の委員長に就任している。これは、クーデターを前提にした人事としか考えられないだろう。

 しかも、豊田氏の背後には、安倍首相の側近中の側近で、やはり経産省出身の今井尚哉首相補佐官がいるのではないかともささやかれていた。経産省時代は大きな接点はないが、今井氏が資源エネルギー庁次長を務めていたとき、豊田氏はシンクタンクの日本エネルギー経済研究所理事長として、今井氏の原発再稼働路線を全面バックアップしていた。

「今回のゴーン逮捕も、この今井=豊田ラインの連携プレーが大きな役割を果たしたということじゃないでしょうか。直接、検察を動かしたというのはないと思いますが、経産省の意向を受けて、日産のクーデター組を焚きつけた可能性はおおいにある。そして、こうした経産省や官邸の動きを察知した検察が、強引に捜査に及んだということじゃないでしょうか」(前出・全国紙政治部記者)

 しかも、経産省の関与は陰謀論でもなんでもなく、フランスメディアで経産省が日産・ルノー経営統合問題へ介入していたことを示す証拠メールが報道されている。

ゴーンはなぜ「政府関係者の実名」を明かさなかった? 会見前日、日本の大使がレバノン大統領に…

 もっとも8日夜の会見で、ゴーン氏が口にしたのは、6人の元日産幹部の名前だけで、菅官房長官や今井首相補佐官などの名前は結局、出てこなかった。菅や今井だけではない、政権幹部や経産省官僚についても一切口にしなかった。

 前述したように、米テレビ「FOXビジネス」が6日までに取材した際、ゴーン氏は自身の逮捕・起訴の背後には日本政府の関係者もいたとして、8日に予定される記者会見で数人の実名を明らかにする方針を語っていた。それを突然とりやめてしまったのだ。ゴーン氏は昨夜の会見でその理由についてこう語っていた。

「日本政府関係者の名前を挙げることもできる。だが、私はいまレバノンにいて、レバノンを尊重している。レバノン当局が自分にしてくれたことに感謝している。レバノン当局の仕事を難しくすることを望まない。なので、この部分については沈黙を保ちたい。何かを言って、レバノンの人々やレバノン政府の利益を損なうことはしたくないからだ」(会見でのゴーン氏)

 ゴーン氏はレバノン政府の利益を損なわないよう「日本政府関係者」の実名暴露を控えたと説明したのだが、なぜ、日本政府関係者の名前を出すことがレバノン政府の利益を損なうことになるのか。

 実は、ゴーン氏が会見を開いた前日、在レバノン日本大使館の大久保武大使が、レバノンのアウン大統領と会談をしている。

 朝日新聞によると、大久保大使はゴーン氏の逃亡について「誠に遺憾で、我が国として到底看過できるものではない」と伝え、〈事実関係の究明を含め必要な協力をするよう求めた〉というが、実はこのとき、レバノン政府からゴーン氏に対して「日本政府関係者」の名前を会見で公にしないよう、密かに釘を刺したのではないかといわれている。

 あるいは、日本政府が別の外交ルートを使って、レバノン政府に圧力をかけていたことも考えられる。周知のように、菅官房長官はゴーン氏の身柄引き渡しについて「様々な外交的手段を行使したい」と述べるなど、プレッシャーを強めているが、実は、日本はレバノンに対して巨額の経済支援をおこなっている。外務省HPによれば、2017年末までの有償資金協力が約130億円、無償資金協力が約69億円、そのほか約18億円の技術資金協力もしており、こうした実績を“カード”にして交渉していたとしても不思議ではない。

 いずれにしても、レバノン政府が日本政府の圧力に屈し、ゴーン氏へ「日本政府関係者」の名前を出さないように要請していたとすれば、あれだけ実名暴露に鼻息を荒くしていたゴーン氏が、突然、口をつぐんでしまったことも説明がつくだろう。

 ゴーン氏は会見の質疑応答のなかで日本政府の関与について訊かれ、わざわざ「安倍総理が関わっていたかという質問であればそうではないとお答えしたい。自分自身の言葉に気をつけなければならないので、沈黙する」と強調していた。本サイトでも伝えたように、ゴーン氏が経産省関係者も含めて実名公表を一切封印したのに、ことさら安倍首相だけを挙げて関与を否定したことは、暗に、それ以外の政権幹部の関与、そして日本・レバノン両政府間の政治的な取引を示しているのではないか。

 昨夜、安倍首相は、河村建夫元官房長官や御手洗冨士夫キヤノン会長らとの会食の席で、ゴーン氏の件について「本来、日産の中で片付けてもらいたかった」と述べたという。この発言も、裏を返せば「日産の外側」、つまり日本政府が日産・ルノーの経営統合問題に介入してきたことを、内輪の会合で思わずこぼしてしまったとも受け取れる。

 日本のマスコミのほとんどは「陰謀論で自分の罪をすり替えている」などとゴーン氏を批判しているが、ゴーン氏の主張を単なる陰謀論と斬って捨てることはできない。この事件の黒幕を徹底追及せねば、今後もグロテスクな“国策捜査”が繰り返されることになるだろう。

最終更新:2020.01.09 11:04

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