チュート徳井のADHD説をめぐる議論で欠けていること 公的手続きが極端に苦手な人たちの存在 生活保護や年金では死活問題

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徳井Twitter


 活動自粛に追い込まれたチュートリアル徳井義実の“申告漏れ”問題。会見後に、当初報じられた2016年3月期〜2018年3月期の3年分の無申告のほかに、2009年の会社設立以来1度も申告していなかった、社会保険にも未加入、個人としての申告もしていなかった……などの新事実も次々発覚し、結局、活動自粛に追い込まれた。

 徳井は「想像を絶するだらしなさ、ルーズさ」「明日払おう、明日払おうと思っているうちに、3年」などと釈明していたが、ワイドショーでもネットでも、「悪意があったに決まっている」「3年間も忘れるわけがない」「絶対に払わないという強い意志としか思えない」「悪質」「逮捕されてもおかしくない」などと批判の声は収まる気配がない。

 徳井が以前ラジオで「ドバイは税金がないから、ドバイに行きたい」「移住するなら、シンガポールかドバイ」などという主旨の発言していたことから、「ドバイの税に詳しいくせに、日本の税に無知なワケないだろ」という声もあがった。一方、「NEWS ポストセブン」は「申告漏れの裏で2億円のマンションを購入していた」と報じ、これを銭ゲバと断じているメディアもある。

 しかし、徳井の言動を精査してみると、意図的な申告漏れや銭ゲバとは言い難いものがある。

 たとえば、10月27日放送の『アッコにおまかせ!』(TBS)では、同じ吉本興行所属であり、同世代で大阪時代から仲がいいという陣内智則が、「大阪時代でもチュートリアルは売れていてお金はあるのに、ガスを止められたり電気を止められたりしていた」と証言していたが、大阪時代どころではない。

 徳井のツイートをさかのぼってみると、ブレイクして東京進出して以降も、電気やガスを止められたという記述がたびたび出てくる。

2010年6月10日〈電気が止まりました。ギガダルス。〉〈漆黒の闇と静寂の中、ロウソクを灯す。アロマキャンドルから出る香りが哀しい。〉

2011年6月11日〈未払いでした。夜中でも復旧できるんですね。ベンス。〉

2010年12月24日〈クリスマスイブ、ガスが止まった…〉

2011年6月30日〈MGT また ガス 止まった〉

2011年11月8日〈やってしまった。水道が止まった…〉

2012年8月23日〈気付けばまた料金払い忘れてて、ガスが止まっている。今日は水風呂だ。〉

 念のために言っておくと、チュートリアルは2006年末の『M-1グランプリ』に優勝し、2007年夏には東京に拠点を移している。2008年には『笑っていいとも!』(フジテレビ)のレギュラー出演をはじめ、現在も続く人気番組である『しゃべくり007』(日本テレビ)や『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ)のレギュラー番組もすでに始まっている。もちろん、これら以外にも多数のバラエティ番組はもちろんドラマやCMの仕事もしている。

 どれだけ吉本がピンハネしているとしても、この時期の徳井が、電気代やガス代の支払いに困るほどの収入であるわけがない。実際、すぐに払って復旧している様子も見て取れる。

 すでに十分に稼いでいた時期も、ガスや電気、水道まで止まっているのだ。学生時代などにガスや電気が止まった経験がある人でも、水道が止まるというのはそうそういない。しかも、繰り返すが徳井はお金がないわけではない。

 実は、こうした徳井の「想像を絶するルーズさ」について、「徳井はADHDなのでは?」という声がネットではあがっている。

 ADHD(注意欠如多動性障害発達障害)というのは、いわゆる発達障害のひとつ。ADHDはじめ発達障害は、かつては子どもの病気と捉えられてきたが、近年は成人以降も症状が持続したり、成人になってから顕在化したりと、大人の発達障害にも注目が集まっている。日本では、約400万人、成人の約3〜4%がADHDという推定もある。

徳井の行動は「銭ゲバ」ではなく、やはりADHD的だった

 大人のADHDの特徴は、不注意の症状としては「注意、集中ができず、ケアレスミスが多い」「片付けが苦手」「段取りが下手で、先延ばしにする」など。多動の症状として「落ち着きがない、そわそわする」「一方的なおしゃべりや不用意な発言」「衝動買い、金銭管理が苦手」などが挙げられる(岩波明/ちくま新書)。

 徳井の会見での「『やります』と言いながら『明日やろう』、時間ないし銀行に行ったりという作業を先延ばしにしてしまいまして。そこから延び延びになってまとめて申告しようとなったら、また申告の時期がきて、税理士から『今年はやりましょう』と。もちろん支払う意思はあったんですが、想像を絶するだらしなさ、ルーズさから3年経ってしまいました」という釈明などから、「先延ばしにする」という特徴が当てはまっているように思える。

 また、『よくわかる 大人のADHD』(司馬理英子/主婦の友社)でも、「大人のADHD」に起こりがちな問題として、「先延ばし癖」「忘れっぽさ」や「片付けられない」ことから、〈事務的なことがきちんとできない〉として、具体的に〈引越してから公共料金の自動引き落としの手続きをついつい忘れ、ガス代、水道料金、電気代、電話料金などの支払いがいつもぎりぎりになってしまいます。ややもすると、滞納しがちに〉〈確定申告の際にも、領収書がみつからず、せっかくの税金の還付の機会を逸することもあります〉などといったケースが挙げられている。これも、徳井の申告漏れや公共料金の滞納と通じるものがある。

 徳井についてはこの間、前述したように「ルーズだったのでなくケチで銭ゲバだった」として、いくつかのエピソードが報道されているが、これもむしろ、徳井が事務的な作業が苦手で、異常な面倒くさがり屋であることを裏付けるようなものがほとんどだ。

 たとえば、「節税のためにドバイに移住したい」などという発言も、たんなる逃避のための夢物語。本当に銭ゲバなら、そんな絵空事を言ってないで、少しでも税金が少なくなるよう、会社の会計や申告など細かくチェックしたりするだろう。

 2億円マンション購入も、前出「NEWS ポストセブン」によるとローンを組んでおらず、現金で購入していた。ほかにも徳井は高級車などを一括購入していたというが、これもローンにまつわるもろもろの事務手続きがとにかく面倒くさかったということではないか。

「私的な洋服代や旅行代を経費計上」したとされる問題についても、とくに何も考えずなんでも領収書をもらい、それを分類などすることもなく税理士に丸投げしていただけ、という可能性が高い。というか、そもそも「私的な洋服代や旅行代を経費計上」というのは国税の見解にすぎず、本来は「見解の相違」として税務署と交渉し経費として認められる余地もあったはずだ。しかし、徳井はすべて国税の言い分を丸呑みにしてしまった。これもある意味、「事務的な手続きや交渉を面倒くさがった」結果といえる。

公共料金支払いや公的手続きが苦手な人の多さ、新垣結衣も告白

 もちろん、徳井は診断を受けたわけでもないし、漏れ伝わるエピソードだけでADHDと断定はできるものではない。また、芸能界で成功を収め、テレビ番組であれだけ器用に場を回している徳井が発達障害なわけがない、という指摘もある。

 しかし、『あなたの隣の発達障害』(本田秀夫/小学館)によれば、そもそも、大人の発達障害の診断は明確なものではなく、〈障害の症状の軽重と社会適応の良否が必ずしも比例しない〉のだという。そして〈発達障害に関しては、行動の特徴が診断基準にばっちり当てはまらない人たちのなかにも、日常生活を送るうえで困っている人が大勢〉いるのが現実なのだ。

 実際、ネットでは徳井に対する非難の一方で、「わかる、わかる」「他人事じゃない」という声もたくさんあがっている。公共料金の支払いや納税、行政手続きの困難さや、遅延した体験を告白する人も多い。引き落としの手続きが面倒でできない、住所変更の手続きを何年もしていない、ガスや電気は毎回止められるギリギリに払う、そもそも郵便ポストを開けられない……。

 もちろん、芸能人も例外ではない。掟ポルシェがツイッターで、以前女優の麻美ゆまがインタビューで語ったことをこう明かしている。

〈チュートリアルの徳井さんが電気水道ガス代等滞納して度々止まってたんでADHD疑いかかった話で思い出したけど、麻美ゆまさんに以前インタビューした時も同じで、しかも麻美さんの当時住んでたマンションの1Fがコンビニって話聞いて震えたの思い出した。人間には出来ることと出来ないことがある。〉

 また、ガッキーこと女優の新垣結衣も、インタビューで公的支払いへの苦手意識を吐露したことがある。

「まだ子供だから、光熱費とか年金の支払いの督促状がごっちゃになってわかんない(笑)。それをこのお正月、全部お母さんにやってもらって……お嫁に行ったらお金の管理もできなきゃいけないと思うと、まだまだです(笑)」(「週刊文春」2012年2月2日号/文藝春秋)

 ちなみにガッキーは「まだ子供だから」と言っているが、当時23歳だ。

 もちろん、こうしたケースがADHDやADDに起因するものかどうかも不明だ。ただ、診断を受けているかどうか以前に、行政手続きや事務処理が極端に苦手な人というのが、一定数いるのは紛れもない事実。前掲書『あなたの隣の発達障害』によれば、発達障害には「日常生活のなかで困っていることがあるかどうか」が診断基準のひとつになっているという。また症例が蓄積されるにつれて〈当初よりも典型的ではない多彩な特徴をもつ症例が見いだされるようになり、スペクトラム概念が導入されるなどして拡大してきた〉という経緯がある。だとすれば、こうした公的手続きが苦手というのも、本人の性格ややる気の問題に還元するのでなく、何らかの障害や症状の可能性やしかるべきサポートの必要性も考えるべきではないか。

生活保護、年金支払いでは死活問題に! 公的手続き支払いのサポート体制が必要

 こういうことを言うと、「障害のせいにするのか」「発達障害だからといって納税義務を怠っていいわけがない」などと反論が返ってくるが、別にADHDだからといって納税が免除されるわけではない(そもそも徳井はすでに重加算税というペナルティを払っている)。ただ、徳井を「だらしない」「ルーズ」と叱責したり、「銭ゲバ」などと的外れな批判をして社会から排除しても、なんら根本的な解決・改善につながらない、といっているのだ。

 配偶者やパートナーがこうした事務作業を引き受けてくれたり、税金や公的保険の天引きなどこうした事務作業を会社に肩代わりしてもらっていれば、問題が顕在化することもないかもしれないが、周知のとおり、日本では非正規雇用が増加の一途をたどっている。人生のどこかで会社コミュニティをベースとしたセーフティネットから弾き出されることは、誰にとっても起こり得ることだ。

 徳井のように納税が遅れるならまだしも、事務的な手続きや役所関係の手続きが苦手ということによって、命にかかわるケースだってある。貧困をめぐるルポなどでは、苦手意識から生活保護や虐待の相談などにアクセスできない例も報告されている。

 こうしたケースでは、徳井の場合のように、税金を取り立てたい国税や税務署と違って、役所の側から積極的に捕捉しにいくわけでもない。書類がより複雑化していたり、面談で何度もダメ出しされたり、よりハードルが高いケースも多い。

 しかも、以前、本サイトでも報じたことがあるが、厚労省は年金の給付年齢を引き延ばさせたいがために、詐欺的な手口まで使っている。「年金請求書」と呼ばれるハガキを出さなければ、自動的に給付引き延ばしになってしまったり、説明チャートで「受け取る年金額を増額させますか」を選択すると「今回はハガキの提出は不要です」と、給付引き延ばしを選択するように誘導されたりといった具合だ。

 今後さらに手続きが複雑化すれば、年金をもらう年齢になっても手続きができないために年金を受け取れない人が続出する可能性もあるだろう。

 問題は今回の徳井の件でも明らかなように、「他人事じゃない」という人と、「あり得ない」という人の認識に大きな隔たりがあること。事務作業が苦にならない人にとっては、できないということが理解できず、本人のやる気の問題、自己責任で片付けられてしまう。

 また、税金の例で言えば、徳井が最終的にそうだったように国税任せにすれば税金取られ放題になってしまう。年金も払うだけ払っても受け取れないかもしれない。

 その意味でも、役所の手続きが苦手、事務手続きが苦手、という問題について、どうサポートしていくかは重要な問題ではないか。  

最終更新:2019.11.01 06:14

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