英軍ラグビーチーム靖国参拝報道を“ヒゲの隊長”佐藤前外務副大臣が「韓国のフェイク」と攻撃 フェイクはヒゲのほうだ!

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英軍ラグビーチーム靖国参拝報道にツイッターで噛みついたヒゲの隊長


 イギリス軍のラグビーチームが靖国神社を訪れたことが、イギリスで問題になり、靖国訪問を報告したツイッター投稿を削除するなどしたことは、先日本サイトでお伝えした。

 ところがこの問題について、ヒゲの隊長こと佐藤正久・前外務副大臣がツイッターで、こう噛みついたのだ。

〈靖国神社を英国軍のラグビーチームが参拝したことを英国大使が叱責したとの韓国の報道は誤報だったようです。それにしても嫌らしいフェイクニュース〉(9月21日午前9:52)

 この佐藤の投稿は、駐日イギリス大使館公式アカウントの以下のツイートを引用リツイートする形で、ツイートしたもの。

〈「英国大使はこれまでに、神社を訪問しないようにと誰かに指示したことはありません。実際、大使は今朝、英国の国際通商大臣の明治神宮訪問に同行しましたし、これまでも多くの英国閣僚と神社を訪れてきました。英国は日本の伝統と文化を尊重しています」(英国大使館報道官)〉

 このイギリス軍ラグビーチーム靖国訪問問題については、本サイトのほかに、産経新聞と韓国の中央日報も報じていたので、佐藤副大臣が「韓国の報道は誤報」と言っているのは、おそらく中央日報のことだと思われるが、これ、誤報でもフェイクでもない。

 そもそも佐藤が「韓国の報道」だという「靖国神社を英国軍のラグビーチームが参拝したことを英国大使が叱責した」というニュースは、中央日報が独自に報じたものではなく、元はイギリス・タイムズ紙の報道である。

 タイムズ紙はこの記事で、英国大使の対応について〈Members of the UK Armed Forces rugby team have been dressed down by Paul Madden, British ambassador to Tokyo, after being given a guided tour of the Yasukuni Shrine, where the country’s war dead are honoured as Shinto gods.〉と書いた。

 そして、イギリス国防省の「イギリス軍ラグビーチームの靖国訪問は公式訪問ではない」「英国政府は靖国訪問がいかに繊細な問題であるかを完全に理解している」というコメントや、英国軍ラグビーチームのイベントマネージャーであるアーティ・ショウ氏のこんな証言を伝えていた。

〈“It was very, very naive,” Commander Arty Shaw, who organised the visit, acknowledged. “The ambassador had a word or two, so we’ve been told not to visit any more shrines, just in case.”〉

 中央日報は、これらを翻訳して以下のように紹介したにすぎない。

〈ザ・タイムズの報道によると、ポール・マデン駐日英国大使は戦犯が合祀された靖国神社のガイドツアーを行った英国陸軍ラグビーチームを非難した。〉
〈今回の訪問を主宰したアーティ・ショー中佐は「非常に不用意だった。駐日英国大使が今後はいかなる神社も訪問しないように言った」と述べた。続けて「個人的には博物館は軍の歴史から現在位置までの興味深い旅程を見せてくれたが、特に複数の国に敏感な部分だということは知らなかった」とし「今は理解している」と付け加えた。〉

 しかも、記事を見ればわかるように、この発言は靖国訪問をオーガナイズした指揮官であるアーティ・ショウ氏の実名証言なのだ。それをイギリス大使館がツイッターで否定したからといって、なぜ「誤報」ということになるのか。イギリス大使館とイギリス大使のほうが日本政府との摩擦を避けるために嘘の釈明をした可能性もあるし、イギリス大使館とアーティ・ショウ氏や軍関係者とのあいだに誤解・行きちがいがあった可能性もある。

ヒゲの隊長が「英政府が靖国訪問を問題視」を否定したかのように印象操作

 さらに重要なのは、イギリス大使館が否定しているのが「いかなる神社にも行くな」という発言だけだという点だ。タイムズ記事の中心は、駐日イギリス大使が「靖国訪問を問題視しした」というものだが、イギリス大使館はそれについては一切否定していない。

 タイムズ紙の記事には、前述したようにイギリス国防省が「イギリス軍ラグビーチームの靖国訪問は公式訪問ではない」「英国政府は靖国訪問がいかに繊細な問題であるかを完全に理解している」ともコメントしているが、このコメントについては、イギリス大使館もイギリス大使も否定していない。

 ところが佐藤は、あたかも、イギリス政府が靖国訪問を問題視したこと自体がなかったかのように印象操作したのである。

 しかも、佐藤が「誤報」の根拠として持ち出したイギリス大使館のツイートには、ネグられた部分があった。ツイートには、以下のような続きがあったのだ。

〈「私たちは、ラグビーワールドカップのために訪日する多くの英国人観光客が、神社を含む日本文化の多様な面に触れることを期待しています。英国政府は靖国神社参拝に関して様々な考えがあることを理解しています」(英国大使館報道官)〉

 このツイートからは、イギリス大使館が、靖国神社と日本の伝統文化としての一般的な神社とで、明確に扱いを分けていることがわかる。イギリス大使館の否定ツイートの真意は、「靖国訪問を問題ない」とするものではなく、「靖国は問題だが、他の神社は問題ない」というものだったと考えるべきだろう。

 しかし、佐藤は前半のツイートをリツイートしただけで、この大使館の後半のツイート完全にネグり、あたかも、イギリス政府が靖国訪問を問題視したこと自体が誤報であったと言い張ったのだ。これこそ、フェイクの典型だろう。

英タイムズの報道を「韓国の報道」とデマ攻撃したヒゲの思惑

 しかも、佐藤のフェイクがさらに悪質なのは、これらがイギリス・タイムズ紙の報道であるにもかかわらず、そのことには一切触れず、前述のように「韓国の報道は誤報」「嫌らしいフェイクニュース」などと、韓国のせいにしていたことだ。

 佐藤がこれを「フェイクニュース」「誤報」と言い張るなら、タイムズ紙やアーティ・ショウ氏に対して批判を投げかけるべきだ。ところが、佐藤はタイムズ紙にもアーティ・ショウ氏にも一切触れず、「韓国の報道は誤報」と韓国メディアだけを攻撃しているのだ。

 この背景には、「韓国の報道は誤報」と韓国のせいにすることで、昨今の韓国ヘイトの燃料にしようという下心、そして、何より靖国に対する批判を、「韓国だけのイチャモン」と矮小化しようという意図があるのは明白だ。

 しかも、佐藤のフェイクにはもっと根深い問題がある。実は、靖国については、多くのネトウヨや極右政治家が佐藤と同じように「靖国に文句を言っているのは韓国だけ」という歪曲を行なってきた。

 佐藤がネグった今回のタイムズの報道はその主張がいかにまやかしであるかを証明するものだったのだ。

 本サイトが先日報じたとおり、タイムズ紙の記事は、イギリス大使館がイギリス軍ラグビーチームの靖国訪問を問題視したという事実関係だけを表面的に伝えたものではなかった。イギリス軍チームの靖国訪問がいかに不適切であったかを、靖国の歴史や日本の戦争犯罪を踏まえ、細かく解説したものだった。あらためて、以下に紹介しよう。

 たとえば、靖国神社が日本の右翼以外からはどう考えられているかを端的に説明し、戦争犯罪者が合祀されているという点を率直に問題視する。

〈日本の右派にとって、東京の靖国神社は愛国的に欠かせない場所だ。〔一方で、〕他の多くの日本人やアジアの人々にとっては、ジンゴイズム〔jingoism:盲信的、高圧的かつ好戦的な自民族優越主義的ナショナリズムの極北〕と嘘まやかしの神社であり、日本の植民地となった韓国や中国の人々を依然として身震いさせる攻撃的なナショナリズムの培養器である。〉
〈靖国は民間機関であり、政府の神社ではない。問題は、東京裁判で有罪判決を受け、絞首刑に処された東條英機を含む、14人のA級戦犯だ。彼らは1978年に密かに祀られた。〉(翻訳は編集部による。以下同)

イギリスタイムズ紙は、靖国神社の歴史修正と戦争美化を批判

 靖国神社の神職がラグビー英国軍代表を案内した遊就館が、いかに日本の戦争を美化し、史実を捻じ曲げた展示をおこなっているかについても、きちんと報じている。

〈遊就館は、特攻兵器・人間魚雷回天の潜水員などの遺物を崇敬するように展示している。パネルでは、戦争を始めた日本の責任を認めず、石油や原材料などのアメリカの制裁によって真珠湾攻撃は「追い込まれた」と主張する。
 その最も異常な主張は、南京事件と呼ばれるものについてだ。日本以外ではthe Rape of Nankingとしてよく知られている。
 遊就館のパネルには「中国軍は完全な大敗を喫して、多数の犠牲者を苦しめた」「南京市内では一般市民の生活に平和がよみがえった」というように書かれている。他方、ほとんどの外国の研究者や多くの日本の歴史家は、南京市街陥落において何万人あるいは何十万人の中国兵と女性や子どもを含む民間人が殺害されたと考えている。〉

 さらに、遊就館が日本の戦争犯罪を完全にネグっているという事実も強調している。

〈大日本帝国軍の「慰安婦」あるいは性奴隷、生きている戦争捕虜を使って生体兵器の人体実験をおこなっていた731部隊についての言及は、ここにはない。保存状態のよい泰緬鉄道の機関車が目立つように展示されているが、この鉄道を敷設させられたおびただしい数の連合軍捕虜が耐えた苦痛、そして彼らが泰緬鉄道を「死の鉄道」と呼んでいたことには一切触れていない〉

 日本のネトウヨや極右文化人たちは、「靖国を問題視するのは中国と韓国だけだ」「戦争で亡くなった人たちを慰霊するのはどの国でも当たり前」だのと吠えているが、イギリスのタイムズも指摘しているように、靖国は単なる追悼施設では決してない。国家神道の中心として侵略戦争を正当化した装置であり、戦後も、帝国主義や軍国主義を賛美する歴史修正主義の根源のひとつなのである。

 これが国際的認識のスタンダードだし、イギリス大使館もイギリス大使もこの認識は明らかに共有している。

 大日本帝国の侵略戦争正当化の装置である靖国神社と、日本の伝統文化としての一般的な神社との違いを明確に理解しており、だからこそ靖国とそれ以外の神社をいっしょくたに扱う「すべての神社に行かないようにとの指示」を否定したのである。

 しかし、佐藤外務副大臣は、「靖国神社=侵略戦争正当化の装置」という世界共通の認識をあえて無視し、イギリス政府およびイギリス大使館の声明を歪曲し、韓国メディアをフェイク攻撃。韓国ヘイトを煽動した。

 しかも、重要なのは、こんな人物が自衛隊出身で防衛省に影響力をもち、安倍政権下で「外務副大臣」という職をつい先日の内閣改造まで2年以上にわたり務め続けていたということだ。

 現在日本を覆う嫌韓の空気が、いかに官製ヘイト、官製フェイクによるものかが、よくわかるだろう。

最終更新:2019.09.23 06:25

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