2019年参院選ウヨミシュラン(後編)

参院選「ウヨミシュラン」選挙区編で危険性をチェック! ネトウヨ、ヘイトとの関係、人権否定、歴史修正主義 …

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参院選「ウヨミシュラン」選挙区編で危険性をチェック! ネトウヨ、ヘイトとの関係、人権否定、歴史修正主義 …の画像1
自由民主党ホームページより


 候補者の思想性や主張などをチェックし、その“極右度”を3段階の☆印で評価するリテラの「ウヨミシュラン」。すでに比例区編をお届けしたが、後編では選挙区の候補者から8名をピックアップして紹介しよう。

 ☆の数はヘイト度、影響度、危険度、キャリアなどから総合的に判断したが、結果から言うと、選挙区編も自民党ばかりになってしまった。これは、安倍自民党がそれくらいヤバイということの表れだろう。

 第二次安倍政権が誕生してからはや7年目、“安倍一強政治”のなか、誰も彼もが“右向け右”。国民はすっかり慣れてしまった感もあるが、この「ウヨミシュラン」で候補者のヘイト思想やネトウヨとの親和性、反人権、歴史修正主義を確認し、我にかえってもらいたい。(登場順は北あるいは東の選挙区から)

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中泉松司(秋田)☆ イージス・アショア配備をごまかす自民候補者の右派思想

 2013年当選組のいわゆる“安倍チルドレン”のひとり。「イージス・アショア」の配備が争点となっている秋田では、一貫して配備反対を訴える無所属新人・寺田静香氏にたいし、自民党は中泉氏の応援に安倍首相や菅義偉官房長官ら大物を投入。本人が「(配備は)良いか悪いかを言う前の段階」と明言を避けるように、争点をぼかそうという狙いがミエミエだ。
 そんな中泉氏は、日本会議や神道政治連盟の議連、みんなで靖国神社を参拝する国会議員の会などに所属する右派政治家である。前回当選時には、Twitterでネトウヨユーザーから〈秋田県は韓国と関わりがありますが、国内の嫌韓が高まる現状をどう思われますか?〉などと聞かれ、〈県議時代も現況に鑑み県立高校の韓国への修学旅行は見合わせるべきと委員会にて自民党会派として強く求める等した経験があります〉と自慢げに返答(2013年8月7日)。ヘイトを政治利用する片鱗をみせている。


丸川珠代(東京)☆☆ ネトウヨデマに乗りヘイト団体代表から応援受ける安倍チル

 第二次安倍政権で環境相や五輪担当相を歴任。初当選した2007年参院選で、安倍首相が直々に口説き落とした、“元祖・安倍チルドレン”のひとりだ。昨年、森友問題をめぐって、佐川宣寿・元財務省理財局長へ「安倍総理からの指示はありませんでしたね?」などと聞いた喚問が、“誘導尋問”として大きな批判を浴びたのも記憶に新しい。
 いまとなっては信じられないかもしれないが、実は、丸川氏はある時期まで、リベラルなスタンスの発言をするタイプの人間だった。たとえば、テレ朝時代の2003年に刊行した金子勝・慶応大学教授との共著『ダマされるな! 目からウロコの政治経済学』では、当時の小泉政権によって進められていたネオリベ的な小泉改革や、米国ブッシュ政権によるイラク戦争の強行などを鋭く批判していた。
 ところが、前述のとおり安倍首相に見初められ、安倍チル議員になると、その丸川氏が日本の核武装について「検討を始めるべき」(2007年参院選候補者アンケート、今回は「検討すべきではない」と回答)と主張しだすなど右旋回し、さらには「辻元清美が乗ったピースボートが自衛隊に護衛を要請した」というネトウヨが流したデマをしたり顔で語る(自民党のネット番組『Café Sta』2015年7月)など、みるみるうちにネトウヨ化。
 今回の選挙選でも、「日韓断交」などを掲げるヘイト政治団体代表の鈴木信行が応援に駆けつけている。鈴木氏および氏の事務所のツイートによれば、鈴木氏は〈葛飾自民党からのお招き〉で丸川氏の演説会に出席。その場で「応援者」として紹介されたという。安倍首相の寵愛を受けてますます極右化していく丸川氏。ネトウヨやヘイト界隈が秋波を送るのには、それだけの理由があるということだ。

塚田一郎(新潟)☆ 櫻井よしこが応援する「安倍麻生道路、忖度」議員

 第二次安倍政権で国土交通副大臣を務めたが、例の下関北九州道路構想をめぐって「総理とか副総理が言えないので、私が忖度した」なるトンデモ発言で辞任したのは記憶に新しいところ。塚田氏は、日本会議議連や神政連議連、靖国議連に所属。実際、昨年には副大臣として靖国を参拝しているほか、軍事増強や自衛隊の国防軍化を訴えてきたタカ派政治家だ。元在日会幹部が代表を務める慰安婦否定団体「なでしこアクション」主催の院内集会(副題には「強制連行も性奴隷も事実無根」)に出席したこともある。本サイトでジャーナリストの横田一氏がレポートしているように、塚田氏の選挙応援に“極右の女神”こと櫻井よしこ氏が登場。櫻井氏が応援演説で繰り出したのは慰安婦問題をすべて朝日新聞の「誤報」のせいにして打ち消そうとする、お得意の歴史修正主義だった。どうやら極右界隈から熱い視線を送られているようだ。


世耕弘成(和歌山)☆☆ 生活保護受給者への「人権制限」主張する安倍最側近

 第二次安倍政権で官房副長官や経産相を歴任。安倍首相の側近にして、日本会議議連、神政連議連所属のタカ派だ。最近では、韓国への輸出規制をめぐって木で鼻をくくるようなコメントの数々が記憶にあたらしいところだが、世耕氏で注目したいのは、あまりに過剰な自己責任論の押しつけである。
 世耕氏は以前、自民党の生活保護に関するプロジェクトチームの座長を務めていたのだが、「週刊東洋経済」2012年7月7日号に掲載されたインタビューで、生活保護制度見直しについて“人権が制限されてもしかたがない”と語っている。
「見直しに反対する人の根底にある考え方は、フルスペックの人権をすべて認めてほしいというものだ。つまり生活保護を受給していても、パチンコをやったり、お酒を頻繁に飲みに行くことは個人の自由だという。しかしわれわれは、税金で全額生活を見てもらっている以上、憲法上の権利は保障したうえで、一定の権利の制限があって仕方がないと考える」
 実は、これは生活保護に限った話ではない。自民党の2012年改憲草案や特定秘密保護法などの安倍首相肝いりの法律からもわかるように、今の政権は、個人の自由や権利をどんどん制限する方向へと進んでいる。そのことを再認識すべきだろう。

西田昌司(京都)☆☆☆ ネオナチとツーショット、沖縄ヘイトを擁護

 慰安婦問題を否定する歴史修正主義など、典型的な極右政治家である西田氏だが、もともと、第一次安倍政権時に安倍首相の考えに共鳴して国政に初出馬・当選した安倍シンパ。2014年には高市早苗衆院議員、稲田朋美衆院議員と同じく、ネオナチ団体代表とのツーショット写真を撮っていたことが判明し、海外からも大きな批判を浴びた。
 その感性は、差別意識・陰謀論・男尊女卑のネトウヨを地でいく。たとえば、2013年12月には「チャンネル桜」に寄せたビデオレター内で、特定秘密保護法に反対する人びとについて、「聞くところによりますと、この方々はですね、いろいろな団体から要請を受けてですね、駆り出された、日当が出ているという話もありますけれども、とにかくそういうことが毎日やっているわけですね」などとネトウヨ陰謀論の典型である“日当デマ”で反対派市民を攻撃。2016年11月には自民党の女性活躍推進本部合同会議で、"女性の社会進出が少子化の原因となっている"という考えを示し、「女性の社会進出で、社会全体が豊かになっているとは思えない。もっと根本的な議論をしてほしい」と述べた。
 さらに、当時TOKYO MXで放送された『ニュース女子』(DHC制作)の“沖縄ヘイトデマ放送”が大きな問題となった際には、DHCシアターのホームページで公開された反論番組に出演。放送内で「反対運動を煽動する黒幕」と印象付けされ、「韓国人はなぜ反対運動に参加する? 親北派のため、米軍基地の建設を妨害している」などと国籍に対する差別まで受けた辛淑玉氏について、西田氏は「在日を振りかざしたかたちで政治発言をする。(中略)政治発言をしているにもかかわらず、また政治発言をしている人に対してね『それは差別だ』とかいう言い方でね、今度は差別問題に変えてしまうのはね、ものすごくこれは卑怯」などと“ヘイトの上塗り”をした。文句なしで☆3つの極右である。


らくさぶろう(愛媛)☆ 青山繁晴の応援受け、加戸守行元知事のデマに乗っかる軽薄

 無所属新人・永江孝子氏との接戦が予想される自民党公認の新人。全国的には誰ソレ?って感じだろうが、地元・愛媛では絶大な知名度を持つローカルタレントだ。毎日新聞による候補者アンケートでは、改憲を支持し、辺野古新基地建設を容認、同性婚を認めないなど、安倍首相をなぞる回答をしている。選挙応援には安倍首相や義家弘介センセイ、青山繁晴センセイら極右政治家が駆けつけた。この時点で☆1である。
 毎日新聞や愛媛新聞によれば、4日の出陣式では、加計問題で安倍擁護を連発した加戸守行・前愛媛県知事が挨拶に立ち、“鹿野川ダムの洪水吐の工事が旧民主党政権下で3年間凍結された”“完成していれば昨年の西日本豪雨被害は防げた”と主張、“その責任は永江氏にある”などと対立候補を攻撃し、らくさぶろう氏の事務所のブログもこの発言を掲載するなどした。だが、実際には加戸氏の主張は事実無根のデマだった(らくさぶろう氏側は市民団体から指摘を受け、17日までにブログ記事を削除している)。いずれにしても、らくさぶろう氏については思想的に“極右”かどうかというよりも、“安倍一強”の流れにのっかった候補者が当選することの危険性について考えてほしいところだ。

礒崎陽輔(大分)☆☆ 安保で10代女性に論破、立憲主義は「聞いたことない」

 第二次安倍政権で首相補佐官(国家安全保障担当)などを歴任した安倍首相の右腕。2012年の自民党改憲草案の原文を執筆したことでも知られる。もともと日本会議や神政連議連所属のタカ派だが、礒崎氏といえばやはり、2015年の安保法制をめぐって言い放った「法的安定性は問題ない」だろう。何が何でも成立ありきのトンデモとしか言いようがない。また、同年6月には、Twitterで安保法制について、〈「うちにはまだ延焼していないので、後ろから応援します。」と言って消火活動に加わらないで、我が家を本当に守れるのかという課題なのです〉なる意味不明なたとえ話を展開したのだが、これを一般ユーザーの10代女性に〈戦争と火事は全く別物〉などとあっさり論破されてしまった。このやり取りの中で、礒崎氏は〈中身の理由を言わないで結論だけ「バカ」というのは「××」ですよ〉〈あなたこそ、一から勉強し直してください〉などとブチ切れるという醜態を晒していた。改憲で日本を“戦争のできる国”に変えようとしながら、その実、憲法や法律の基本を理解していないというのは、まさに安倍首相とソックリだ。最後に礒崎氏の過去のツイートをもうひとつ引用しておこう。
〈時々、憲法改正草案に対して、「立憲主義」を理解していないという意味不明の批判を頂きます。この言葉は、Wikipediaにも載っていますが、学生時代の憲法講義では聴いたことがありません。昔からある学説なのでしょうか〉(2012年5月28日)


尾辻秀久(鹿児島)☆☆ 慰安婦問題で教科書圧力をかけた中心人物

 厚労相や参院副議長を経験したベテラン政治家。みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会(靖国議連)会長、日本会議の代表委員(平成29年名簿)も務める。1996年には、自民党が教科書への「従軍慰安婦」記載などをめぐって、内容や検定内容を見直すことなどを狙いとして発足した「教育問題に関するプロジェクトチーム」の事務局長に就任。靖国神社については大臣時代も含めて終戦記念日に毎年参拝しており、「(中韓両国から)批判されることがまったく理解できない」などと発言している(産経新聞2013年8月16日)。


安里繁信(沖縄)☆ 基地問題ごまかす自民系候補は「親学」高橋史朗とも対談

 自民・公明・維新が推薦するシンバホールディングス前会長。JC(日本青年会議所)の元会頭。対立候補の無所属新人・高良鉄美氏は辺野古新基地建設反対を強く訴え、安倍政権の方針を「民主主義の破壊」と徹底批判しているが、安里氏は「推進とは言わない」とするにとどめている。安里氏はもともと知事選への出馬が取り沙汰されていたが、情報誌「FACTA」2018年7月号によれば、菅官房長官と安里氏を繋げたのはあの元TBS記者の山口敬之氏だという。月刊「MOKU」2009年4月号では、トンデモ疑似科学「親学」で知られる日本会議の学者・高橋史朗氏と対談している。


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 前後編に分けてお届けしたウヨミシュラン、いかがだっただろうか。しかも、恐ろしいことに、ここに挙げた候補者は、ヤバい右翼思想の持ち主のほんの一握りにすぎない。極右議員は自民党にまだうじゃうじゃいるのはもちろん、日本維新の会、さらには、あのヘイト的な色合いの濃い「NHKから国民を守る党」(通称N国)も注視せねばならないだろう。

 N国は、一見すると、安倍忖度のNHKを批判するような政党名だが、実際は代表である元NHK職員・立花孝志氏が森友問題にかんする“同和利権”デマを吹聴するなどネトウヨとの親和性が非常に高い。統一地方選でN国から当選した地方議員のなかには、在特会らと行動をともにし民族差別を煽動した中曽ちづ子・川西市議など、極右レイシストが複数いる。

 しかも、N国は「泡沫」と言われながら、合計で41名の候補を擁立。比例区の議席や、政党要件のひとつである「得票率2%以上」を獲得する可能性がある。仮にこの二つを達成すると、N国に血税から政党交付金が交付されることになる。

 いずれにしても、安倍自民党を中心として、参院選後、こうした勢力が合同して、民主主義や人権を否定する政治をどんどん推し進めていく可能性があるのだ。この国はどんな未来を選ぶのか。それは有権者にかかっている。

最終更新:2020.11.21 11:53

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