失言・炎上に関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ
ミタパンも批判…自民党の「失言防止マニュアル」が酷い! LGBT差別への反省なく「強めのワードに注意」
“無反省体質”の安倍自民党(自民党HPより)
大きな批判が巻き起こっている日本維新の会所属だった丸山穂高議員による「戦争しないとどうしようもなくないですか」という言語道断の暴言。だが、これが他人事ではないのは、“暴言の宝庫”である安倍自民党だろう。実際、4月には「総理とか副総理が言えないので、私が忖度した」と発言した塚田一郎・国土交通副大臣や「復興以上に大事なのは議員」と述べた桜田義孝五輪相(いずれも当時)が相次いで辞任しているからだ。
しかし、そんななかで安倍自民党の“無反省体質”を如実に象徴するような問題が浮上した。
それは、自民党が参院選を控えて“失言防止マニュアル”を作成、党内に配布していたことがわかったからだ。
14日付けの毎日新聞Web版記事によると、これは〈自民党遊説局が2、3月に開いた研修会の要旨が「遊説活動ハンドブック」の号外としてA4判1枚にまとめられ、国会議員や都道府県連、参院選候補予定者に電子データで送付された〉もの。そのうち1枚のタイトルは「「失言」や「誤解」を防ぐには」だ。
そして、この中身があまりにも醜いものとして話題となっているのだ。
たとえば、「発言は「切り取られる」ことを意識する」という項目では、〈政治家の講演会等での発言や映像を「丸ごと」発信することは、ほぼありません。確実に一部が切り取られ報道されます。わかっているつもりでも、意外と忘れているこのポイント、あらためて意識しましょう〉と注意喚起している。
言っておくが、暴言・失言問題が自民党議員から起こるとすぐに与党議員やネトウヨは「切り取りだ」と騒ぐが、それはたんなる本質のすり替えか読解力がないだけだ。
たとえば、昨年2月に麻生太郎財務相が福岡県で開かれた国政報告会で少子高齢化問題にふれ「いかにも年寄りが悪いという変な野郎がいっぱいいるけど、間違っていますよ。子どもを産まなかったほうが問題なんだから」と語った件。あらためて指摘するまでもなく、男女問わず子どもをつくりたくてもできない不妊に悩む人びとや個人の権利として子どもをもつことを選択しない人びとに対する暴言であり、当然ながら批判の声があがったが、当の麻生財務相は発言を撤回する一方で「発言の一部だけが報道されて本来の発言の趣旨が伝えられずに誤解を与えるようになったのだと思う」などと述べた。
だが、西日本新聞が音声とともに公開した全文を見ても、切り取りでも何でもなく麻生財務相は「子どもを産まなかった」人びとを完全に「問題」として俎上に載せている。それを「切り取りだ」と反論する麻生財務相に反省の色はまったくないし、その上、自民党は失言防止マニュアルで「切り取られることに注意しよう」などと呼びかけているのだから、開いた口が塞がらない。
また、「報道内容を決めるのは目の前の記者ではない」という項目では、現場記者とは別の担当者が社内で「編集」をおこなっていると説明した上で“目の前の記者を邪険に扱わない”“親しい記者でも説明を端折ったり言葉遣いが荒くならないように”とまとめている。
これも麻生財務相に当てはまる問題だが、麻生財務相は森友公文書改ざんや財務省のセクハラ問題、麻生派の塚田国交副大臣(当時)の「忖度」発言など不祥事で記者から質問を受ける際、「大きな声で言えや!」「さっき言ったじゃねえか」「さっさと、ぱっぱとやろうや。こっちは忙しいんだから」などと責任者とは思えない逆ギレで記者を威嚇してきた。問題なのは責任が問われる立場であるという自覚のなさなのだが、自民党のマニュアルはそれも「言葉遣い」の問題に矮小化しているのである。
マイノリティ差別の防止ではなく“その場しのぎ”のゴマカシ対応を推奨
そして、極めつきが3項目の「タイトルに使われやすい「強めのワード」に注意」だ。ここでは〈表現が強くなる傾向〉があるパターンを紹介して〈自らの発言をコントロールしていくことが大切〉とし、以下の5つを挙げている。
〈【パターン1】歴史認識、政治信条に関する個人的見解⇒謝罪もできず長期化の傾向
【パターン2】ジェンダー(性差)・LGBTについての個人的見解
【パターン3】事故や災害に関し配慮に欠ける発言
【パターン4】病気や老いに関する発言
【パターン5】気心知れた身内と話すような、わかりやすく、ウケも狙える雑談口調の表現〉
呆れてものも言えないとはこのことだろう。ようするに、杉田水脈議員の「LGBTは『生産性』がない」も、麻生財務相の「飲み倒して運動も全然しない(で病気になった)人の医療費を、健康に努力している俺が払うのはあほらしくてやってられんと言っていた先輩がいた。良いことを言うなと思った」も、辞任した松本文明・内閣府副大臣の「それで何人死んだんだ」や、今村雅弘・復興相の「まだ東北で、あっちのほうだったから良かった」、桜田五輪相の「復興以上に大事なのは議員」も、自民党はすべて「強めのワードだったからよくない」と言っているのだ。しかも、「歴史認識」「政治信条」=歴史修正主義については「謝罪できない」問題だと開き直り、“思っていてもほどほどにしておけ”とでもいうニュアンスを漂わせている。
つまり、この“失言防止マニュアル”は、そもそも暴言が出る要因である弱者・マイノリティに対する差別意識や人権感覚、防災や復興を担う立場であるという責任意識の欠如を問題視すべきなのに、そうした政治家として当然もちあわせるべき知性、感受性、想像力の獲得や自覚などを促すでもなく、「発言は切り取られる」「言葉遣いに気を配ろう」「強いワードに注意」などとその場しのぎの対応しか打ち出していないのである。
三田友梨佳アナは「マニュアルが必要な時点で、国会議員の資質がない」
実際、“失言防止マニュアル”では「リスクを軽減する3つの対策」なるものも記しているが、それは〈句点(。)を意識して、短い文章を重ねる話法〉だの〈身内の会合や酒席で盛り上がるような「トークテーマ」には要注意〉だの〈「弱者」や「被害者」に触れる際は一層の配慮を〉だのという、付け焼き刃にさえなっていないような指南だけ。しかも、もう1枚のペーパーでは、演説の際の心構えとして関西のバラエティ番組のやりとりを取り上げ、「聴衆を参加させる『関西準キー局型』演説」を参考にするように求める始末(日刊スポーツWeb版15日付)。これが政権与党の姿勢だというのだから、恥ずかしいにもほどがある。
無論、この“失言防止マニュアル”に対しては疑義の声が殺到。御用メディアであるフジテレビの『FNN Live News α』ですら、メインキャスターを務める三田友梨佳アナウンサーが、このように苦言を呈した。
「必要なのはマニュアルではなく判断力なのではないでしょうか。言って良いことと悪いことの判断は、誰かに言われてではなく、自ら責任を持っていただきたいです。マニュアルが必要になる時点で、国会議員の資質とは一体何なのか、考えてしまいます」
このミタパンの的を射た指摘は、Twitterで〈正論を言うミタパン〉というコメントつきで拡散され、17日21時現在、約2万7000リツイート、「いいね」は約11万もついている。
こんな対策では、自民党議員の暴言癖がなくなることはまずもってないだろう。問題なのは、為政者が差別的な暴言を吐き、それを謝罪もせずに済ませたとき、その暴言は暴言ではないと社会にお墨付きを与えてしまうことだ。そして、「暴言の宝庫」たる安倍自民党がそうした問題にまったく無反省であることが、これではっきりとした。差別の再生産、社会への偏見の蔓延も食い止めるには、この思い上がった政党を与党から引きずり下ろすほかないのである。
(編集部)
最終更新:2019.05.17 10:09
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