安倍政権が公的資金投入した「日の丸国策企業」が中国台湾企業傘下に!“アベノミクス失敗隠し”が歪めた経営

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次々と公的資金が注入されたジャパンディスプレイ(公式HPより)


 これこそがアベノミクスの正体ということだろう。経産省が官製投資ファンド「産業革新機構」(現・INCJ)に2000億円を出資させ、ソニー、東芝、日立のディスプレイ部門を統合させて誕生した「日の丸液晶」のジャパンディスプレイが、中国の大手ファンドや台湾の電子部品メーカーなどによる企業連合の傘下に入ることが正式に発表された件だ。

 ジャパンディスプレイが設立されたのは2012年で、政府が約95パーセントを出資する事実上の「準政府機関」である産業革新機構が支援する「国策企業」だ。なかでも「民間投資を喚起する成長戦略」をアベノミクスの3本目の矢に掲げた第二次安倍政権下においては、産業革新機構を通じて次々に公的資金を注入してきた。

 たとえば、資金難に陥った2016年には「有機ELパネルの開発」を理由に転換社債と劣後ローン合わせて750億円の金融支援を決定。2017年には債務保証というかたちで1070億円を支援、2018年にもシニアローンとして200億円を融資した(4月3日衆院経済産業委員会における西山圭太・経産省商務情報政策局長の答弁による)。

 だが、こうした公的資金による支援を受けながらも、有機ELへの移行の出遅れや海外メーカーとの価格競争、アップル社iPhoneの販売低迷などでジャパンディスプレイは業績悪化の一途を辿り、2019年3月期決算で5期連続の赤字に。そして、中国・台湾の企業連合から最大800億円の支援を受けることとなり、旧産業革新機構は筆頭株主の座を譲る結果となったのだ。

 つまり、「アベノミクス」の一環として産業革新機構を通じて巨額の公的資金が注がれた「日の丸」国策企業が、ライバルである中国・台湾の企業連合によって再建をめざすという、笑い話のような末路を迎えてしまったのだ。

 しかも、だ。ジャパンディスプレイがここまで経営を悪化させてしまった原因として指摘されているのが、「安倍官邸の介入」なのだ。

「文藝春秋」2017年10月号に掲載されたジャーナリスト・大西康之氏による「深層リポート~産業革新機構がJDI(ジャパンディスプレイ)を壊滅させた」というレポートによると、シャープが鴻海精密工業に買収されたことで〈技術流出を忌み嫌う経産省〉は対抗軸としてジャパンディスプレイに“カネも口も出す”過剰な介入をおこなった。そのことがジャパンディスプレイの経営を歪めているとした上で、同社の元幹部はこう証言している。

「中国のスマホメーカーからの注文が激減し、茂原と東浦の減損処理に踏み切った時も、経産省から『アベノミクスの失敗のように見える施策は困る』と圧力がかかった。震源地は官邸でした。蘇州工場で人員削減を計画した時も『ジャパンの名前がついた会社で労働争議が起きたら政治問題になるじゃないか』と圧力がかかりました。圧力をかけたのは菅義偉官房長官に近い前商務情報政策局長(現中小企業庁長官)の安藤久佳、首相秘書官の今井尚哉ら、経産省の企業経営への介入を是とするターゲティング派とされています」

 つまり、「アベノミクスの失敗」を隠蔽するために、事業悪化の改善策が安倍首相の右腕たる今井尚哉首相秘書官をはじめとした安倍官邸の圧力によってストップがかかり、結果、中途半端なテコ入れに終わってしまったというのだ。

6つの官製ファンドが損失抱える状態、アベノミクス成長戦略の失敗例が続々

 いや、そもそも「アベノミクスの失敗」はこれだけではない。安倍首相は第二次政権発足後から官製ファンドの新設と拡大を打ち出してきたが、昨年4月には会計検査院が14あるうち6のファンドが損失を抱えた状態にあるとして問題視。産業革新機構についても、その実態は経営破綻寸前の大企業の再建にジャブジャブと公金を垂れ流すもので、今回のジャパンディスプレイにとどまらず、安倍政権が掲げた「クールジャパン政策」の名の下に数十億円の公金もドブに捨てた。

 それは、100パーセント株主として出資した官製映画会社・All Nippon Entertainment Works(ANEW)をめぐる問題だ。同社は「日本国内コンテンツのハリウッド・リメイクを共同プロデュース」を謳ってアニメ作品や映画などを米国で実写化することを目的としていたのだが、そのほとんどが事実上の企画倒れになる一方で、莫大な赤字を垂れ流していたが、産業革新機構は2011年から2014年にかけて、少なくとも約22億円を拠出。ところが結局、2017年5月にはANEWを二束三文で民間に売却したのだ。

 その上、産業革新機構から改組された産業革新投資機構(旧革新はINCJとして子会社化)では、昨年末、田中正明社長(三菱UFJFG副社長)をはじめとする民間の取締役9人全員が辞任。当初は幹部らへの高額報酬問題がクローズアップされたが、田中社長の辞任会見ではそれ以上に「官民ファンド」の在り方をめぐる政府方針との対立が露わになった。

 実際、田中社長の辞任会見の際、社外取締役だった星岳雄・スタンフォード大学教授は、このようなコメントを発表した。

「私の研究でよく知られているものの一つに、ゾンビ企業の研究があります。業績が悪いために正常な競争状態では市場から淘汰されるべき企業を、政府などが救済するなら、新規参入は阻害され、優良企業の拡大を妨げられ、全体の経済成長は低下してしまう、というものです。産業革新投資機構が、ゾンビの救済機関になろうとしている時に、私が社外取締役に留まる理由はありません」

 そして今回、ゾンビ企業の救済策として公的資金が投入されてきたジャパンディスプレイの中台企業連合への傘下入りによってまたも決定的となった「アベノミクスの失敗」──。統計不正問題では「アベノミクス偽装」があきらかになり、さらに5月発表のGDP(1〜3月期)や7月発表の日銀短観ではかなり厳しい数字が出ることが予想されているが、それでも安倍首相はアベノミクスを正当化しつづけるだろう。しかし、それは「虚構」だということに、一刻も早く国民が気付かなくてはならないのだ。

最終更新:2019.04.24 01:38

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