拉致問題「国民大集会」が安倍首相の礼賛大会と化す異様! 杉田水脈に声援、櫻井よしこや家族会からは石破茂批判、韓国ヘイト

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国民大集会で司会をする櫻井よしこ(救う会公式HPより)

「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(家族会)とその支援組織「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)などが毎年春と秋に開いている「国民大集会」が9月23日、東京都千代田区の砂防会館で開かれ、安倍晋三首相も出席した。

 米朝首脳会談後はじめてとなる国民大集会ということで、これまでよりも“対話路線”が強調されるのかと思いきや、実際はまったく逆だった。会場は、例年以上にヒステリックな極右運動的空気に包まれ、ひたすら安倍首相を礼賛し、総裁選で安倍首相と闘った石破茂元幹事長やマスコミを叩くという、政治集会と化していたのである。

 まず、驚いたのがオープニングだ。約1000人の参加者で満席となったホールに国会議員や地方議員、全都道府県の知事、副知事らが続々と会場に入ってきたのだが、そのなかに、あの“生産性”差別論文を発表して批判を浴びている杉田水脈衆院議員の姿があったのだ。差別論文に対する釈明に関しては「殺害予告を受けている」ことを理由に逃げ回っている杉田議員だが、こういう集会に出るのはありなのだろうか。

 しかも、信じられなかったのが、その杉田議員を支持する声が会場からあがったことだった。「水脈先生、国民は見てますよ!応援してます!」「すいみゃくちゃーん!」なる黄色い声が飛び交う様子に、いったい、これは何の集会なのかと耳を疑ったほどだった。

 そんな異様なムードのなか、最後に安倍首相が入場し、桜井よしこ氏の司会で国民大集会は始まった。ステージに掲げられているのは「全拉致被害者の即時一括帰国を!国民大集会」の文字と、大きな日の丸。主催者代表の飯塚繁雄氏(「家族会」代表)、拉致議連会長の自民党・古屋圭司衆院議員のスピーチが終わると、櫻井氏の「(総裁)三選されたばかりの力強い安倍総理にお願いをいたします」なる紹介を受け、満を持して安倍首相が登壇。会場は割れんばかりの拍手に包まれた。

 安倍首相は「6月12日に、歴史的な米朝首脳会談が行われました。米国の大統領と北朝鮮の国務委員長という2人の首脳が署名をして、文書を発出いたしました」と切り出し、2002年の日朝平壌宣言が今後の北朝鮮との交渉の基盤になるとの認識を示したうえで、なんと、まるでシンガポールでの米朝合意が自らの“お手柄”であったかのようにアピールをし始めた。

「私は4月の日米首脳会談の際に、トランプ大統領に対し、米朝首脳同士の合意を署名文書で残すことを提起したところでございまして、先般の米朝首脳共同声明は、首脳間の合意を署名文書の形で確認した、大変重みのあるものになったわけでございます。そうした前提の上に、トランプ大統領は相互の不信の殻を打ち破り、相互の信頼を醸成することで、共に問題を解決するという新しいアプローチを採ったということだと考えています」

 いったい、この男、何を自慢しているのか。「トランプ大統領に米朝の合意を署名文書で残すことを提起した」って、首脳会談をやっているんだからあんたが言わなくたって、普通、文書に残すだろう。

 そもそも、安倍首相は、米韓が北朝鮮との対話を進めてきたこの間、自分が何をやってきたのか、覚えていないのか。ひたすら北朝鮮を非難して「圧力」をがなりたて、逆に対話路線をつぶそうとしてきたのである。韓国が南北首脳会談実現に向けて動き始めた直後には、外務省を通じて韓国に「まだ時期が早い」「思いとどまるべき」だと、再三にわたって圧力をかけていたことも明らかになった。

 それが、歴史的な南北会談や米朝会談が実現し、対話の流れが決定的となると「私がトランプ大統領に提言した」と“功績者”ヅラ。厚顔無恥とはこういうことを言うのだろう。

拉致交渉停滞の批判に櫻井よしこは「安倍総理が正しい」「いまの状態でいいんです!」 

 また、安倍首相はこの挨拶で「安倍政権でこの問題を解決する。拉致問題は、安倍内閣の最重要・最優先の課題であります。拉致被害者の方々と御家族の皆様が抱き合う日が訪れるまで、私の使命は終わらない」とも語っていた。安倍首相といえば、9月14日に行われた日本記者クラブ主催の石破茂元幹事長との討論会で、拉致問題に進展がないことを質問された際、「拉致問題を解決できるのは安倍政権だけだと私が言ったことはございません」など開き直ったことが話題になったばかり。

 被害者家族の前では「拉致問題解決は私の使命」とアピールし、実際には成果がないことを追及されると「言ったことはない」とうそぶく。これを拉致問題の政治利用と言わずして何と言うのだろう。

 ところが、こんな“口だけ”のスピーチにもかかわらず、安倍首相が話し終え、渡米のために中途退席すると、会場を出るまでの間、参加者からはこの日一番の長い拍手が送られた。司会の櫻井氏は「本当に安倍総理にはいまが頑張りどきだと思います。日本にいて応援したいと思います。どうぞよろしくお願いします」などと言って見送る始末で、この櫻井氏の指揮のもと、集会はどんどん“安倍政権礼賛”のムード一色に染め上げられていったのである。

 たとえば、集会では安倍首相の退席後に各党代表らの挨拶に移ったのだが、立憲民主党の拉致問題対策本部事務局長の村上史好衆院議員がスピーチを終えると、櫻井氏は先ほどの安倍首相への“エール”から一転、「立憲民主党はですね、全面的に安倍総理をバックアップしてくださると」と嫌味をぶつ。さらには、拉致問題が停滞している現状を指摘した日本維新の会の高木佳保里参院議員に対しては、桜井氏は「停滞しているのは私たちの責任ではない」と語気を強め、安倍首相の圧力路線の擁護をとうとうと語り始めたのだ。

「むしろ安倍総理が1ミリも(北朝鮮に)譲らずにですね、いらっしゃるから(効果的)なんです。こちらが譲って、何か調査団をつくりましょうですとかですね、向こうの言い分をいれたらどんどん進みますけども、それは私たちの望んでいる進み方ではないんです! 一歩も譲らないからいまの状態があるんです! いまの状態でいいんです! こちらは1ミリも譲る必要はないんです!」

 安倍政権の方針に反する発言はすべて否定されるということらしいが、その攻撃はメディアへも向けられた。被害者家族の挨拶を受けた櫻井氏は、総裁選での安倍勝利を讃えながらマスコミを批判。参加者の目が一斉に後方の報道関係席に向けられ、「ちゃんと書けよ」などとかけ声が飛ぶ異様な雰囲気となった。

「メディアの報道の仕方はおかしいと本当に思います(会場拍手)。安倍総理は今回の選挙で圧勝してるんです。圧勝以外のなにものでもないと思います。(メディアは)相手候補が善戦しているということを盛んに言いますけど、そうではありません。拉致問題に関して、安倍総理ほどいろいろやってくださった政治家はいままでにいないんじゃないですか」
「拉致問題に関しての安倍さんの功績を考えずに、石破さんのことばかり褒め上げるのは、本当に本末転倒だと思います!」

 圧力一辺倒を盲従する櫻井氏が牽引して、参加者が安倍首相を個人崇拝するかのように礼賛し、政敵である石破氏や野党を徹底批判する。国民大集会は、まさに熱狂的な“安倍ファンクラブ”の集いの様相を呈していたのである。

家族会メンバーが「北朝鮮も南朝鮮も息を吹くように嘘をつく」のヘイトスピーチ

 しかも、驚いたのは、今回、拉致被害者家族会からも安倍首相の強硬論線の支持、そして、異論を封殺するような発言があったことだ。

 たとえば、「家族会」事務局長で横田めぐみさんの弟・横田拓也氏は「絶対忘れてはならないのは、彼ら(北朝鮮)が犯罪者、テロ支援国家であるということ」「拉致問題の解決の定義を決めるのは私たち家族です。北朝鮮ではなく、金正恩でもない。彼らの言うことを絶対にうのみにするわけにはいかない」と強調したうえで、こう語った。

「合同調査委員会を設けたりとか、連絡事務所の設置をしたりとか、調査リポートを求める、偽の証拠をもらう、そんなことは一切求めていないんです。日本国内にもそれを画策しているような連中がいます。こういう連中を私たちは完全に批判しなくてはいけないし、彼らに耳を傾けてもらいたいのは、私たちの救出活動にとって間違いなく妨害行為であるということです」

 これは、明らかに、田中均・元外務審議官や石破茂氏らが提起した拉致問題解決案への批判だろう。

 同じく被害者家族の増元照明氏はもっと直接的だった。増元氏は自民党総裁選に言及し、石破氏の平壌に連絡事務所を設置する案について「石破さんの発言は、拉致被害者は死んでいるという前提での連絡所設置です。生きていると信じていれば、櫻井さんがおっしゃったように『帰せ』という言葉を言えば済むだけです」と主張したのである。

 別に石破氏の肩をもつつもりはないが、平壌に連絡事務所を設置する案がなぜ「拉致被害者は死んでいる前提」なのか、さっぱりわからない。増元氏は「帰せ」と言えば済むと言うが、それで一向に帰ってこないから、さまざまなアプローチを提案しているだけではないか。

 しかし、この集会では、安倍首相が主導する路線以外は一切認められないらしい。増元氏が「死亡を前提とするような考え方を国民に広める国会議員やメディア関係者は私たちの敵じゃないですか!」と畳み掛けると、会場の熱気は最高潮に達する。参加者は口々に「日本の敵」「朝鮮総連に破防法を適用しろ」と叫び、なかには何の関係もない「辻元清美を前に出せー!」などという声までが飛び交う始末だった。

 さらに、この家族会のスピーチでは、もうひとつ愕然としたことがあった。家族会事務局次長で、めぐみさんのもうひとりの弟である横田哲也氏の発言だ。哲也氏は、南北首脳会談で関係改善が進む韓国と北朝鮮の関係を念頭にこう述べたのである。

「南北融和と言いましても、狐と狸の化かし合いで一寸先は闇です。歴史をひもとけば、北朝鮮も南朝鮮も息を吹くように平気で嘘をつき、裏切り行為をする国ですから、その軌道修正していくのはわれわれ日本国しかありません」
「彼らが口にする平和だとか非核化だとかは嘘だと、偽善だということが実態であって、だまされてはならない」

 民族や国家を持ち出し、一括りに「息を吹くように平気で嘘をつく」などと罵るのはヘイトスピーチの典型的な話法である。しかも「南朝鮮」との言い方で韓国に対してもヘイトを向けるのは、いったいどういうことなのか、首をかしげざるを得ない。

批判に焦った安倍首相と安倍応援団が家族会を誘導し、安倍支持大集会に

 言うまでもないが、北朝鮮による拉致被害は日本だけではなく、韓国にもいる。拉致被害者は韓国政府が認定しただけでも485人にのぼる。つまり、韓国も被害者なのだ。

 しかも、今回、北朝鮮と米国が対話のテーブルについたのは、文在寅大統領ら韓国政府の働きかけに負うところが大きい。拉致問題を考えても、少なくとも何もしなかった安倍首相よりは、解決につながる突破口の役割を果たしたはずだ。

 にもかかわらず、このタイミングで、その韓国にまでヘイトを放ってどうしようというのか。今後の交渉を考えても、完全に逆効果だろう。

 それにしても、国民大集会がこんな強行路線と異論封殺の安倍信者大集会のようになってしまったのはいったいなぜなのか。

 たしかに、国民大集会は「救う会」や安倍応援団の主導でもともと政治色の強い集会だった。しかし、ここ数年、一向に事態が進展しないことで、家族会のなかには圧力路線に疑問を感じる向きも出てきた。横田早紀江さんなども、「政府を信じて良かったのか」といった言葉を漏らすようになった。そして、国民大集会もそうした空気を反映してか、ここ数年は右翼政治集会的な空気は弱まっていた。それがこの米朝対話が始まったタイミングで、一転して、こんな強行状況に先祖返りしてしまったのだ。

 その理由について、拉致問題をめぐる動きをウォッチしてきた新聞記者がこう分析する。

「やっぱり安倍政権や安倍応援団の焦りの表れでしょう。この間、強行路線一辺倒だった安倍首相は米朝韓から蚊帳の外に置かれてしまった。米朝会談後も拉致問題にまったく展望が開けず、交渉の難航が予想されている。世論やメディアの批判も強くなっていて、先日の総裁選でも拉致問題でかなりの批判を受けてしまった。だから、安倍応援団が牛耳る国民大集会を使って“拉致の安倍”イメージを挽回したかったのでしょう。家族会にも相当な働きかけをしたんじゃないでしょうか」

 安倍首相による拉致問題の政治利用、政治宣伝はいまにはじまったことではないので、それ自体は驚かない。「家族会」も安倍政権に頼らざるを得ない状況では、同調せざるを得ない部分もあるのだろう。

安倍政権は強行路線で北朝鮮との決裂、ゼロ回答を狙っている!

 しかし、懸念されるのは、このタイミングでの強行路線への先祖帰り、異論封殺によって、本来の目的である拉致問題解決が逆に遠ざかってしまいかねないことだ。国民大集会で最後に採択された決議には、こんな文言が盛り込まれていた。

〈日本国内では一部の人物が、経済支援や国交正常化を先行させよとか、日朝合同調査委員会や平壌連絡事務所の設置などを求め、拉致問題の解決を歪曲しようとしている。〉
〈日本は、米国や国際社会と共に、北朝鮮の謀略や国内の様々な妄言には毅然として対抗し、拉致問題が解決するまで対北制裁を緩めず、経済支援も行ってはならない。全拉致被害者の即時一括帰国こそが解決の定義だという姿勢からぶれてはならない。〉

 はっきり言うが、これでは、目的が拉致問題解決ではなく、北朝鮮に強行姿勢を示すことにすりかわっているとしか思えない。こんなことを叫んでも何の解決にもならないばかりか、対話路線でようやく手が届きそうなチャンスを自ら手放し、拉致問題の進展をストップさせてしまう危険性さえある。

「全被害者の即時一括帰国」という目標も疑問だ。全被害者とはいったい何人なのか。政府認定の拉致被害者(17人)のうち未帰国の12人だけでなく、警察庁が「拉致の疑いが排除できない行方不明者」として計上する883人も含めた数字であれば、未来永劫、拉致問題は解決しないことになるだろう。北朝鮮がどんな数字を出してきても、日本側が「解決宣言」をするまでは、拉致問題はいつまでも日朝間に横たわったままだ。こうした主張を掲げている間は、北朝鮮が交渉に乗り出してくる可能性はないと思わざるをえない。

 しかし、実はこれこそが、安倍首相や安倍応援団の狙いだという見方もある。

「安倍官邸は何人かの被害者が帰ってくるより、むしろ決裂してゼロ回答のほうがいいと考えている。そうしたら、北朝鮮はこんなにひどいと煽って、支持率をアップさせられますからね。逆に下手に妥協すると、右派の支持を失いかねない。ただし、強行路線を維持するためには、被害者家族に支持してもらわなければいけません。そのために家族会を強行路線に誘導しているんでしょう」(拉致問題に詳しいジャーナリスト)
 
 こんなやり方を許していたら、拉致被害者はいつまでたっても帰ってくることなく、安倍首相とその応援団に政治利用され続けるだけに終わるだろう。

最終更新:2018.10.01 12:35

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