横田一「ニッポン抑圧と腐敗の現場」41

安倍首相の地元は無法地帯か? 安倍宅放火事件に続き、山口県警が安倍直系県議の建設会社の捜査を握り潰し

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 先日、リテラにジャーナリスト・山岡俊介氏による「安倍首相宅放火未遂事件『18年目の真実』」が掲載されたが、あのレポートが指摘していたのは、安倍事務所が暴力団につながる人物に選挙妨害を依頼していたという話だけではなかった。前後編を通じて浮かび上がっていたもうひとつの疑惑は、安倍首相と山口県警の癒着だ。安倍事務所が放火されるという事件が起きたにもかかわらず、山口県警は捜査に動かなかった。事件の3年後、主犯で元建設会社社長のブローカーの小山佐市氏が逮捕されたが、捜査を主導したのは、暴力団・工藤会の一斉摘発をした福岡県警で「一応、メンツを立てるために、山口県警との合同捜査ということにしていただけ」(山岡氏記事の前編)だったという。

 山岡氏は、「山口県警、下関署は父親(安倍晋太郎・元外務大臣)の代から影響力が非常に強い」「当時の安倍事務所の筆頭秘書・竹田力氏が山口県警警視出身」という関係から、山口県警が「立件したら安倍事務所の選挙妨害が明るみに出る」と忖度して、この事件を闇に葬り去ろうとしていた可能性を指摘していた。

 たしかに、両者の関係を考えれば、その可能性はありうるだろう。

 実は、筆者も安倍首相と山口県警の癒着構造をうかがわせる事件を取材したことがある。それは、安倍首相と密接な関係を持っていた山口県の建設会社「ナルキ(旧・畑原建設)」をめぐる談合疑惑だ。

 第二次安倍政権が誕生した翌2013年、山口県岩国市の錦川上流にある「平瀬ダム」の建設が始まった。民主党政権時代に凍結されていた総事業費750億円のダムが安倍政権誕生と共に息を吹き返したのだ。そして、その本体工事を受注したのが「清水建設・五洋建設・井森工業・ナルキ共同企業体(JV)」だった。

 ところが、このJVに参加している「ナルキ」は当時、安倍首相直系の県議会議員だった畑原基成氏(2017年に死去)の一族が創業者の建設会社で、同社の平瀬ダム工事受注をめぐって、不正・談合を告発する文書が出回ったのだ。

 告発の内容は、この平瀬ダム工事では、ナルキを受注させるために、入札参加資格要件が以前よりも緩和されたというもの。過去の3件のダムの入札では「総合評定値」が1000点以上でないと参加できなかったが、平瀬ダムの入札の場合は900点に引き下げられて、「総合評価値」920点の「ナルキ」でも落札できたという。県議会でも、共産党の藤本一規県議(当時)がこの告発文書を入手し、追及した。

 しかし、こうした追及があったにもかかわらず、マスコミも大きく報道することはなく、捜査機関によって事件化されることもなかった。地元でも、事件の存在すら誰も知らないまま、疑惑はたんなる疑惑のまま闇に葬り去られてしまっていた。

 ところがその3年後の2016年、この事件をめぐる山口県警の捜査資料が流出する。捜査資料によって、実際には捜査機関は「ナルキ」の談合の捜査に着手しており、官製談合容疑で、畑原県議や県職員を取り調べていたことがわかったのだ。

 筆者も捜査資料を入手したのだが、その資料は捜査当局による2013年12月から翌年の5月までの約半年間にわたる動きが克明に綴られていた。

 中でも注目すべきは談合疑惑の核心部分が記載されていた「平瀬ダム建設工事にかかる贈収賄容疑事件の提報について」(2014年5月26日)との文書だ。そのなかには情報提供者から県警が聴取した内容が克明に記されていたからだ。

安倍直系の県議がからむ談合事件をめぐる山口県警の捜査資料が

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談合疑惑の「平瀬ダム」工事現場(撮影・横田一)

 2014年5月26日の日付のある捜査資料にはこんな文言が並んでいた。

〈平瀬ダム建設工事の入札は4社JVで、清水建設が落札しているが、当初は、熊谷組が落札するはずだったと聞いた。これは、熊谷組の関係者から聞いた話である〉
〈熊谷組は、本社のトップ営業をしていたが、途中から、清水が営業をかけはじめ、これによって、JVの頭がすげ替わった。熊谷から清水へと頭が替わったのは、余程のことがあったと思われる〉
〈熊谷の関係者も『今回は、今までにないようなことがあった』、『うちは、清水の真似はできなかった』と話していたので、相当多額の金が動いたのは間違いない〉
〈ナルキは、民主党政権時代は、仕事が無く、重機を売ったりして、傾きかけていたが、自民党政権になって息を吹き返し、平瀬ダム工事では、どこが落札してもチャンピオンに引っ付くことになっていたようで、最初はJVにも入らないはずだった〉
〈清水から、畑原、畑原から担当部署、県トップクラス等に働き掛けが行われ、多額の金が動いた〉

 こうした情報提供者の情報を列挙した後、「今後の方針」がこう記載されていた。

〈提報者の言動等から、同人は、上記提報内容以上の情報を持っていることが予想され、引き続き提報者との接触を継続の必要性が認められる〉

 また、この捜査資料には、故・畑原県議が県土木部職員らを温泉宿や高級クラブで接待していた内容も記されていた。捜査対象となった県職員の経歴や携帯電話も調べ上げていたのだ。

 この捜査資料の信ぴょう性は高かった。住所の書かれていた業界事情通の提報者(捜査協力者)の自宅を筆者が訪ねると、本人が出てきた。また、県職員への接待について情報提供をした別の捜査協力者を訪ねると、複数の県警担当者の名刺を出してきて、その名前が捜査資料にある報告者と一致した。さらに県議(当時)の話を報告していた県警職員も、実在の人物であることが確認できた。

第二次安倍政権以後、「官邸の直轄地」といわれるようになった岩国市

 少なくとも、山口県警が「接待を受けた県の担当職員が入札参加要件を変更した結果、ナルキが受注した」という線で、立件しようと動いていたのは間違いなかった。しかし、いつ捜査着手のゴーサインが出ても不思議ではないほどの捜査内容だったにもかかわらず、結局、この事件は先述したように、立件されることはなかった。捜査は明らかに途中で潰されたのだ。

 ちなみに流出した捜査資料は、2012年12月の第二次安倍政権誕生から1年半後の2014年5月26日が最後だった。「捜査は打ち切られたが、この談合疑惑が闇に葬られないようにして欲しい」という捜査関係者の叫びが聞こえてくるようだった。

 この不可解な捜査幕引きはやはり、ナルキの創業者一族である畑原県議(当時)とそのバックにいる安倍首相の威光抜きには考えられないだろう。

 いまは息子が二代目後継県議となっているが、畑原氏は現職県議時代、「安倍首相や菅義偉官房長官と携帯電話で話す間柄」と議長就任のインタビューで話すなど、中央とのパイプの太さを自慢していた。

 畑原氏が存在感を高めた一因は、井原勝介・岩国市長の革新市政(1999年~2008年)に終止符を打つのに貢献したこととされる。岩国基地への空母艦載機部隊移転に反対する井原市長(当時)は、住民投票を実施して「85%反対」という結果を引出し、徹底抗戦の構えを見せていた。これに対し防衛省は基地関連の補助金を一部撤回、その結果、市庁舎建設をめぐって市議会との対立が激化、市長は辞職して出直し市長選に臨んだが、2008年2月、元自民党衆院議員の福田良彦氏(現市長)に僅差で敗れた。

「この時、畑原氏は地元財界と共に、市議から衆議院議員になって間もない福田氏に対し、『仮に落選しても、その後の生活費は保障するから出馬して欲しい』と説得、基地拡大容認の保守市政誕生に貢献した。これで党県連や県議会での存在感が高まった」(県政ウォッチャー)

 福田市政誕生の効果は、基地バブル到来という形で現れた。米空母艦載機部隊の移転に向けて岩国基地の沖合に基地を拡大する事業費は約2500億円にも及んだ。周辺でも基地受入の見返りのような関連事業が進み、軍民共用の岩国錦帯橋空港への民間機就航も2012年12月に開始。いまや岩国市は「第二の沖縄」「官邸の直轄地」(市議会関係者)で、基地関連事業の建設ラッシュで活況を呈している。

 そして、第二次安倍政権誕生後、平瀬ダムの予算も急増した。2012年度には5億5500万円だった予算額は、翌13年度は9億5000万円になり、その翌々年の14年度も15億5000万円、3年目の15年度も39億6700万円、そして4年目の15年度は43億8675万円へと増え続けた。その過程で、安倍首相直系の畑原県議一族の会社「ナルキ」に工事が発注されたのだ。

山口県警は安倍首相を忖度して捜査を握り潰したのか

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もうひとつ浮上した談合疑惑「ごみ焼却施設」(撮影・横田一)

 ようするに、平瀬ダムはもともと政治案件であり、山口県警と安倍首相の関係を考えれば、県警が手を出せる事件ではなかったのかもしれない。捜査現場が十分な証拠があると事件化に向けて捜査に動いたが、途中で、県警上層部が畑原県議と安倍首相の関係を忖度して、潰してしまった可能性は少なくないだろう。

 安倍首相の地元・山口県は、権力者の違法行為が見逃される無法地帯なのかと疑いたくなるが、実際、岩国をめぐる疑惑は、平瀬ダムだけではない。安倍直系の畑原県議が推した岩国市の福田市長のもと、市が発注した「ごみ焼却施設整備運営事業」(事業費約300億円)でも談合疑惑が浮上した。地元事情通はこう話す。

「ごみ焼却施設の整備は防衛省の補助金が投入され、事業費のうち75%が補助金という事業だったんですが、この工事で他社より30億円も高いJFEエンジニアリングが落札したのです。調査をした広島・市民オンブズマンは『“官民談合”が濃厚な事例』と結論づけました」

 入札は「プロポーザル方式」で、価格だけで決めるのではなく、業者の提案内容をいくつかの項目で点数をつける総合評価方式だった。「点数をつけるのが、専門家三名と市職員四名で構成される『プロポーザル審査委員会』でしたが、専門家が価格の安い『タクマ』に軍配を上げたのに、市職員全員が『JFE』の総合点が高く、30億円も高い業者が選ばれた。しかも評価が高かったのがデザインなどの項目で、焼却施設自体の機能とはあまり関係ないもの。『元自民党衆院議員の福田良彦市長が口利きをしたのか』と囁かれました」(地元事情通)

 プロポーザル審査委員会のメンバーであった山口大学の准教授は「デザインなどの項目が盛り込まれたのは市の方針」と市主導であったことを認め、同じくメンバーだった山口大学名誉教授も「入札結果に違和感を感じた」と話した。しかし岩国市は「適正な手続きに則って入札を行い、不正はない」と談合疑惑を否定した。

 山口県警の体質を考えると、これもまた事件化される可能性はきわめて低い。地元・山口でやりたい放題の安倍一派を抑止するためには、メディアが徹底的な真相解明に乗り出す必要がある。 

最終更新:2018.07.15 01:58

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