横田一「ニッポン抑圧と腐敗の現場」12

森友疑惑の核心は昭恵夫人と“官邸職員”谷査恵子氏の密接不可分な関係だ! 取材現場で見た二人の行動

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「妻や私が認可や国有地払い下げに関与していたら総理大臣はもとより国会議員を辞めます」

 安倍首相がこんな答弁をしたのは、2月17日の衆院予算委員会でのこと。しかし、ご存知のように、これが真っ赤な嘘であることを物語る材料がこの間、山のように出てきている。

 そのひとつが、安倍昭恵夫人付の官邸職員・谷査恵子氏が、昭恵夫人の代理で「公務」として、籠池泰典理事長からの口利き要請に応じていた事実だ。

 きのう30日の衆議院地方創生特別委員会でも谷氏に関して、新たな事実が判明した。民進党・今井雅人衆議院議員の質問で、谷氏側から籠池理事長に手紙を送っていたこと、しかも、谷氏はこのときに官邸の公用封筒を用い、「内閣総理大臣官邸 夫人付 谷査恵子」と差出人名を明記していたことが明らかにされたのだ。これまで、官邸は、籠池氏サイドからの手紙と谷氏からの回答FAXの存在しか認めていなかったが、それ以外にも、籠池氏と谷氏の間で、公的なやりとりがかわされていたことになる。

 また、谷氏がFAXで回答した経緯についても、この間、新たな事実がわかった。

 そもそも、谷氏が2015年11月に籠池理事長宛に送ったFAXには、森友学園の定期借地契約について財務省本省に問い合わせ、国有財産審理室長から得た回答などが記載されていた。「陳情を受けて役所に問い合わせる」という典型的な口利きである。

 しかも昭恵夫人の関与について籠池氏は、「(10年の定期借地契約を)もっと長い期間に変更できないかとの思いから、昭恵夫人に助けていただこうと電話した」と午前中の証人喚問で説明していた。 

 このFAXの存在が明らかになった瞬間、議場内にどよめきが起こった。「妻の関与は明らかで首相辞任が不可避」と少なからぬ国会議員が感じ取ったために違いない。

 これに対し官邸は、説得力が皆無の詭弁で必死の反論を始めた。菅義偉官房長官は、定期借地契約の期間延長について困難と回答していることに目をつけ、「忖度以前のゼロ回答」と強調した。しかし、本当のゼロ回答というのは、「それについてはこちらから財務省に問い合わせることはできない」「問い合わせた財務省から回答がなかった」というものであり、「昭恵夫人付の谷氏が役所に問い合わせて陳情の実現困難との回答を得た」という妻の関与(口利き)の事実が消えるわけではない。

 谷氏は、国有地の埋設物撤去工事費についてもFAXで報告していた。午後の証人喚問で籠池氏は次のように読み上げたのだ。

「工事費の立て替え払いの予算化について、『一般的には工事終了時に清算払いが基本であるが、森友学園と国交省航空局との調整にあたり、予算措置がつき次第返金する旨の了解であったと承知している。平成27年度予算での措置ができなかった。平成28年度での予算措置を行う方向で調整中』という内容」

 要するに谷氏は、埋設物撤去費用支払い(清算)が前倒しになるように財務省に働きかけたということである。森友学園への支払い時期が早くなれば、籠池氏にプラスになるのは言うまでもない。谷氏の役所への口利きが陳情者への利益供与となったことも紛れもない事実なのだ。

 また、このFAXは籠池氏サイドが谷氏に出した手紙を受けてのものだったが、その手紙には、谷氏が「ゼロ回答」どころか「満額回答」を引き出す役割を果たした可能性があることもわかった。

 これは、28日の参議院決算委員会で共産党の大門実紀史参議院議員が明らかにしたもので、籠池氏が2015年10月26日付けで首相夫人の安倍昭恵氏側に送ったという手紙には「定期借地契約を50年契約にした上で、早く買い取ることができないか」「賃料が高いので半額程度にしてほしい」という趣旨の要望が書かれていた。周知のように、これらの要求はすべて実現されている。

 さらに、籠池氏サイドは、谷氏にこの手紙を送ることになったのは、谷氏から「昭恵さんにお電話をいただいた件ですが」「こちらに文書を送ってください」と電話があったことを証言しているようだ。これが事実なら、明らかに谷氏は昭恵夫人の代わりに口利きをしたことになる。

 こうした谷氏の口利きの成果を突きつけられた菅官房長官は、「谷氏の判断でやったこと」と主張し、「妻の関与」を否定し続けている。

 しかし昭恵夫人の追っかけ取材をしてきた私の目には、現実離れをした詐欺的主張にしか見えない。冒頭の写真(昭恵夫人と谷氏のツーショット写真)は、2015年3月15日に仙台で開かれた国連防災世界会議の関連シンポジウムに、昭恵夫人と谷氏が参加した時に撮影したもので、昭恵夫人の隣で拍手をしているのが谷氏である。昭恵夫人と谷氏は国会議員と秘書のような密接不可分の関係で、昭恵氏の意向を受けて谷氏が照会したとしか考えられないのだ。

 昭恵夫人がシンポジウムや集会で講演や挨拶をする時の決まり文句は「(この問題について)夫に伝えます」「夫に伝えて話しています」。安倍首相に日常的に“直訴”することができる昭恵夫人は、並の国会議員以上の太いパイプを持つ“陳情窓口”といえる。安倍首相は「私人」と言い張るが、実態は大物政治家と同じ影響力を有する「公的人物」といえるのだ。

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 この日も、防潮堤見直しに関するプレゼンを聞いて谷氏と一緒に拍手した後、昭恵夫人はこう挨拶した。

「私も防潮堤問題にずっと関わってまいりました。主人にも何度か意見を言って、いろいろ話をしたり、報告をしてまいりました」

 谷氏と名刺交換(コピー参照・官邸が連絡先)をしたのは、このツーショット写真を撮影した前月の2015年2月22日。この日も昭恵夫人は谷氏と共に、映画上映会を兼ねた防潮堤見直し集会に参加。ダムを壊して川が蘇る現場を描いたアメリカ映画『ダムネーション』を見た東洋文化研究者のアレックス・カー氏が「日本の海岸は防潮堤をはじめコンクリートだらけ。『防潮堤ネーション』のような映画を望む」と訴えた。続いてマイクを握った昭恵夫人は、安倍首相の父親(安倍晋太郎・元外務大臣)の故郷が美しい棚田で知られる山口県油谷町であることを紹介しながら、「(防潮堤見直しについて)主人にも日々話をしています」「美しい日本を取り戻すために力を尽くしたい」という挨拶もした(筆者著『亡国の首相 安倍晋三』七つ森書館より)。

 集会後には主催者と参加者を交えた懇親会が開かれ、ここにも昭恵夫人と谷氏は一緒に参加した。昭恵夫人は集会主催団体が訴える課題を夫に伝える“陳情窓口”であり、総理夫人付の谷氏は国会議員に同行する秘書のような役回りをしていた。両者は密接不可分の関係であり、谷氏の個人的行動と主張する菅官房長官は、説得力が皆無の空理空論を口にしているにすぎないのだ。

 3月23日、証人喚問を終えた籠池理事長は18時すぎから外国特派員協会で記者会見に臨んだ。会見場には、安倍晋三首相の辞任必至の物的証拠(文書)が配布されていた。国会で籠池氏が暴露したばかりの「安倍昭恵夫人付の谷査恵子氏が送ったFAX」のことだ。

 籠池氏の説明の後、質疑応答に入ると、海外の記者から「いま語ったことが正しければ安倍夫人と首相はウソをついていることになる。辞任したほうがいいと思うか」と質問。すると、籠池氏は戸惑いながら複雑な心境を口にした。

「やはり嘘はいけないと思います。でも本来、安倍首相のことは僕は好きなのです。非常に心が痛い。ご自身で決定することだと思います」

 豊洲移転を最終決定したのに「全体の責任」と言い訳をする石原慎太郎元知事に対して私は「責任逃れの恥さらしではないか」(3月3日の記者会見)と質問をした。妻の関与を示す決定的証拠が出ても辞職しない安倍首相は「嘘で権力にしがみつく国辱(日本の恥)」と批判されてもおかしくないだろう。

最終更新:2017.11.22 01:17

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