リオ閉会式で椎名林檎が五輪批判の舞台音楽を使用! 野田作品は東京五輪を戦争の装置として描いていたのに

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
shiinaringo_160823.jpg
『UNIVERSAL MUSIC JAPAN』公式サイトアーティストページより


 アスリートを差し置いて登場した“安倍マリオ”が話題をさらったリオオリンピック閉会式。本サイトでは昨日、この演出を安倍首相の政治利用とグロテスクな国威発揚だと批判したが、じつはもうひとつ、閉会式では気になる“事件”が起こっていた。

 それは、オリンピック旗を引き継ぐフラッグハンドオーバーのシーンで流されていた音楽についてだ。

 このとき流されたのは、椎名林檎の「望遠鏡の外の景色」という楽曲で、野田秀樹演出の舞台『エッグ』のために書き下ろされた一曲。今回、椎名は東京のパフォーマンスにクリエイティブスーパーバイザーとして参加していたため、自身の楽曲のなかからこれをチョイスしたと思われるが、「まさか、よりにもよって五輪で使う?」と疑問の声がネット上では広がった。

 というのも、『エッグ』という舞台は、1940年の幻の東京オリンピックを戦争とナショナリズム発動の装置として批判的に描いた内容だっただからだ。しかも、舞台は途中で1940年代の満州に移り、731部隊による人体実験まで描かれるという踏み込んだものだった。

『エッグ』の初演は2012年で、当時は東京が五輪開催地になることが決定する前だったが、野田は15年、パリでの『エッグ』再演後のインタビューで、こう話している。

「20世紀に民衆を扇動したスポーツや音楽は、コマーシャリズムの発達と共に巨大化していきました。さらに言うと、大衆を狂信させたものに20世紀の二つの戦争があり、スポーツ、音楽、戦争の三つに共通性を見つけたのです。それが、では舞台ごと満州に連れていってしまえ、という野心に変わったのです」(「フランスニュースダイジェスト」より)

 オリンピックで掻き立てられるナショナリズムは戦争に通じる……。この舞台で野田からのラブコールにこたえ、椎名は音楽を担当。当然、舞台のテーマがどんなものであるかを椎名が知らないはずもない。そのため今回、椎名が“本物”のオリンピックの舞台で『エッグ』の楽曲を使用したことも、ネット上では「確信犯では?」「意味深な感じもキライじゃないかも」などと好意的な捉え方をする人が多い。

 だが、椎名がオリンピックをシニカルに捉えて、この楽曲を閉会式で用いたとは思えない。本サイトでは以前にも指摘したが、椎名はこれまで何度もナショナリズムを“肯定的”に表現のなかに落としこんできたからだ。

 たとえば、椎名が手がけた2014年サッカーW杯のNHKテーマソング「NIPPON」は、その歌詞が「純血思想では?」「右翼的だ」と賛否を呼び、同年11月に発表した5年半ぶりのアルバム『日出処』もジャケットに配されたデザインが旭日旗に見えると指摘する声があがった。しかも、あきらかに旭日旗をモチーフにした小旗をツアーグッズとして販売し、昨年の「FUJI ROCK FESTIVAL '15」ではオーディエンスがその旗を振る光景が「まるでネトウヨアイドルみたい」と話題を呼んだこともある。

 また、椎名は2020年のオリンピックが東京開催に決定すると、積極的に開会式についての演出について発言。その際も「すごい極端なものが両方あるってところが、ほかの国の比じゃないじゃないですか」「日本が恥をかかないように、日本らしく」(NHK『SONGS』14年11月8日放送)と“日本の誇り”を語っていた。

 とはいえ、椎名の「右翼性」とは、そのじつ、無自覚なものだろう。問題となった「NIPPON」だって、“スポーツ=戦い”という短絡的な発想に古風なフレーズを掛けあわせたらああいう歌ができあがったとも思えるし、旭日旗をモチーフにしたのも“古風な感じでかっこいい”という単純な発想なのかもしれない。

 しかし、ひとりのアーティストとしてならそうした言動は表現の自由として許容されても、椎名はもうその立場にない。椎名は東京都と五輪組織委員会に選出された、公的な立場の人間だからだ。本来ならば、野田が指摘した“スポーツの熱狂がナショナリズムと密接につながり、それは戦争とも相通ずる”という批判を受け止めてしかるべきだが、言い訳のように楽曲を流しただけで、結局は日の丸と君が代を過剰なドラマティックさで演出した。これこそ露骨な国家主義的発想で、野田が舞台で描いた世界を地でゆく展開ではないか。

 椎名は閉会式と合わせて昨日、新曲である「13 jours au Japon ~2O2O日本の夏~」と「ジユーダム」を配信限定でリリースしたが、それ自体も、公的資金から演出を任された人物としては公共のイベントを商売に利用する行為だ。

 それでも、今回のパフォーマンスが高評価(キャプテン翼やキティちゃんのキャラ人気のおかげではないか?とも思うが)を受けていることを考えると、椎名が4年後の東京オリンピックの開会式にかかわる可能性はかなり高まっただろう。本人は無邪気にオリンピックを捉えているのかもしれないが、ならばいま一度、野田の舞台を観返し、オリンピックによって民衆を熱狂に駆り立てることの意味を考えてみてほしいと思う。

 というか、少なくとも旭日旗をデザインのモチーフにするようなことは、やめたほうがいい。他国から見たらそれは侵略戦争を肯定する「ヤバい人」でしかなく、それこそが「日本の恥」になるのだから。
(水井多賀子)

最終更新:2018.10.18 04:03

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

リオ閉会式で椎名林檎が五輪批判の舞台音楽を使用! 野田作品は東京五輪を戦争の装置として描いていたのにのページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。五輪水井多賀子の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 King Gnu・井口理が米イラン緊張で日本の戦争加担に危機感
2 強制捜査受けた河井前法相と案里議員は菅官房長官より安倍首相のお気に入り!
3 葵つかさが「松潤とは終わった」と
4 「桜を見る会」問題で今度は推薦者名簿を“改ざん”
5 車庫飛ばしで公安に誤認逮捕された男性が語った取り調べの酷い中身
6 山口敬之逮捕を握り潰した“官邸の忠犬”中村格が警察庁ナンバー2に!
7 警視庁の「しばき隊メンバー」逮捕は“安倍やめろデモ”潰しだった!
8 グッディ高橋克実が北朝鮮危機で本音
9 米イラン緊張のなかダルビッシュが排外主義と戦争反対を表明!
10 橋下徹に恫喝された女子高生が告白!
11 秋元康の東京五輪に椎名林檎が危機感
12 ネット右翼発言めぐり稲垣吾郎を百田尚樹が「頭の悪いタレント」と攻撃!
13 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(前編)
14 BBCが山口事件の被害者・詩織さんを特集
15 稲垣吾郎MC のNHK番組が日本の五輪ナショナリズム批判!
16 安倍の成蹊時代の恩師が涙ながらに批判
17 早野龍五・被曝論文に重大誤り!お墨付き与えた糸井重里の責任
18 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(後編)
19 秋篠宮家の料理番がブラック告発
20 松尾貴史「日本を壊しているのは安倍さん」
1 久米宏が「テレビが反韓国キャンペーンをやってる」と真っ向批判
2 安倍政権・厚労政務官が外国人在留申請で口利き「100人で200万円」
3 玉川徹がGSOMIA破棄で加熱するテレビの嫌韓煽動を批判
4 明石家さんまが吉本上層部と安倍首相の癒着に痛烈皮肉!
5 『ゴゴスマ』で今度は東国原英夫がヘイト丸出し、金慶珠を攻撃!
6 『報ステ』の“安倍忖度”チーフPがアナやスタッフへの“セクハラ”で更迭
7 『ゴゴスマ』で「日本男子も韓国女性が来たら暴行しなけりゃいかん」
8 文在寅側近の不正に大はしゃぎの一方、安倍政権が厚労政務官の口利きに無視
9 埼玉知事選で警察が柴山文科相への抗議を排除!柴山も表現の自由否定
10 安倍首相がトランプからトウモロコシ爆買い
11 菅官房長官「トウモロコシ大量購入は害虫被害対策」は嘘
12 GSOMIA破棄は安倍のせい 慰安婦合意から始まった韓国ヘイト政策
13 安倍が後に先送り財政検証の酷い中身
14 GSOMIA破棄で日本マスコミの「困るのは韓国だけ」の嘘
15 松本人志や吉本上層部批判の友近、近藤春菜にバッシング、報復か
16 『週刊ポスト』の下劣ヘイト記事は「小学館幹部の方針」の内部情報
17 GSOMIA破棄!八代・有本ら安倍応援団は「嫌なら来るな」
18 『モーニングショー』で「暑さに耐えるのが教育」元高校野球監督は右派論客
19 古市憲寿の芥川賞候補作「参考文献問題」に選考委員が猛批判
20 『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった!』のデマとトリックを暴く

カテゴリ別ランキング


マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄