長崎原爆の式典で安倍首相に「改憲反対」と叫んだ参列者を警察が拘束! 取材中の不当聴取なのにマスコミは抗議も報道もせず

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
abe_01_160813.jpg
首相官邸ホームページより


 原爆が落とされた8月9日、今年も長崎で開かれた平和祈念式典。しかし、その中でこの国が「平和」とはまったく逆の方向に向かっていることを示す事態が起きた。なんと、安倍首相の挨拶の最中、改憲反対を叫んだ市民が、それだけで警察に連行されてしまったのだ。

 それは、この平和祈念式典で安倍首相があいさつをするため演台に向かおうとしたときのことだ。安倍首相が参列席に一礼した瞬間、参列席から男性が「改憲反対」という声を上げた。

 もちろん、それ自体が問題なのではない。この男性は声をあげただけで、安倍首相に近づいたわけでもなければ、挨拶を妨害したわけでもない。というか、そもそも、広島、長崎の原爆の式典で挨拶をする安倍首相については、地元でもその態度や政策との不一致を批判する声が強く、これまでもしばしば厳しいヤジが飛んできた。今回もそれが起きたというだけに過ぎない。

 ところが、おかしいのはこの後だった。式典終了後、報道陣がこの男性に発言の意図を確認しようと取材し、男性もそれに応じていた。ところが男性が「首相は民主主義をないがしろにしている」などと説明している最中に、複数の警察官が割って入ってきたのだという。そして、男性を取り囲んで事情を聴き始め、警察車両まで連れて行ったというのだ。

 このいきさつを報じた長崎新聞によると、浦上署は「本人の了解を得た上で、車に乗り込んでもらった」としたが、男性は終始「触らないでください。離してください」と訴えていたという。

 これは明らかに警察による不当な事情聴取であり、取材に対する妨害行為だ。男性は式典の参列者であり、何か暴行を働いたわけでも、妨害行為を行ったわけでもない。たんに「改憲反対」と述べただけだ。それだけで無理やり事情聴取をされるというのは、治安維持法や特高警察があった戦中の時代に逆戻りしているようではないか。

 警察は「警備上、念のため」などと釈明するかもしれないが、実はこうした事態は警備が必要な式典以外の街中でも起きている。たとえば昨年の10月には、ピーター・バラカン氏が、自身がパーソナリティを務めるラジオ番組『The Lifestyle MUSEUM』(TOKYO FM)で、その日スタジオに向かう途中、こんな経験をしたことを語った。

「めずらしく広尾の方から六本木に向かって有栖川公園の脇を歩いていると、まずひとりの警官にちょっと、変な目で見られて(略)。もうちょっと先を歩くと、中国大使館のすぐ手前のところで2人の警官に、止められました。『あれ? どうしたんですか?』と言ったら、『いや、あの今日これから抗議をする予定ですか?』と聞かれたんですね。ん?いや、特にそんなことはないと『なぜそんなことを聞くんですか?』と言うと、『9条のTシャツを着ているから』と」

 ようするに「憲法9条のTシャツ」を着て六本木を歩いていただけで、警察官に呼び止められ、詰問されたというのだ。バラカン氏は、「ほんとうに僕、40年以上この国で暮らしてはじめてそうふうに聞かれたもので、今も釈然としないものがあって。仮に抗議に行く予定だったといっても、なぜ、それがいけないことなのか」と述べている。

 同じく昨年10月、東京新聞が、「『No.9(憲法九条)』と書かれた小さなタグや缶バッジをつけた市民が国会本館や議員会館に入ろうとすると、警備員らに制止される例が相次ぐ」ことを報じている。

 辺野古の新基地建設に反対する院内集会に参加しようと参院議員会館を訪れた女性が、手荷物検査を受ける際に制止され、バッグに付けていた手のひらサイズの「No.9」のタグについて、「示威行為に当たるので外すか隠してほしい」と求められた。女性は、その2ヵ月前に女性が衆院第二議員会館を訪れた際にも、入り口で止められたという。

 さらに同時期ツイッターでは、一般ユーザーによる〈クリスチャンの女性が「平和がだいじ」と書いた可愛らしい絵本袋を持って国会周辺を歩いていたら警官に職務質問されたそうだ。彼女が警官に「どうして聞くんですか」と聞いたら絵本袋をさして「平和って書いてあるから」と。今や「平和」は犯罪!〉という投稿も確認できる。前述のバラカン氏や議員会館で制止された女性の例を踏まえると、十分ありうる話だ。

 先の参院選で改憲勢力3分の2の議席を得て、安倍首相が描く“改憲スケジュール”は待ったなし。自民党や日本会議、産経新聞などの右派勢力は、改憲の世論づくりのために、あらゆる場所で日本国憲法への攻撃を強めている。一連の憲法排除は、こうした空気を警察権力が敏感に感じ取って、警備・監視行動に反映させているということだろう。

 いうまでもなく、政治家、役人、警察官などの公務員には、憲法を尊守する義務がある。にもかかわらず、その公務員がいま、市民が「9条」や「平和」「護憲」のメッセージを身につけているだけで“危険思想”扱いして排除に乗り出している。繰り返すが、そのような異常な事態が現実に起きているのだ。

 この状況を見て、想起させられるのは、前述した戦前・戦中の状況、とくに1925年、治安維持法が制定されて以降に起きた事態だろう。同法は当初、天皇主権や資本主義を否定する運動を取り締まるものだったが、そのうち、反戦や人権尊重などを口にするだけで反政府的主張とみなされ、摘発・拘禁されるようになっていった。そして、その中央政府による恐怖政治の先兵となったのが、警察や地方行政、メディアだった。ようするに、その戦前・戦中の公権力の姿勢が復活しつつあるのだ。

 しかも、唖然とするのは、マスコミがこうした状況に対して、ほとんど批判をしなくなっていることだ。前述した長崎の平和祈念式典で「改憲反対」を叫んだ男性が連れて行かれたのは、報道陣がこの男性を取材中の出来事だったが、驚いたことにその場にいた記者たちは一切、抗議しなかったという。それどころか、この一件を記事にしたのは、地元の長崎新聞だけ。全国紙もテレビもその事実を知りながら、一切報道しなかった。

 これでは、警察がどんどんエスカレートとして、思想チェックのような行為を平気でやっているのも当然だろう。

 本サイトでも繰り返し報じてきた「子どもたちを戦場に送るな」と言う教師を取り締まる“密告フォーム”の件もそうだが、これから日本は、「平和」や「反戦」「護憲」を口にするだけで、本当に“思想犯”として逮捕されるような時代に突入してしまうのかもしれない。
(野尻民夫)

最終更新:2016.08.13 06:04

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

長崎原爆の式典で安倍首相に「改憲反対」と叫んだ参列者を警察が拘束! 取材中の不当聴取なのにマスコミは抗議も報道もせずのページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。憲法警察野尻民夫の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 安倍が日米安保改定60年で祖父自慢連発!でも岸信介の正体は…
2 久米宏が高まる東京五輪同調圧力に徹底抗戦!「大反対の気持ちは変わらない」
3 葵つかさが「松潤とは終わった」と
4 麻生太郎“単一民族”発言もアイヌを描いた『熱源』が直木賞受賞
5 田崎史郎「桜を見る会」名簿問題で“民主党ガー”詐術、羽鳥慎一が思わず…
6 安倍の安保法制と岸信介の対米密約
7 IR汚職“起訴”の企業会長夫人と同姓同名の人物が進次郎、鈴木道知事に献金も
8 グッディ高橋克実が北朝鮮危機で本音
9 King Gnu・井口理が米イラン緊張で日本の戦争加担に危機感
10 長渕剛が安倍政権を批判する新曲を発表
11 エイベックス松浦会長が「安倍さんでなくて菅さん」
12 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(前編)
13 橋下徹が都構想で使った詐術を検証!
14 橋下徹に恫喝された女子高生が告白!
15 松尾貴史「日本を壊しているのは安倍さん」
16 安倍の成蹊時代の恩師が涙ながらに批判
17 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(後編)
18 車庫飛ばしで公安に誤認逮捕された男性が語った取り調べの酷い中身
19 山口敬之逮捕を握り潰した“官邸の忠犬”中村格が警察庁ナンバー2に!
20 「桜を見る会」問題で今度は推薦者名簿を“改ざん”
1 久米宏が「テレビが反韓国キャンペーンをやってる」と真っ向批判
2 安倍政権・厚労政務官が外国人在留申請で口利き「100人で200万円」
3 玉川徹がGSOMIA破棄で加熱するテレビの嫌韓煽動を批判
4 明石家さんまが吉本上層部と安倍首相の癒着に痛烈皮肉!
5 『ゴゴスマ』で今度は東国原英夫がヘイト丸出し、金慶珠を攻撃!
6 『報ステ』の“安倍忖度”チーフPがアナやスタッフへの“セクハラ”で更迭
7 『ゴゴスマ』で「日本男子も韓国女性が来たら暴行しなけりゃいかん」
8 文在寅側近の不正に大はしゃぎの一方、安倍政権が厚労政務官の口利きに無視
9 埼玉知事選で警察が柴山文科相への抗議を排除!柴山も表現の自由否定
10 安倍首相がトランプからトウモロコシ爆買い
11 菅官房長官「トウモロコシ大量購入は害虫被害対策」は嘘
12 GSOMIA破棄は安倍のせい 慰安婦合意から始まった韓国ヘイト政策
13 安倍が後に先送り財政検証の酷い中身
14 GSOMIA破棄で日本マスコミの「困るのは韓国だけ」の嘘
15 松本人志や吉本上層部批判の友近、近藤春菜にバッシング、報復か
16 『週刊ポスト』の下劣ヘイト記事は「小学館幹部の方針」の内部情報
17 GSOMIA破棄!八代・有本ら安倍応援団は「嫌なら来るな」
18 『モーニングショー』で「暑さに耐えるのが教育」元高校野球監督は右派論客
19 古市憲寿の芥川賞候補作「参考文献問題」に選考委員が猛批判
20 『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった!』のデマとトリックを暴く

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄