バッシングの一方で急増! 不倫する女性たちが告白する本音と日常とは? 逆に家族円満になったケースも

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『不倫女子のリアル』(小学館)

 ベッキー&川谷絵音(ゲスの極み乙女。)、乙武洋匡、宮崎謙介元衆議院議員、桂文枝、石井竜也、とにかく明るい安村、六代目三遊亭円楽、そしてファンキー加藤とアンタッチャブル柴田英嗣の元妻とのW不倫……今年に入り、数週間に一回は著名人の不倫が報道され、その都度大バッシングが巻き起こる状況が続いている。そういった報道がなされると、当事者、とくに女性には非難の声が集中する傾向がある。

 まるで姦通罪のあった時代に逆戻りしたかのような錯覚をおぼえるが、では、現実はどうかというと、弁護士の堀井亜生氏が「不倫の総人口が増えれば、紛争も増えます。私たちの事務所に不倫問題で相談に来る方も、この10年で倍増しています」と語っているように、それとはまったく逆の状況となっている。とくに、女性の不倫はこの10年で急増している。

 そんな現実を生々しく描き出した本が最近出版され話題を呼んでいる。『不倫女子のリアル』(小学館)。「VoCE」(講談社)や「Suits」(小学館)などの女性誌を中心に活動するライターの沢木文氏が、実際に不倫した女性たちからその経験を取材し、一冊にまとめた。

 この本では10人近くの女性が自らの不倫経験を語っているのだが、不倫し始めたきっかけとしてよく挙げられているのが、「夫の浮気」だ。ファンキー加藤の不倫相手だった柴田の元妻も柴田の浮気がきっかけだったとされているが、実際にこのパターンは多いらしい。

 クリニックを経営している皮膚科医の水田頼子(仮名)さんは、子ども2人の育児と仕事とを両立させながら、結婚して13年の間に15人もの男性と恋愛関係になった。その始まりは、次男が生まれたばかりの頃、家事と仕事で日々の記憶がないほど忙しかった時期に、夫の財布の中にコンドームが入っているのを発見したことにある。そのコンドームは、夫が休日出勤から帰ってくる時にはなくなっていた。これで夫の不倫を確信するのだが、その時の心情をこう振り返る。

「私は仕事しながら、とにかく走り回って暴れる息子たちの育児を引き受けて、夫よりも稼ぎ、コーヒー1杯飲む時間もなく、ママチャリ漕いで保育園・クリニック・自宅の三角内を走り回っている。それなのに、夫は育児を手伝うこともせずどこかの女と……自分でコンドームを用意するってことは、相手の家に行っているわけでしょ……恋愛を楽しんでいる。もう何なのよ! って思った」

 しかしその悔しさや怒りの感情の原因は何なのかを自己分析してみると、それは夫への愛ゆえの「嫉妬」などではないということに気がついてしまったという。

「でもそれは、夫を寝取られて悔しいとか、自分に魅力がないからだとか、裏切ったから許せないとかいう愛や嫉妬を基盤にした感情ではなくて、同じ生物として他の個体(女性)と性行為をしたり、恋愛を楽しんでいるのが“うらやましい”という感覚だったの」

 製薬会社に勤務している室井さやか(仮名)さんも同様のケースである。室井さんは夫の浮気を知った後、「目の前が真っ暗になって、足元から暗闇に吸い込まれていくような感じ」がしたと語るが、その怒りを友人にぶつけたところ、「さやかさん、それならあなたも浮気すればいいじゃない」と返され、自分も浮気することを決意する。

 そう思ってみたものの、かつてであれば相手も見つからないし、そう簡単に不倫に踏み出すこともできなかったわけだが、SNSが普及した現在では状況は大きく変わった。個人情報の検索ができるFacebookのようなSNSを使えば、連絡の途絶えていた元カレと再度コンタクトを取ることも容易であり、見ず知らずの相手との出会いでない分さらに浮気へのハードルは下がる。実際、室井さんもFacebookを使うことで元カレ6人と再会している。

 こういった話を聞くと両ケースとも、もうこれまでのような夫婦生活を送ることはできなさそうに感じてしまうが、水田さんも室井さんも夫婦の不倫により離婚にはいたっていない。むしろ、それがガス抜きになり夫婦生活の継続が保たれている側面もあるようだ。

 その最たる例が、メーカー勤務の麻田裕子(仮名)さんのケースだ。結婚して専業主婦になり幸せになった人が周囲におらず、働くことが好きな自分は会社勤めを続けたいと思っていたが、夫側の家族は麻田さんのそのような考えを良しとせず軋轢が生まれてしまう。

 とくに、子どもが生まれてからは、夫と両親から「保育園に子どもを預けるなんてかわいそう」「結婚したのに働いているなんてみっともない」と言われるも、彼女は頑として仕事を辞めなかった。心労で10キロ痩せながらも、育児と仕事を両立する。当然のことながら夫とその両親からのサポートはほとんどなく、見かねた実家の母が助けに来てくれるような状況だった。

 そんな数年を過ごした後、子どもが4歳を過ぎてあまり手がかからなくなってきた頃、麻田さんはプロジェクトを共にした別会社の男性と浮気をする。その時は当然のことながら夫に対する罪悪感もあったのだが、それと同時に、また別の感情も湧いてきたという。

「あ〜これで私は人としてダメになってしまった……という自己嫌悪と罪悪感が襲ってきたのですが、その裏切りの対象が、私をさんざん苦しめた夫とその家族ですからね。それに、ハッと気が付いたら、心がすごく軽くなったんです。会社を辞めろとか、娘がかわいそうとか、社会通念で私を縛ろうとしていた夫たちに“ざまあみろ”と思ったんです」

 相手への恋心から不倫しているわけではない麻田さんは不倫を「密かなレジャー」と呼び、どんな相手と浮気関係になったとしても数回の肉体関係を結べば終わりになってしまう。彼女にとってあくまで基盤は夫と子どものいる家庭であり、浮気はその関係を維持し続けるための一種のガス抜きなのだ。麻田さんはこのように語っている。

「でも、浮気をしてから、あまり夫側の人を恨まなくなったし、ギスギスしなくなったんですよ。こういう形で“復讐”した気持ちになって、心が軽くなったんでしょうね」

 法律事務所に勤務している宇田川玲奈(仮名)さんも同様だ。彼女の夫は仕事を辞めろとは言わなかったものの、家事や育児を一切手伝うことはなく、それが原因で怒りと不満を募らせた。結果、宇田川さんも10人近くの男性と不倫を重ねていくことになる。だが、彼女にとっても、不倫はあくまでガス抜き。浮気しながらも家庭を最優先にし、恋愛関係がこじれた時に暴走する恐れがある男とは始めから不倫関係にならないようにするといった工夫までしていた。そんな宇田川さんも、先の麻田さんと同じように語る。

「浮気をする前よりも、夫の関係がすごくよくなりました。いつも夫に対して、私ばかり我慢して、“私だけが育児をし、人生の辛い部分を押し付けられた”と怒っていたのですが、それがきれいさっぱりなくなりました。私も浮気しているし、あなたは鈍感でまったく育児をしなかったけど、これでおあいこだよね、と思えるようになりました」

 これが最近の不倫女性の現実なのだが、このような状況になったのには理由がある。それは、「稼ぐ女」が増えたということ。男女の雇用に関してはまだまだ問題は山積しているが、それでも格段に改善され、夫より妻の収入の方が高い家庭も徐々にだが増えつつある。

『不倫女子のリアル』に登場する女性たちも全員が職をもっており、それなりに収入がある人ばかりだ。そうすると、当然のことながら不倫がバレて離婚にいたるリスクをさほど感じない。先ほど登場した麻田さんは「私にも娘と食べていけるだけの経済力はあるので、恋愛も自由ですよね。私の場合、離婚したら娘は私のもとにくるでしょうから、夫はたった1人になってしまう。私は慰謝料を払う覚悟もあるし、養育費などをもらわずに育てる自信もあります。すると、夫にとって離婚は孤立するというデメリットしかない」とまで言い放っている。

 さすがにここまで大胆な物言いをする人は珍しいかもしれないが、しかし、女性たちが夫への怒り・恨み・不満などを押し殺さず人生を謳歌し始めるようになったのには、麻田さんが証言したような状況が大きく影響している。これまで「浮気は男の甲斐性」などと言われていたが、この「男」の部分が「男女」に変わりつつあるのだろう。

『不倫女子のリアル』はこう指摘している。

〈今もまた戦後と同じように家族観や道徳観が激変している。それと同時に、婚外恋愛に踏み切る女性が急増している。事象を追っていたら、あまりにも多くの“普通の女性”が不倫を自らの意思で楽しんでいる事実があった。それは旧来の“不倫=不幸”という価値観では断じられないほど、多様で自由であり荒涼とした現実なのである〉

 昨今、不倫をした著名人がことさらバッシングに遭いがちなのは、こういった現実に対するバックラッシュのような部分もあるのかもしれない。
(田中 教)

最終更新:2018.10.18 01:56

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不倫女子のリアル (小学館新書)

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