岡田将生も“ゆとり差別”に怒り! クドカンドラマでも話題の「ゆとり世代」批判は完全なデマだった!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
yutori_160515.jpg
日本テレビ『ゆとりですがなにか』番組公式ページより


「何で「ゆとり」って言われるんだろう。全部上の世代の人たちがやってる……、ふざけるな!」
「(平成元年生まれだと言うと)「あ、平成なんだ〜」みたいな、そういう(軽くバカにした)言い方をする方がけっこう多くて……、何だよお前……」

 宮藤官九郎初めての社会派ドラマとして話題の『ゆとりですがなにか』(日本テレビ)に出演中の岡田将生は、4月17日放送の『行列のできる法律相談所』(同)でこう吠えた。

『ゆとりですがなにか』は、ゆとり第一世代にあたる1987年生まれの坂間正和(岡田将生)、山路一豊(松坂桃李)、道上まりぶ(柳楽優弥)の3人が、「ゆとり」世代ゆえの生きにくさに悩み苦しむながらも成長していく青春群像劇。

 就職活動の時期にリーマンショックが起こり、苦労して内定をつかみ取った就職先だったが、入社してすぐに3.11が起きて大混乱に──。そんな彼らは他の世代と比べても苦労を重ねた年代のはずなのに、「ゆとり」という不名誉なレッテルを貼られ、会社では上司からことあるごとに「これだから「ゆとり」は……」と愚痴を言われる。『ゆとりですがなにか』は、「ゆとり世代」と呼ばれる若者たちが抱えるこのような「納得のいかなさ」を軸に物語が展開されていく。

 しかし、なぜ彼らは「ゆとり世代」と呼ばれ、バッシングを受けることになったのか。

〈「ゆとり世代」という呼び方は正しいのでしょうか、次世代バッシングではないのでしょうか。「ゆとり」の意味を吟味しないまま、安易に使っていないでしょうか。次世代の元気がなくなるようなことをなぜ平気でするのでしょうか〉

 筑波大学人間系(大学院人間総合科学研究科)准教授の佐藤博志氏は、同大学准教授の岡本智周氏との共著『「ゆとり」批判はどうつくられたのか 世代論を解きほぐす』(太郎次郎社エディタス)のなかで、このように綴っている。

 佐藤氏の言う通り、「ゆとり」という言葉の意味をしっかりと認識して使っている人は、実はほとんどいないだろう。

“「ゆとり世代」から週休2日になり、円周率も3.14ではなく3で教えるようになった。結果として学力も下がってしまったことへの反省から、現在では学習指導要領を改善し、学力もV字回復を遂げている。「ゆとり世代」は、教育行政の方向性を間違えたことによって生まれた失敗作。彼ら彼女らは、勉強ができないだけでなく、協調性もない。飲み会に参加しないのをはじめ、会社の方針にも従わない──”

 現在、「ゆとり世代」をバッシングしている人々が共有しているイメージは、だいたいこんなところだろうか。佐藤氏が〈「ゆとり」の意味を吟味しないまま、安易に使っていないでしょうか〉と警鐘を鳴らした理由はここにある。人々が共有するこれらのイメージ、実はまったくの大嘘なのだ。

 どの世代が「ゆとり」なのかというはっきりした定義は存在しないのが実情だが、一般的には、98年改訂学習指導要領で学んだ世代が広い意味での「ゆとり世代」であるとされ、87年4月2日生まれから2004年4月1日生まれまでの人のことを指している。

 この1998年改訂学習指導要領は、従来の詰め込み型教育から脱し、〈自ら学ぶ意欲、思考力、判断力、表現力などを重視し、生涯にわたる学びの基礎となる自己教育力を中核とし〉た「新学力観」を基本原理としてつくられた。これにともない、総合学習の時間が設けられたり、土曜日の半日授業がなくなるなどの施策がなされた。

 言うまでもなく、これら詰め込み型教育からの脱却は、国際化の進む社会のなか、単なる受験テクニックを教える授業ではなく、自分で考え応用の利く学力を身に付けさせるべきという、80年代から継続して求められていた方向性である。

 しかし、その論調は、2002年ごろを境に大きく舵を切ることになった。その変化に大きな影響を与えたのが、00年実施、01年に調査結果が公表されたPISA(OECD加盟国学習到達度調査)である。この調査で日本は、数学的リテラシーは1位だったものの、読解リテラシーが8位に終わる。この結果がセンセーショナルに報道されることでそれ以前からくすぶっていた「ゆとり教育」批判に火がつき始めるわけだが、さらに、03年実施の同調査では、数学的リテラシーは4位、読解リテラシーは12位まで急落。学力低下への危機はさらに募ることになる。

 しかしその後、授業数が増加されるなど「ゆとり」からの脱却とされている08年改訂指導要領が出された後の12年実施の調査では、数学的リテラシーは2位、読解リテラシーは1位までV字回復。これにより、ますます1998年改訂学習指導要領で学んだ生徒たちは「ゆとり世代」というレッテルを貼られることとなっていく。

 ただ、この2012年のPISAの対象となった当時高校1年生の生徒たち、実は、「ゆとり教育」を受けた生徒たちなのである。彼らがどんな教育を受けたか軽く振り返ってみたい。まず、彼らが小学校に進学するのは03年だが、その段階では1998年度版の学習指導要領が使われており、この世代は入学の時から「ゆとり教育」を受けてきたということになる。

 そして、彼らが中学に上がる2009年の前年、08年に指導要領の改訂がなされているわけだが、この08年改訂指導要領が実際の学校現場で実施されるのは、中学校においては12年度からである。つまり、V字回復を成し遂げた生徒たちは、完全に「ゆとり」で学んだ生徒たちなのであった。「ゆとり教育」からの脱却と、PISAのV字回復は実はなんの関連性もなかったのだ。

 では、なぜこのV字回復が成されたのか。それは、教育現場において、PISA対策がとられていたからである。PISAの実施機関であるオーストラリア国立教育研究所は、PISAの目的を〈生徒が学校を超えた生活場面で生産的かつ順応して参加できるようなコンピテンシーを測定すること〉としている。つまり、PISAとは単なる詰め込みではなく、知識をいかに現実の生活に活用していくかを問うテストであり、それはこれまでの日本の学校では教えられていないものだった。

 そこで教育現場ではPISAのような設問に答えられるような教え方を徹底した。07年度からは全国学力・学習状況調査でも、PISA型の〈活用する力〉を問うB問題が出題されるようになっており、これが授業におよぼした影響は大きかった。事実、実際の学校現場に出向き授業を見学することも多い佐藤氏は「あっ、PISA型だ」と思う授業に出会うことが何度もあったと言う。

 また、そもそも、1998年改訂学習指導要領で学んでいた生徒たちの学力が本当に落ちていたかどうかにも疑問が残る。事実、TIMSS(国際数学・理科教育動向調査)の国際順位は、99年から2011年にいたるまでほとんど変わらずに上位の成績を取り続けているからだ。

 ということで、「ゆとり」バッシングの理由とされている「学力低下」がまったくの誤解であることがよく分かった。

「新人類」をはじめ、若者たちを世代でくくり、年長者がバッシングする構図は昔から繰り返されてきたことではある。ではあるのだが、「ゆとり世代」の悲劇は、彼らをカテゴライズするために使われた「受けてきた教育」というファクターによって、他の世代をカテゴライズした要素とは違い、単なる印象論でなくあたかも科学的根拠に基づいているかのように受け止められ、しかもマイナス面のみが語られていることにある。

〈団塊にせよ、新人類にせよ、くくりをプラス評価として定義しなおす、ということがされてきたように思います。団塊であれば「しかしパワフルだ」、新人類であれば「たしかに新しい感覚をもっている」と。でも、「ゆとり世代」だけが洒落で終わらず、ぬきさしならない印象になってしまっている。こうした世代論が自分たちに突きつけられたとき、そこにプラス面を定義しなおす、ということができるのかどうか〉

 また、学力とはまったく関係のない、「ゆとり世代」に対する行動様式批判として、「物欲がなかったり、大きな野望をもっていなかったりと覇気がない」「飲み会に参加しないなど、会社への忠誠心が足りない」といったものがあるが、無論、それは世代全体の特徴ではなく「人による」ものだし、もしもそのような特徴があるとしても、それは「ゆとり教育」が原因ではなく、長引く不景気であったり、雇用の安定しない社会状況といったものの影響が関係しているのは言うまでもない。そのうえで、前述の岡本氏はこう語る。

〈人間が社会生活をともにしていくにあたって、他者を認識するとき、社会的カテゴリーで説明することは避けがたくあるだろうと思います。年代・世代をそのまま名指す文脈のなかでそのカテゴリーが使われているときには、ただの区別です。たとえば、何年生まれから何年生まれの人たちはこの学習指導要領で学んだという事実は、ある一つのカテゴリーを確かに構成するし、その人たちが受けた教育内容がこうだったから、つぎの段階の教育ではこういうことを準備しましょうといった検討は必要かもしれない。しかし、働き方や人づきあいのあり方など、別の文脈にまでその区別が持ち越され、しかもその区別を根拠に不当にマイナス評価をされるようなことがあるなら、それは区別ではなく差別になっている。社会的カテゴリーが、もともとそれを発生させた文脈を越境して、別の文脈にまで濫用されてしまった状態が、差別という現象なのではないでしょうか〉

 単なるネタじゃないか、と考える向きもあるかもしれない。しかし馳浩文科相が「『ゆとり教育』が『緩み教育』というふうに間違った解釈で現場に浸透してしまった。どこかで『ゆとり教育』との決別宣言を明確にしておきたいと思った」と「脱ゆとり宣言」をなるものを行い、為政者みずから誤解を垂れ流している現状だ。「自分はその世代だけど小学校から私立だったから、ゆとりじゃない」などと真顔で弁明する者もいる。

『翔んで埼玉』の埼玉disに代表される地域いじりしかり、差異化のゲームやカテゴリーの濫用は、いとも簡単に差別に転化する。そのことにもう少し敏感になってもいいだろう。
(井川健二)

最終更新:2016.05.15 08:04

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

「ゆとり」批判はどうつくられたのか: 世代論を解きほぐす

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

岡田将生も“ゆとり差別”に怒り! クドカンドラマでも話題の「ゆとり世代」批判は完全なデマだった!のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。世代井川健二教育の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 「表現の不自由展」再開で立川志らくと竹田恒泰が“小学生以下”妄言
2 安倍首相が台風の最中「休養」に批判殺到
3 NHKが台風19号接近のさなか台風情報に安倍政権PR紛れ込ませ
4 「ノーベル賞は日本人ではありませんでした」報道で露呈したもの
5 安倍首相が台風被害拡大の中「ラグビー」勝利に大はしゃぎツイート
6 報ステ後藤謙次の安倍批判がキレキレ!
7 『朝生』で百田尚樹が徹底論破され大恥
8 上田晋也の番組で東国原英夫と千原せいじが日韓問題への無知晒す
9 池上彰が朝日叩きとネトウヨを大批判
10 志らくが津田大介との“あいトリ”討論で “お上忖度体質”を露呈
11 橋下徹に恫喝された女子高生が告白!
12 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(前編)
13 三浦大知が歌う歌は天皇皇后の沖縄への想い
14 堀江貴文が“手取り14万円”「お前が終わってんだよ」でまた無知晒す
15 ラグビー日本代表への“日本の心”押し付けがひどい!
16 葵つかさが「松潤とは終わった」と
17 『報ステ』の“安倍忖度”チーフPがアナやスタッフへの“セクハラ”で更迭
18 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(後編)
19 安倍首相が「桜を見る会」で税金使って地元後援者を大量招待
20 「家政婦」の名目で24時間労働の介護で日当1万円、残業代なし
1 久米宏が「テレビが反韓国キャンペーンをやってる」と真っ向批判
2 安倍政権・厚労政務官が外国人在留申請で口利き「100人で200万円」
3 玉川徹がGSOMIA破棄で加熱するテレビの嫌韓煽動を批判
4 明石家さんまが吉本上層部と安倍首相の癒着に痛烈皮肉!
5 『ゴゴスマ』で今度は東国原英夫がヘイト丸出し、金慶珠を攻撃!
6 『報ステ』の“安倍忖度”チーフPがアナやスタッフへの“セクハラ”で更迭
7 『ゴゴスマ』で「日本男子も韓国女性が来たら暴行しなけりゃいかん」
8 文在寅側近の不正に大はしゃぎの一方、安倍政権が厚労政務官の口利きに無視
9 埼玉知事選で警察が柴山文科相への抗議を排除!柴山も表現の自由否定
10 安倍首相がトランプからトウモロコシ爆買い
11 菅官房長官「トウモロコシ大量購入は害虫被害対策」は嘘
12 GSOMIA破棄は安倍のせい 慰安婦合意から始まった韓国ヘイト政策
13 安倍が後に先送り財政検証の酷い中身
14 GSOMIA破棄で日本マスコミの「困るのは韓国だけ」の嘘
15 松本人志や吉本上層部批判の友近、近藤春菜にバッシング、報復か
16 『週刊ポスト』の下劣ヘイト記事は「小学館幹部の方針」の内部情報
17 GSOMIA破棄!八代・有本ら安倍応援団は「嫌なら来るな」
18 『モーニングショー』で「暑さに耐えるのが教育」元高校野球監督は右派論客
19 古市憲寿の芥川賞候補作「参考文献問題」に選考委員が猛批判
20 『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった!』のデマとトリックを暴く

カテゴリ別ランキング


人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄