ピーター・バラカン「ベビーメタルはまがい物」発言はおかしくない! ベビメタ批判・経歴がタブーの音楽業界

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
peterbarakan_160427.jpg
ピーター・バラカン オフィシャルサイトより


 先日発売したアルバム『METAL RESISTANCE』が4月23日付の米ビルボードアルバムチャートで初登場39位となり、坂本九以来の快挙とも報道されているBABYMETAL。同じく今月3日には、イギリスのウェンブリー・アリーナ(約1万人キャパの大会場)でのワンマンライブも成功させ、まさに、クールジャパン・Kawaii Cultureの伝道師となっているわけだが、そんなBABYMETALを批評したピーター・バラカン氏がSNSを中心に大炎上に巻き込まれている。

 25日放送の『モーニングCROSS』(TOKYO MX)にコメンテーターとして出演したバラカン氏は、司会者がBABYMETALの世界での活躍を紹介したあとにBABYMETALに関するコメントを求められると、笑いながらクビを横に振り「世も末だと思っています」と発言。また、「日本の文化大使じゃないかと思うんです」という他のコメンテーターの意見にも笑いながら「いやー、そうあっては困るなぁ」と返していた。

 その番組を見ていたBABYMETALのファンがバラカン氏のツイッターアカウントに〈ニュースクロス、ピーター・バラカン含め誰一人ベビメタの事を知らなかった感じ、バラカンも見た目だけでコメントした感じ、ラジオも聞いていたので残念・・歳とると先入観や固定観念で決めつけてしまう。自分もいずれはそうなるのかなw〉とリプライ。それに対し、バラカン氏が〈番組の前からメディアを通じて少しは耳にしていましたが、ぼくは全く評価できません。先入観ではありません。あんなまがい物によって日本が評価されるなら本当に世も末だと思います〉と返したことから炎上が始まった。

 その後、バラカン氏のツイッターにはBABYMETALのファンから〈ライブ映像はご覧になりましたか? ぜひ映像をご覧になってからどこをまがい物と感じるか説明していただけませんか?〉〈器の小さい男だなって思った。まがい物と言われようとも結果として世界で評価されてるから本物だろう〉〈誰かいい耳鼻科紹介してあげて〉などというリプライが殺到した。

 確かに、「まがい物」「世も末」という表現はファンにとってはキツ過ぎると感じるかもしれないが、それにしても、バラカン氏の発言はあくまで音楽批評の範疇を出るものではない。

 そもそも、ヘヴィ・メタルという音楽自体、その過激なサウンドやファッションはもとより、悪魔崇拝や反社会性を露悪的に強調した歌詞などで良識的な人々の眉をひそめさせ続けてきたジャンルだった(目、鼻、耳、口、両腕、両足を失った傷痍軍人の悲劇を描く映画『ジョニーは戦場へ行った』をモチーフにしたメタリカによる反戦歌「ワン」など、社会的なメッセージを表現し評価された一部の例外はある)。

 また、音楽好きのなかでも、ソウルやブルースなどのブラックミュージックを愛聴する人々は、ダンスミュージックとしてのノリ・グルーヴが欠落していることから、メタルを忌み嫌うことが多い。実際、バラカン氏も、中古レコード店「Face Records」のサイト内にあるインタビューでメタルやハードロックについて、「ただ単に速弾きするだけみたいなのは、面白くねえと(笑)。そしてBluesとかの本当に良いギターを聞いているから、それらに比べてそういうのは味が無いと思ってたし。そして、それ以降のLed Zeppelinなどのハードロックもリズムがバン、バン、バンってそればっかりで、それだったらブラックのレコードの中にはもっと良いバンドがいくらでもあるし。それと甲高い声を張り上げて、ズボンがキツすぎるようなヴォーカルのものは駄目でした(笑)」と語っている。

 このような従来のメタル批判の文脈から離れても、バラカン氏の「まがい物」という批評は決して間違っていない。そもそもBABYMETALは、dCprGでも演奏する大村孝佳など一流のプレイヤーをバックバンドに揃え、本格的なサウンドと、その音に乗せて歌い踊る少女たちのギャップを大きな魅力として人気を集めてきた。つまり、指摘するまでもなく、もとからギミックありきのコンセプトである。

 同じメタル好きの間でも純粋主義者のヘヴィ・メタル好きはBABYMETALというコンセプトそのものを忌み嫌っているし、それは決して少数派の意見でもない。

 ただ、そのような声は音楽ライターや評論家などの有識者からこれまでほとんど出ることはなかった。BABYMETALを取り上げてこなかった老舗のメタル専門誌「BURRN!」(シンコーミュージック・エンタテイメント)の広瀬和生編集長が15年3月号のなかで「うちも、プロモーションがあれば別にやってもいいと思っています。ただ、「あれがヘヴィ・メタルなのか?」って言った時に…歌って踊る女の子がいて、バックがメタルっていう…」と皮肉を言ったりはしているが、その他からはほとんどそのような声は出てきていない。

 それどころか、BABYMETALが海外で高い評価を受けるにつれ、メディアが事務所の意向をのんで、彼女らがもともとアイドルグループ出身であるというルーツを隠そうとする動きすら始まっている。周知の通りBABYMETALはそもそも、小中学生で構成されるアイドルグループ・さくら学院内の部活動ユニット「重音部」として結成されたのが始まりだったが、彼女らを表紙巻頭に据えた「ミュージック・マガジン」(ミュージック・マガジン)16年4月号掲載の特集にあるグループの沿革を辿る記事には〈企画ユニットとして始まり〉という一文はあるものの、さくら学院の名前や、もともとはアイドルグループ所属だった事実に関して不自然なほど触れられていない。このことに関しては、ライターの吉田豪氏もツイッターでこのように疑問を呈している。

〈公式プロフィールに入れないのも本人たちが触れないのも全然いいんですけど、『ミュージックマガジン』BABYMETAL特集でグループの歴史を辿る記事が2013年のメジャーデビューから始まってたりと、第三者がさくら学院に触れないまま歴史を語るようになっちゃってるのが不思議なんですよ〉

 BABYMETAL批判やルーツに触れることがタブーになっている背景にはいくつかの理由があるだろう。まず大きいのはBABYMETALが、サザンオールスターズ、福山雅治、Perfumeなどを擁する大手事務所アミューズに所属しているということ。音楽雑誌などへの出稿も盛んに行っているので、編集部やライターがBABYMETALの音楽に対して違和感をもっていたとしても、メディアで表立って批判的な発言をすることは難しい。

 そして、BABYMETALが一気に海外でも評価されるようになり、彼女らを「アーティストとして」のみ評価することこそがサブカルとして正しいあり方のような空気がまん延してしまっているというのも大きな理由だ。前述の「ミュージック・マガジン」や「Quick Japan」(太田出版)が続々とBABYMETALを表紙巻頭に据えて大々的に特集しているが、この現象もまさしくそういった文脈から起きている。

 これらの事情が絡み合い、広いようで実は狭い音楽業界のムラのなかで、BABYMETALの音楽に関する批判はできないような状況がかたちづくられていっているのではないか。

 ピーター・バラカン氏の場合はブロードキャスターとしての顔ももち、完全なる音楽業界の村の中の人ではない。これまでも、音楽業界の現状に対して、歯に衣着せぬ発言をしてきた存在だからこそ、このような本音を言うことができたのだろう。

 しかし、そんなピーター・バラカン氏の発した批評的な意見を今度はSNS上のBABYMETALファンたちが束になって襲いかかった。バラカン氏がこれからどうするかは不明だが、この騒動により、今後、メディアでBABYMETALを批判することがより一層難しくなってしまったのは間違いないだろう。
(新田 樹)

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

ピーター・バラカン「ベビーメタルはまがい物」発言はおかしくない! ベビメタ批判・経歴がタブーの音楽業界のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。新田 樹の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 日露外相会談の大失態を必死で隠す安倍政権
2 古市憲寿「平成くん、さようなら」と「終末期医療打ち切れ」論
3 松本人志が指原莉乃に悪質セクハラ差別発言! 
4 東京五輪が日中戦争でなくなる?
5 JOC竹田会長が女性死なせる交通事故
6 追悼!市原悦子が生前語った安倍政権への怒り、反戦の思い
7 NGT48問題でも秋元康の“無責任”
8 純烈・友井報道で芸能マスコミジャニーズ御用体質 
9 つんく♂が秋元のメンバー差別に
10 産経と菅官房長官が「辺野古赤土投入問題」追及の望月記者を攻撃
11 封印されたAKB48盗撮事件
12 収賄疑惑の甘利大臣がバンダイとも
13 AKBと電通のシークレット飲み会
14 文春が東京五輪を!電通元専務に金
15 安倍首相の“サンゴ移植した”嘘を追及しない本土メディア
16 常盤貴子絶賛!『野火』が描いた戦争
17 仏司法当局が東京五輪誘致汚職で竹田恒和JOC会長の捜査開始!
18 元旦朝生のウーマン村本は間違ってない
19 安倍政権の反韓煽動が酷い!「韓国へ渡航禁止」まで主張
20 古舘の後任に浮上!安住紳一郎の悪評
1 安倍首相が辺野古の土砂投入で「サンゴを移した」と大嘘
2 安室、上田、芸能人よく言った大賞前編
3 消費増税反対の内閣官房参与“退職”の裏に官邸の圧力
4 クイーンのB・メイ辺野古署名に『ボヘラプ』鑑賞の安倍首相は…
5 追悼!市原悦子が生前語った安倍政権への怒り、反戦の思い
6 元日『相棒』が今年も安倍政権批判!
7 ローラ、村本、りゅうちぇる芸能人よく言った大賞後編
8 所ジョージが沖縄米軍基地反対ソング! 
9 ウーマン村本、ローラ…権力批判芸能人を排除する醜悪メディア
10 安倍首相の“サンゴ移植した”嘘を追及しない本土メディア
11 早野龍五・被曝論文に重大誤り!お墨付き与えた糸井重里の責任
12 たけしの性差別発言はなぜ問題にならない?
13 安倍首相の改憲キャンペーンに松本人志、小藪千豊らが協力?
14 仏司法当局が東京五輪誘致汚職で竹田恒和JOC会長の捜査開始!
15 産経と菅官房長官が「辺野古赤土投入問題」追及の望月記者を攻撃
16 ゴーン前会長出廷で露呈した特捜部の無理スジ国策捜査
17 バカリズム、指原莉乃が外国人労働者問題で差別丸出し
18 日露外相会談の大失態を必死で隠す安倍政権
19 安倍政権の反韓煽動が酷い!「韓国へ渡航禁止」まで主張
20 平沢勝栄だけじゃない自民党の性差別 

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄