年金情報流出は安倍政権による人災だ! 自らの不正隠蔽のため監視機関を廃止していた

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日本年金機構の情報漏洩問題を引き起こしたのは…(YouTube「ANNnewsCH」より)


 日本年金機構から125万件におよぶ大量の個人情報が流出したのは、安倍政権による“人災”だった。

 そう指摘するのは元検事で弁護士の郷原信郎氏だ。自らのブログに「年金機構個人情報流出事件は、外部機関による監視をなくした安倍政権の大罪」という文章を書いている。それによると、厚労相の委託で年金業務を一手に引き受けている日本年金機構の業務を外部から監視するため2010年に年金業務監視委員会という機関が設置されたが、第2次安倍政権の発足で廃止されてしまったというのだ。

 そもそも日本年金機構は、ずさんを極めた社会保険庁の解体によって誕生した。旧社保庁は、07年に発覚した「消えた年金問題」にとどまらず、職員が国会議員や著名人の年金記録をのぞき見したり、預かった保険料でマッサージチェアを買ったりといった不祥事が相次いだ。それを理由に解体・お取り潰し処分となり、再生への期待をかけて発足したのが日本年金機構である。ところが、肝心な中身の職員はほとんどが旧社保庁からの移籍組だった。組織を替えても人は代らず。そこで、当時の民主党・野田政権が“お目付役”として総務省内につくったのが、年金業務監視委員会だった。郷原氏は、その初代委員長だったのだ。

 郷原氏といえば、九州電力のやらせメール事件の検証を行う第三者委員会の委員長をやったときも、当時の九電最高幹部や佐賀県の古川康知事の事件への関与を暴き出し、最後は郷原氏を指名・任命した九電側と完全に対立するほど、情け容赦のない調査・追及をすることで知られていた。年金業務監視委員会の委員長としても、旧社保庁時代と変わらぬ日本年金機構と厚労省の問題体質を次々と暴露していった。

 郷原委員会の調査によって明るみに出た不祥事はいくつもあるが、比較的よく知られているのが「サラリーマン主婦年金」、いわゆる「運用3号問題」と呼ばれるものだ。これは、保険料を支払っていなかった主婦に対して年金全額の支給を認めるという重大決定を、厚労省が「課長通知」の指示だけで行っていたというスキャンダルだ。保険料をきちんと支払っていた主婦との不公平が生まれるばかりか国民年金法違反の疑いもあった。当時野党だった自民党が国会で厳しく追及し、民主党政権が窮地に追い込まれたほどだった。

 こうしたスキャンダルの芽は他にも山ほどあって、手つかずの部分が少なくなかった。社会保険労務士からの通報や日本年金機構の職員からの内部告発も絶えなかった。

 ところが安倍政権発足から約1年経った13年12月に総務省の局長が突然、郷原氏の事務所を訪れ、年金業務監視委員会を廃止して、総務省は年金問題から手を引き、今後は厚労省の社会保険審議会内の部会が引き継ぐと宣言したというのである。

 郷原氏が「厚労省内の審議会という身内同然の組織に機能の代替は不可能だ」と訴えたが、局長は聞く耳を持っていなかった。郷原委員会の廃止は、安倍官邸の意向が強く働いた“結論”だった。全国紙政治部記者がこう解説する。

「郷原委員会の廃止を安倍晋三総理に進言したのは官房副長官の世耕弘成だったと聞いています。世耕は野党時代、郷原委員会をネタ元にして民主党政権をさんざん追い詰めていた。郷原さんの容赦ない追及ぶりを間近で知っていただけに、郷原委員会を放置すれば、いずれ安倍政権にも禍をもたらすと気づいたのでしょう。年金問題は第1次安倍政権崩壊のきっかけとなった、まさに鬼門ですからね」

 実際、郷原委員会が廃止直前に動いていたのが東日本大震災の行方不明者に対する死亡一時金の消滅問題だった。これは、厚労省の恣意的な時効設定によって東日本大震災で行方不明者になった人の家族が死亡一時金を受け取れなくなっているという話だった。郷原委員会の追及に厚労省は、死亡一時金受け取りはあくまでも「申請主義」(つまり申請が遅れれば受け取る権利が消滅する)だと主張していた。実際にどれだけ多くの人が受け取れなくなっていたかの調査もしていないというずさんさだった。先の政治部記者が続ける。

「震災の混乱で申請が遅れた人、というか行方不明者ですからまだ生存していると信じたい家族の気持ちを踏みにじる常識はずれな措置でした。当時はアベノミクスによる円安、株高で支持率も高く、安定政権としての基盤を整えようとしていた時期です。そのタイミングで世間の反発を買いやすいこんなスキャンダルが表沙汰になったら大変だと判断したのでしょう。一応、設置期限終了による廃止という形をとっていますが、そんなものは閣議決定で省令を変えればいくらでも延長できた。スキャンダルは封印されたということです」

 今回の個人情報流出は個人情報にパスワードをかけていなかったり、開けてはいけないメールを開けたりと、組織内での内規違反の常態化が原因だった。しかも、不正アクセスがわかってから20日以上も発表を遅らせる隠蔽体質も明らかになった。まさに、郷原委員会が取り組んでいた日本年金機構の組織的問題だった。

 もし、郷原委員会を廃止していなかったら、年金情報流出というすべての国民が被害者になる可能性のあるこの重大事は起きていなかっただろう。自分たちの権力維持のためには手段を選ばない安倍政権によって、この国の国民の生命と財産はどんどん危機にさらされていく。
(野尻民夫)

最終更新:2015.06.05 07:24

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