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アイドルに必要なのは不幸な生い立ち? 酒井法子が告白した壮絶な過去と「空っぽ」の自分

『贖罪』(朝日新聞出版)
「アイドル」として成功するタレントにはどんなものが必要とされるのだろうか? 天性の可愛さ? 歌唱力? 握手会でオタクを釣るためのコミュニケーション力? それとも、スキャンダルをうまく避けるための危機察知能力?
いやいや。成功するアイドルに必要なのは、「寂しさ」だと、作家・アイドル評論家の中森明夫氏は主張する。
「オタク」という言葉の創始者としても知られ、80年代以降の文化批評をリードしてきた彼の新著『寂しさの力』(新潮新書)では、成功するアイドルの多くは複雑な家庭で育っているという事実をこう語る。
「芸能界は大変なところです。入ってみたら、見かけの華やかさと違って、とてもきびしい。縛りはきついし、毎日が激しい生存競争で、成功して生き残るのは至難の業。たいていの人は、すぐにやめてしまう。
そう、やめてしまうのが普通なんですよ。やめないとしたら、よほどの理由がある。たとえば、そう、ハングリー精神。お金じゃないんですね。精神的な飢えのようなもの。そこで片親の子供、複雑な家庭で育った娘といった話になるんです」
生い立ちによって背負ってしまった「寂しさ」を埋め合わせるため仕事に打ち込む。そういう人でないとアイドルは続けられないというわけだ。
たしかに、昭和のアイドル史を紐解いてみても、例えば、山口百恵は非嫡出子として生まれ母子家庭で育っているし、中森明菜も貧しい家庭で育った。それは現在のトップアイドルも変わらず、人気絶頂のAKB48グループの中心メンバーにしても、高橋みなみ(AKB48)、松井珠理奈(SKE48)、渡辺美優紀(NMB48)などが、母子家庭など複雑な家庭環境で育ったといわれている。
しかし、そんななか、中森氏が「寂しい」の範疇を超え、「『自分』がない。からっぽになることでしか生きてこられなかった。そんな切実なからっぽを、私たちはアイドルと呼んでいたのではないか?」とすら表現するほど壮絶な人生を歩んだアイドルがいる。
覚せい剤事件を引き起こした酒井法子である。『寂しさの力』では、彼女をこう紹介している。
「福岡に生まれ、二歳で両親が離婚、その後、実の母は行方知れずとなる。埼玉の伯母のもとで育ち、父が再婚して福岡へ戻った。暴力団員だった父、逮捕歴のある弟。その父も交通事故で亡くなる。十八歳にして、なんと彼女は身なし子になりました。
複雑な家庭に育った者が芸能人になる──酒井法子こそその代表と言っていいでしょう」
酒井法子がその半生を振り返った自叙伝『贖罪』(朝日新聞出版)によれば、7歳までは伯母のことを本当の親だと思っており、ある日突然「おまえはウチの子じゃないんだよ。本当の父親が引き取りたいと言っているけど、法子はどうしたい?」と告白された壮絶な過去を振り返っている。
そして、事実を知らされた後、前述したように、彼女は再婚した父親とともに福岡で暮らし始めるわけだが、『贖罪』に記されたこの時期の「寂しさ」は相当なものだ。
「わたしはこの時期に、子どもながらに大人の顔色を窺うようになった。パパにも、ママにも、なかなか心から甘えることができなかった」
「子どものわたしにとっては、けっこう辛い季節だった。学校での出来事も、あまり記憶に残っていない。思い出したくなくて、あえて忘れているのかもしれない。何事もうまくいかない。そんなふうに感じることもあった」
そんな彼女も松田聖子に憧れて芸能界を志し、アイドルとしてデビューすることになる。中森氏の『寂しさの力』では、酒井法子をトップアイドルとして育て上げた、サンミュージックの相澤秀禎会長・そしてその長男である相澤正久社長に取材したときの話をこう綴っている。
「あの子は幼い時に母親に捨てられ、里子に出された。二人の継母を転々とした。父親はヤクザだったという。相当につらかったと思うんです。でも、そのつらさをまったく出さない。自分を捨てた母親も、父親のことも、絶対に悪く言わないんです」
「彼女は自分が生きていくためには、まず、“いい子”に見られなければいけない、と非常に強く思っているんですよ。常に目の前の相手を気にして、その人に気に入られるように全力でがんばるというか」
相澤親子は酒井法子の性格についてこのように語っているが、先に紹介した自叙伝『贖罪』のなかにも、まさにそれを裏付けるような記述がある。
「愛されたいという気持ちは、小さいころからずっと持っている。相手が何を喜ぶのかと、いつも一生懸命に考えていた。アイドルやタレントとして突っ走ってこられたのも、自分が愛されたいと思っていたからだと思う」
「人に尽くすことは、昔から苦ではなかった。でも、尽くし過ぎるきらいがある。よかれと思ってしていることが、やりすぎだと言われることがあった。
(中略)
自分が生きてきた環境の中で育まれてきた性格なのだろうと思う。根底には、自分のことを愛してもらいたいという気持ちがある。そのために、誰かのために何かすることに全力を尽くす。そうするうちに頑張りすぎていることが何度もあった」
ぶりっこしていい子を演じているわけではない。「周囲や目の前の相手に気に入られなければ、生きていけない」、そんな過酷な生育環境のなかで育まれてしまった「本能」。しかし、それがアイドルとして生きるにあたって最大の武器となったのだから、人生は皮肉なものだ。
この『寂しさの力』出版を記念して行われた「新潮45」(新潮社)2015年4月号掲載の中森氏との対談では「自分の本当の気持ちを知るのが、一番難しかったりしますね」と語っていた酒井法子。
先般の薬物スキャンダルにおける執行猶予期間も終わった今、これからは、自分の本当の気持ちに正直に、幸せな「自分自身」の人生を歩んでいけるよう祈るばかりである。
(新田樹)
最終更新:2015.06.03 03:21
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