五輪忖度の「ラムダ株隠蔽」で西村康稔、加藤勝信がインチキな言い訳! いまも「公表しなくていい」対応変えずパラでも隠蔽か

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18日会見する加藤官房長官(政府インターネットTVより)


 東京五輪開会式の当日7月23日に、大会関係者から国内ではじめて「ラムダ株」を確認しておきながら、国内初確認の事実を海外メディアに指摘されるまで厚労省が隠蔽していた問題。国会の閉会中審査や官房長官会見でもこの問題の追及がおこなわれたが、ところが、大臣たちは非を認めないどころか、揃いも揃って開き直りの態度を見せている。

 たとえば、18日の衆院内閣委員会では、立憲民主党の吉田統彦衆院議員が「なぜ、この事実が速やかに公表されなかったのか」と追及。すると、コロナ担当の西村康稔・経済再生相はこう答弁した。

「厚労省ではですね、国立感染研がVOC(Variant of Concern/懸念される変異株)に位置づけたものを公表しているということで、ラムダ株については現時点では感染研はVOCともVOI(Variant of Interest/注目すべき変異株)とも位置づけていないため、この検出例については厚労省では公表をおこなっていなかったと」

 さらに、同日におこなわれた記者会見で、加藤勝信官房長官もこう強弁した。

「ラムダ株は現時点で国立感染研究所のVOCに位置づけられていないことから、今回まさにそうした公表の仕組みに乗っていなかったということ」
「(厚労省は)外部からの問い合わせを受け、個別に情報を公表したと聞いている」

 つまり、ラムダ株は公表すべき変異株の対象ではないから隠蔽ではない、今回は問い合わせがあったから公表しただけ、と言い張ったのである。

 まったくバカも休み休み言え。ラムダ株は現時点で南米を中心に世界の40カ国以上で確認されており、ラムダ株が広がったペルーでは10日までに19万7000人以上がコロナで死亡(朝日新聞デジタル14日付)。不明な点も多いとはいえ、感染力が強く、ワクチンが効きにくいという指摘もある。また、テレビでも6月下旬あたりから頻繁に取り上げられ、「新変異「ラムダ株」南米で猛威 ワクチン「効果1/5」も 死亡率“最悪”のペルーで大流行」「変異 南米型「ラムダ株」の猛威…外出制限も 日本に入る可能性は?」などと注目を集めてきた。

 このように国民のあいだにもラムダ株が上陸することへの不安が高まっていたというのに、初確認された事実を厚労省は公表せず、メディアに指摘されるまでひた隠しにしていたのだ。西村大臣も加藤官房長官も「国立感染研が『懸念される変異株』に位置づけてないから公表しなかった」などと言い張っているが、そんなものはまったく理由になっていない。国民の関心が高まっている問題を公表しなかった、その事実一点だけでそれは「隠蔽」にほかならないではないか。

「VOCに位置づけられていない」という言い訳はまやかし 明らかに五輪忖度

 しかも、WHOが6月にラムダ株を「注目すべき変異株」に位置づけたあと、国立感染研は7月6日に〈検疫・国内では報告がないため、現時点では VOCs/VOIsへの位置付けは⾏わず、ゲノムサーベイランスで発⽣動向を注視していく〉とした。つまり、報告例がなかったために位置づけをおこなわなかったのだ。それが検疫ではじめて確認されたのだから、厚労省はその時点で発表すべきだったのだ。

 実際、今年春に関西圏で猛威を振るったアルファ株が国内で初めて確認されたのは昨年12月25日だったが、その日のうちに田村憲久厚労相は会見を開催してその事実を公表。19時にも会見をおこなっていたにもかかわらず、アルファ株の初確認のためだけに21時から緊急で会見を開いたのだ。

 にもかかわらず、ラムダ株の初確認に対してはどうして迅速な対応もせず、挙げ句、海外メディアに追及されるまで隠し通したのか。これはどう考えても、東京五輪開催に水を差すことになると踏み、意図的に事実を隠したとしか思えない。

 しかも、海外メディアの追及を受け、しれっと厚労省がラムダ株の国内初確認を公表した際も、出された情報は「ラムダ株を検出したのは30代女性」「7月20日に羽田空港にペルーから羽田空港に到着し検疫で陽性が判明、その後、国立感染研がラムダ株と確認」「無症状」というものだけ。この女性が五輪関係者だったことが判明したのは、東京五輪の閉会から5日も経った13日のことだった。

 本サイトでも既報のとおり、この隠蔽問題を追及したアメリカのリベラル系ニュースサイト「Daily Beast」の記事(8月6日付)では、国立感染研の職員が匿名で「通常、新しい変異株が見つかると、情報はすぐに公表されるが、今回は公表されない」「この情報はオリンピックが終わった後に報告するのが最善であるというコンセンサスが厚生労働省にあった」と証言していた。この記事が出たことで厚労省はラムダ株の国内初確認を公表せざるを得なくなったわけだが、検出されたのが大会関係者だったことは東京五輪の閉会後まで押し隠したのである。あまりにもわかりやすい隠蔽ではないか。

ラムダ株はいまも「公表しないくていい」状態 パラ期間中に確認されても隠蔽するつもりか  

 だが、恐ろしいのは、こうして国民に伝えるべき情報を、東京五輪開催を優先させるために隠蔽したことだけではない。問題は、24日からはじまるパラリンピックでも同じように情報隠しがおこなわれている、ということだ。

 というのも、前述の記者会見で加藤官房長官は、変異株にかんする公表方法について、こう述べたからだ。

「新型コロナについては国民のみなさま、さまざまな関心や不安を持っている。そういった意味において、変異株にかかる情報のあり方がそれに沿ったものなのかどうかという観点で、いま厚労省で検討がなされている」

 つまり、「どう公表するかは検討中」だということは、いま入国がおこなわれているパラリンピック関係者からラムダ株をはじめとする国立感染研が「懸念される変異株」に位置づけていない変異株が確認されても、現時点では「公表しなくてもいい」扱いになっている、ということなのだ。

 19日時点でパラ関係者の感染者数は74人にのぼり、選手村滞在者からも感染が確認されているが、もしかすると、すでにラムダ株などの変異株が確認されながらも公表されず、またも閉会後まで隠蔽されるかもしれないのである。

 そもそも、政府は五輪をめぐっても、感染者の情報公開を求められると「組織委では陽性者となった大会関係者の個人にかんする情報は公表しない取り扱いになっている」などと逃げてきた。ラムダ株の国内初確認事例の情報隠蔽でさらに不信感が高まっているにもかかわらず、この期に及んでも「検討中」などと言っていることからも、パラリンピック閉会まで再び“不都合な事実”が隠されてしまう可能性は十分考えられるだろう。

 それでなくても、ラムダ株が確認された大会関係者と濃厚接触した可能性のある人のリストを厚労省が関係自治体や組織委と共有しなかったことを厚労省は18日になって発表。「ベータ株」の感染者でも同様の問題が起こっていたといい、厚労省のザルぶりが明らかになっている。しかも、ラムダ株はスクリーニング検査がおこなわれておらず、市中感染がすでに起こっていてもおかしくない状況にある。

 医療崩壊のみならず、検疫・変異株スクリーニングの不徹底、さらには情報隠蔽──。こんな国で、これから子どもまで観客として動員しパラリンピックを開催しようとしているのである。正気の沙汰ではないとしか言いようがないだろう。

最終更新:2021.08.20 12:11

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