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南アサッカー、チェコビーチバレー選手の感染、イギリス陸上選手の濃厚接触も公表せず!コロナ感染状況を隠し続ける政府と組織委に批判
東京2020オリンピック競技大会公式ウェブサイトより
東京五輪が「一大クラスターイベント」となる可能性がまたしても高まった。来日している大会関係者や海外メディア関係者の「バブル崩壊」が連日伝えられているが、ここにきて、明後日22日に日本と対戦予定にある南アフリカのサッカー男子代表チームの選手2人とスタッフ1人の3人が新型コロナに感染し、濃厚接触者は21人にものぼっていることが判明したからだ。
東京五輪組織委員会は、濃厚接触者となった選手について試合前6時間以内にPCR検査で陰性となれば出場できる、としている。ご存じのとおり、PCR検査では本当は感染していても陰性と出てしまう「偽陰性」の場合があり、「偽陰性」の選手が出場すれば、試合での接触によって感染を広げる可能性も十分に考えられる。実際、ブラジルで10日に閉幕したサッカー南米選手権(コパ・アメリカ)では、選手を含む大会関係者約180人が陽性と確認され、関係者から新たな変異株がブラジルではじめて検出される事態にまで発展した。
この濃厚接触者の扱いひとつとっても、組織委は選手の命と安全を守ることを放棄しているとしか思えないが、最大の問題は、組織委がこの期に及んでもその「隠蔽体質」を改めようとしていないことだ。
というのも、組織委は17日に選手村に滞在する大会関係者1名、さらに18日午前には選手2名が新型コロナの陽性が確認されたと発表したが、その際、明らかにされたのは「組織委に報告があった日、陽性が判明した日、国内在住者か海外在住者か、入国後14日以内か以降か、選手なのか役員なのかなどの立場」だけ。陽性者の国や地域、性別、出場種目などについては「プライバシーなどの観点から公表しない」という方針を貫き、「陽性者は同じ国で同じ競技」という情報しか明かそうとしなかった。
ところが、海外メディアの報道を受けて南アフリカのオリンピック委員会が陽性判定を受けた3人が南アフリカのサッカー男子代表選手とビデオアナリストであることを公表し、一斉にメディアが報道。すると、同日夜になって組織委もその事実を認め、本日には濃厚接触者が21人にのぼることを公表したのだ。
感染者状況を隠蔽し続ける政府・組織委の姿勢に厚労省アドバイザリーボードメンバーも批判
組織委は「陽性者の国籍を公表すると個人が特定されてしまう可能性が高い」などと言って情報公開を拒んでいるが、今回、南アフリカ側は陽性者の出場種目のみならず名前も公表しており、もはや「プライバシー」を盾にするのは無理がある。さらに、各国のオリンピック委員会や競技団体による公表のみならず、大会がはじまれば出場予定の選手が欠場することでおのずと明らかになってしまうだろう。むしろ、情報を隠すことによって、不信感や不安感は増す一方だ。
実際、陽性者の国籍や出場種目の情報を組織委が「隠蔽」する姿勢に対しては、専門家も疑問視。厚労省新型コロナ対策アドバイザリーボードメンバーである和田耕治・国際医療福祉大学教授も「感染者の状況を周知することは、2次感染を防ぐために重要だ。五輪に対する不信感は高まっており、実態を明らかにしなければ、無用な疑念を抱かせる」と指摘している(毎日新聞ウェブ版17日付)。
だが、組織委はこの「隠蔽」方針をいまだに改めようとはしていない。そして、組織委が明かそうとしない情報が、各国のオリンピック委員会の公表や海外メディアによる報道によって日本国内に伝わるという歪な状態がつづいているのだ。
現に、17日に入国時の検査でスタッフ1人が陽性だったと公表していたチェコのオリンピック委員会は、本日19日、選手村に滞在しているビーチバレー男子代表の選手も陽性と判定されたと公表。組織委は陽性者の国籍を公表していないため、これらの情報もチェコのオリンピック委員会が発表しなければ判明しなかったものだ。
さらに、英メディアのBBCは昨日18日、16日に東京に到着したイギリス陸上チームの選手6人とスタッフ2人が、東京到着時に陽性と判定された人の濃厚接触者と判定され、現在、事前合宿地の施設で隔離に入っていることを報道。同じく英ガーディアンも、選手らが濃厚接触者だと知らされたのは18日に横浜でトレーニングを終えたあとだったことを伝えている。
しかし、この事実について、現時点で組織委からの発表は一切なし。というのも、組織委が公表するとしているのは五輪関係者の陽性者のみで、濃厚接触者については原則、公表しない方針をとっているからだ。
一般乗客と飛行機同乗で選手は誰もが濃厚接触者になるリスク、そして濃厚接触者は試合に出場できる制度
前述したように、海外メディアの報道によって組織委は選手村での陽性者が南アフリカのサッカー男子代表チームだと追認し、濃厚接触者の人数も公表した。だが、そうした後手後手の対応によって世界中にその隠蔽体質を露呈させたあとも、いまだに情報をオープンにせず、またも海外メディアによって事実を暴かれるという失態を重ねているのである。
じつは、このイギリス陸上チームに濃厚接触者が出て隔離中というニュースについては、同じくイギリスの五輪出場選手であるハンマー投げのテイラー・キャンベル選手が、本日未明に「いまイギリス選手団の仲間たちと飛行機に乗っている」とした上で、一般の乗客と交わり濃厚接触者となるような事態について「避けようがない」と投稿。キャンベル選手によると、選手団と一般の乗客が交ざって搭乗しており、空いている列にチームで座れるようカウンターで頼んだものの認められなかったとし、「五輪に出るために大変な努力をしてきたが、台無しになる危険に晒されている」と訴えていた。つまり、来日する前の段階から「バブル方式」は崩れており、選手自身が危機感を抱く状況に置かれているのだ。
こうした選手の安全がまったく守られていないという事実は、組織委が濃厚接触者の有無やその経緯についてきちんと公表することで浮き彫りになる問題だ。にもかかわらず、組織委はいまだにその情報をひた隠しにする始末。さらに、本来ならば14日間の隔離が必要な濃厚接触者を、試合6時間前のPCR検査だけで出場可能としてしまえば、一体どんなことが起こるのか。
そして、もし万が一、選手や大会関係者で「一大クラスター」が発生すれば、首都圏の医療提供体制にも波及することになるが、そうした非常事態が起こっても、組織委と政府の隠蔽体質を考えれば、その事実も覆い隠されてしまうだろう。対策がザルであることだけではなく、この隠蔽体質こそを改めさせなければならないのである。
(編集部)
最終更新:2021.07.19 09:21
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