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菅首相「日本学術会議」任命拒否問題でフジ平井文夫がデマ! 志らく、橋下徹、八代英輝もスリカエの政権擁護と学術会議攻撃
『バイキング』に出演する平井氏
菅義偉首相による日本学術会議の任命拒否問題が、ワイドショーでも大きく取り上げられている。本サイトでも繰り返し指摘してきたように、今回の問題は時の権力が学問の自由、言論の自由を踏みにじるだけではなく、「政府が行うのは形式的任命にすぎない」というこれまでの政府による法解釈を無視した違法行為であるという点だ。
しかし、ワイドショーでは“御用コメンテーター”たちが焦点ずらし、論点のすり替えに必死になっている。そして、ついに公共の電波を使って、信じられないようなデマまで流された。デマを喧伝したのは、平井文夫・フジテレビ上席解説委員だ。
それは5日に放送された『バイキング』(フジテレビ)でのこと。そこで平井氏はこんなことを言い出したのだ。
「だってこの人たち6年ここで働いたら、そのあと学士院というところに行って、年間250万円年金がもらえるんですよ。死ぬまで。みなさんの税金から。大体。そういうルールになっている」
この発言を受けて、番組MCの坂上忍らスタジオの出演者からは「えー!」という驚きの声が口々にあがったのだが、これは紛れもないデマ、フェイクニュース。日本学術会議と学士院は管轄も違えば役割も異なる組織だが、そもそも日本学術会議の会員数は210人(任期6年)で、対する学士院の定員は法律で150人と定められ、しかもそれは終身会員だ。平井氏は日本学術会議の会員は任期が終われば自動的に学士院に行けるかのように語ったが、定員150人の組織に入ることなど不可能なのだ。
この平井氏の発言は、ネトウヨまとめサイトの「アノニマスポスト」や「Share News Japan」などによってすぐさま拡散された一方、間違いを指摘する声も数多く上がった。その結果、平井氏は昨日6日放送の『とくダネ!』(フジテレビ)に出演すると、「学術会議の会員全員が学士院会員になれるとの誤解を一部に与えてしまった」などと釈明。同日の『バイキング!』でも、エンディング前に伊藤利尋アナウンサーが「昨日の放送について補足と訂正があります」と言い、平井氏の発言を訂正した。
「誤解」でもなんでもなく明確な「デマ」を流したというのに、上席解説委員という立場にある人間が問題発言をおこなった自社の番組に出てこず、アナウンサーに訂正させるとは……。その無責任ぶりに呆れるほかないが、さらに平井氏は釈明をおこなった『とくダネ!』でも「学術会議の会員は学士院の会員に推薦されますが、ならない人もいますし、学術会議以外の人も学士院会員になる道はあります」などと発言。まるで日本学術会議の会員が全員学士院の会員に推薦されるかのように語ったが、そのような決まりはどこにもなく、性懲りもなく“年金デマ”を助長するかのような発言をおこなったのである。
だが、平井氏の“暴言”はそれだけではない。デマを流した平井氏はその反省もなく、日本学術会議に約10億円の予算が国から出ていることに対し、『とくダネ!』でこう主張しはじめたのだ。
「やっぱり口出してほしくないなら自分でやればいいじゃないですか。なんで『口は出すな、税金はくれ』って言うの」
政府に政策提言をおこなう機関なのだから「口を出す」のは当たり前だし、その独立性を守るためには「口を出されても金は出す」が国としての基本だ。だが、そうした大原則を無視して「自分でやれ」と言い出すって……。
八代弁護士、橋下徹、志らくらも“税金もらってるなら国の言うこと聞け”と学術会議叩き!
しかし、これは平井氏だけの主張ではない。実際、5日放送の『グッとラック!』(TBS)では、立川志らくも「10億円の予算を国からもらってやるからいけないんであって、別にこんなのなくていいんじゃないですか?」「学問の侵害、弾圧につながるって言うんだけども、だけど別に研究はできるわけで、学者の意見を聞きたいのならば、それだけの組織をつくればいいんですよ」「私がそのメンバーだったら『いいよ、別に。自分たちでやるから』って」と発言。同番組のコメンテーターとなった橋下徹氏も「税金が入っているというところで、国民からすれば『金はくれよ、でも口出すな』って、それは学者さんのみなさん、ちょっと違うんじゃないのと思っちゃう」などと大合唱を繰り広げたのだ。
同じように、『ひるおび!』(TBS)でも八代英輝弁護士はこう発言していた。
「政府がかつて気に入らないことを発言された方を排除していくようなものになってしまって危険だと言うんであれば、私、ちょっと疑問なのは、この日本学術会議というものに国費、国民の税金を投じているわけですよ。で、やはり政府に対して厳しい意見を言うんだったら任意団体でいいわけじゃないですか。これを国費を投じておこなうという以上は、ある程度、民主的なコントロールというものも必要」
さらに、『グッとラック!』で志らくは、こんなことまで口にした。
「税金使ってやっているから、国が決めたものに対して『違う』って人の意見が多いと『なんだい?』って、上は思いますわね、当然」
税金が投じられているのだから、国に楯突くようなことは言うな──。こんなことがまかり通れば、戦時下において科学者たちが戦争に協力したのと同じことが繰り返されてしまう危険がある。その反省のもとに日本学術会議はあるというのに、志らくはこんな暴論を振りかざしたのだ。
いや、さらに絶句したのは、橋下氏の発言だ。橋下氏は同番組で、日本学術会議の次に取り上げられた、芸能人の相次ぐ自殺にかんする報道の話題のときにも、“10億円を「いのちの電話」に使えばいい”などという主張をおこなったのである。
国民の関心が高まっている自殺の問題と関係がまるでない日本学術会議の予算話をリンクさせて、「こっちに予算を回せばいい」「こっちのほうが有益だ」と主張する。そうすることで、日本学術会議に対して国から出ている10億円は“無駄金”であり、“税金泥棒”だと強調してみせたのだ。
産経新聞と加藤官房長官が日本学術会議の人件費めぐりミスリード演出
日本学術会議の10億円という予算額が妥当なのかどうかは議論の余地はあるだろう。実際、日本学術会議の会員などからは逆に「手弁当でやっている」「交通費が出ないこともある」というような声が出ており、予算が不十分だという意見もある。しかし、それはまったく今回の問題とは切り離されるべき話だ。繰り返すが、いま問題になっているのは、菅首相が独立した機関に対して違法な人事介入をおこなったことだからだ。
にもかかわらず、ワイドショーでは「年金デマ」まで飛び出し、ネット上でも「日本学術会議は中国の息がかかっている!」だのといった根拠のない話題が拡散される始末……。つまり、凄まじい論点ずらしが吹き荒れているのだ。
しかも、こうした問題の矮小化、論点ずらしの先頭に立っているのは、菅政権だ。
たとえば、5日の官房長官会見では、産経新聞の記者が10億円予算問題を話題にし、「予算の内訳」がどうなっているかを質問。すると加藤勝信官房長官は、スラスラと「人件費などを含めて政府・社会等に対する提言等ということで2.5億円、各国アカデミーとの交流等の国際的活動で2.0億円、科学の役割についての普及啓発で0.1億円、科学者間ネットワークの構築で0.1億円、事務局人件費などで5.5億円」と答えたのである。
突然、「予算の内訳は?」と訊かれたら、いつもの加藤官房長官なら「いまは把握していない」「詳細は事務局に訊け」と言いそうなものなのに、まるで示し合わせていた質問であったかのように答えた加藤官房長官。そして、この内訳が報じられると、ネット上では〈人件費に5億5000万円!〉〈正に既得権益〉〈税金で売国会議やってるの?〉〈内訳の中に旅費があるけど人によってはC国に頻繁に行ってたんだろうなあ〉などといった声が溢れたのだ。
だが、この「事務局人件費に5億5000万円」というのは、会員の学者に分配されているようなものではない。実際、2020年度の一般会計予算で割り当てられた日本学術会議の経費は約10億5000万円、そのうち人件費は約6億2000万円となっているが、昨日6日放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)に出演していた日本学術会議の大西隆・元会長は、こう説明をおこなっていた。
「学術会議というのは国の機関なので、内閣府の一部局なんですよね。ですからここに、たしか50数人の国家公務員の方が働いているわけです。トップは役所の局長級の方です。その方々の人件費がこのなかに含まれていまして、おそらくその人件費とか、非常勤の方もいますから、それを合わせると、この6億2000万円という人件費の大半、おそらく4億円以上、5億円弱ぐらいがそういう事務局の人件費なんですね」
一方、日本学術会議の会員・連携会員が会議に出席した際の手当は、1日2万円。会議が1日に2回おこなわれてもこの金額は変わらず、大西元会長によればこの手当の総額は「予算上は1億7500万円」。番組の説明だと、年度末には予算が不足し手当を辞退してもらうことさえあるという。
菅首相、加藤官房長官の“犬笛”でネトウヨ・新自由主義者たちが学者攻撃
つまり、「事務局人件費」は内閣府の一部局員として働く常勤職員に支払われているものであり、会員である学者たちに支払われているものではなかったのだ。しかも、昨日6日の会見で加藤官房長官が再び産経記者の質問に対して「令和元年度の会員手当の支給総額は約4500万円」と明かしたように、会員に対する手当は1億円の半分にも満たないというのである。
しかし、翌日になって加藤官房長官があとからそう説明しても、すでにネット上では平井氏の「年金デマ」と同様、あたかも学者である会員に5億5000万円が流れているかのようになっている。いや、それどころか、産経新聞がネット版記事で「学術会議の会員手当約4500万円 加藤官房長官が人件費示す」というミスリードを誘うタイトルで報じると、1人当たり4500万円の手当が出ていると信じた人たちがまたも〈既得権益の恐ろしさ〉〈あの立命の教授にも4500万円 ヒェー〉〈天下りの温床?〉などと騒ぎ出したのだ。
そう。まるで、加藤官房長官が産経と申し合わせて、ネトウヨに向けて“何を攻撃すべきか”という「犬笛」を吹いたかのような事態になっているのである。
そして、こうした「犬笛」を、菅首相自身も吹いている。実際、5日の「グループインタビュー」では、「日本学術会議は政府の機関であり、年間約10億円の予算を使って活動している」とわざわざ金額を持ち出し、その上で「推薦された方をそのまま任命してきた前例を踏襲してよいのか考えてきた」と述べたからだ。
国の予算をいくら使って活動していようが、法解釈では総理大臣が任命拒否することはできない。だが、菅首相は予算額を挙げた上で「悪しき前例主義を打破した」かのように主張した。ようするに、橋下氏が強調したのと同じで、「こんなことに税金が使われていていいと思うか」と論点ずらしをしてみせたのだ。
菅首相や加藤官房長官が暗に攻撃すべき対象を発信し、一方で安倍政権を擁護してきた御用コメンテーターたちが必死で論点ずらしをおこなう。しかも、それは「税金の無駄遣い」という大衆の歓心を買うには打ってつけのテーマで──。だが、中曽根康弘・元首相の“2度目の葬儀”に国費を約1億円投じようという政権も、さらには森友・加計学園や「桜を見る会」問題という税金の無駄遣いを問題にしてこなかった御用コメンテーターたちが何を言うか、という話だ。この姑息な騙しに乗ってはいけない。
(編集部)
最終更新:2020.10.07 01:46
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