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伊藤詩織さんも出演NHK『バリバラ』の再放送が突如、差し替え! ネトウヨや自民党・小野田議員が抗議、官邸からの圧力説も
Eテレ『バリバラ』(番組HPより)
先日本サイトでも紹介した、4月23日放送のNHK『バリバラ』(Eテレ)の、「バリバラ桜を見る会~バリアフリーと多様性の宴~」。25日深夜にも再放送が予定されていたのだが、突如再放送が中止になった。
昨晩25日深夜0時から再放送される予定だったにもかかわらず、放送開始わずか30分前の25日23時30分に、番組公式アカウントが以下のようにツイート。
〈「バリバラ」Eテレ4/26(日)午前0時からは予定を変更して新型コロナ関連の「自粛”検討会議」をアンコール放送します。なお「バリバラ桜を見る会 第一部」は4/30(木)夜8:29まで見逃し配信中です。▼NHKプラス https://plus.nhk.jp/watch/st/e1_2020042318351… ※利用にはログインが必要です ▼TVer〉
「バリバラ桜を見る会~バリアフリーと多様性の宴~」の再放送が突如中止、4月2日放送回の再放送に差し替えられたのである。
災害など突発的なニュースで放送が中止になるならわかるが、同じ番組の別の回の再放送。しかも、差し替えられた4月2日放送「自粛”検討会議」は、すでに4月4日深夜に再放送もされたものだ。
これは、どう見ても異常だ。いったい『バリバラ』に何があったのか。
『バリバラ』といえば、「生きづらさを抱えるすべてのマイノリティの人たちのバリアをなくすために考える」情報バラエティ。障害者やマイノリティの当事者たちが出演し、彼・彼女らを取り巻く社会に鋭く切り込んできた番組だ。
詳しくは既報をお読みいただきたいが(https://lite-ra.com/2020/04/post-5390.html)、23日放送の「バリバラ桜を見る会」を簡単に振り返ると、「2019年度に多様性の推進に功績のあった方々」が「社会を動かした当事者とともに、社会の多様性を考える」という趣旨でスタジオに集結。民族差別撤廃の声を上げ、川崎市の差別禁止条例の制定に尽力している在日コリアン三世の崔江以子(チェ・カンイジャ)さん、不妊手術を強制した旧優生保護法裁判を戦う小林寶二さん・喜美子さん夫妻のほか、さらに、山口敬之氏からの被害を告発、地裁民事で勝訴し性暴力をなくす活動に取り組むジャーナリスト・伊藤詩織さんがスタジオ出演していた。
地上波ゴールデンのテレビ番組に伊藤さんが出演し発言するというだけでも画期的だったが、番組ではタイトルからもわかる通り、安倍首相による「桜を見る会」を風刺するギャグや、安倍首相、麻生太郎財務相などを風刺したコントなども披露されていた。さらには、伊藤さんと崔さんが、新型コロナウイルスに乗じて起きている差別問題についても警鐘を鳴らすなど非常に意義のある内容だった。
しかし、こうした内容の番組の再放送が、突如、放送中止になったのだ。
どう見ても、23日の放送内容を問題視した安倍官邸や自民党、あるいは官邸の意図を忖度した上層部が圧力をくわえ、再放送を中止させたとしか思えないのだが……。
番組を制作したNHK大阪放送局の広報部は「コロナ感染の現状を鑑みて再び伝えるべき内容と判断した。圧力などはない」としているが、その経緯を見てもとても信じられるものではない。
ネトウヨがNHK への抗議扇動、自民党の小野田紀美参院議員もNHK攻撃
というのも、「バリバラ桜を見る会」は23日放送前後から、ネトウヨや安倍応援団たちから攻撃を受けていたからだ。
〈NHKなめとんのか? 何これ? 反政府番組じゃないですか。健全な批判でなく。障害者の名を語って。これは抗議すべきでしょう。〉
〈伊藤詩織さん、崔江以子さん出るんだ。ドン引き。NHKいらない。〉
〈すげえな、100%純粋ヘイトやん。左巻きは表現の自由と言うだろうがね。〉
〈障害者を利用した、反政府番組、反日番組〉
〈放送法を遵守できないのなら停波するべきだよ(´ºωº`)〉
〈下品で公正中立の欠片も無い内容に吐き気すら催すわ。こんな腐りきった公営放送局 #NHK なんぞ予算の無駄。廃止して国営放送局作るべき。〉
〈Eテレのバリバラという番組で、安倍さんと麻生さんを思いっきりディスってますね! おまけに伊藤詩織まで出演!!何ですかこの番組は!? NHKのやること!?
Eテレまで目が行き届かないとか、言い訳はやめて、あるべき姿のNHKに戻ってもらいたいと思います。〉
ネトウヨ系サイトも次々に批判記事を配信。「Share News Japan」は「NHK教育テレビ 『バリバラ』に批判殺到… → ネット「NHKなめとんのか?」「抗議します」」などという記事を配信。さらに、「政治知新」も「【NHKが反政府ヘイト番組を放送】『バリバラ「桜を見る会~バリアフリーと多様性の宴~」』にネットは大炎上 ネット「こんな番組の為に(受信料を)払っているわけじゃない」「反政府番組、これは抗議すべき」」と煽っていた。
またネトウヨのなかには、自民党議員に圧力をかけるようご注進する者も現れていた。
たとえば、ネトウヨ発言で連発で有名な自民党の山田宏参院議員にこう呼びかけるツイート。
〈山田さん
Eテレのバリバラ23「桜を見る会〜バリアフリーと多様性の宴〜」を知っていますか? とても酷い番組で、完全な反政府番組だと思います! 総務省に確認取れませんか?〉
30日夜に予定されている「バリバラ桜を見る会」第2部は放送されるのか
そして、こうした動きに乗っかってきたのが自民党の同じくネトウヨ議員・小野田紀美参院議員だった。小野田議員は放送翌日の24日、上述の「Share News Japan」の記事を引きながら「ぜひお時間あったらNHKの公平性を欠いた低俗な番組について、追及して頂けないでしょうか?」というご注進リプに答える形で、以下のようにツイートした。
〈「政治家がメディアに圧力をかけた!」と言われる事が容易に想像できますが一言だけ。電波という国民共有の財産を使用し、税金を投入して運営している放送局が、この非常時にこんなもの作る時間があったら、今困っている国民が利用できる制度や申請の方法(全然報道されず)を1秒でも多く流すべきでは?〉
小野田議員といえば、3月5日の参院予算委員会で質疑に立った際、トイレットペーパー不足や日本国内感染者の数にクルーズ船感染者数を含めて1000人超えとNHKを筆頭にマスコミが報じていることを「事実と違う報道だ」と憤った挙げ句、総務省に対して「(マスコミを)指導しろ」「デマを流した人に罰則を」などと口にしていたばかり。「政治家がメディアに圧力をかけた!といわれる」などと予防線を張りながら、しっかり圧力をかけてきたというわけだ。
いまのところ表立った政治家の動きはこの小野田議員くらいだが、裏ではNHKに安倍官邸から様々な圧力がかかっていたというのは想像に難くない。
実際、これまでも、安倍首相と岩田明子記者のホットライン、あるいは菅官房長官とNHK上層部のパイプなど、安倍官邸はあらゆるチャンネルを通じて、NHKの報道に圧力をかけてきた。加計問題を告発した前川喜平・元文科事務次官の告発インタビューお蔵入り、森友問題でスクープを連発していた相澤冬樹記者の左遷、『クローズアップ現代』国谷裕子キャスター降板……例を挙げ始めたらキリがない。
ちなみに、安倍首相個人でいえば、2001年にNHKが放送した日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷を取り上げたETV特集『問われる戦時性暴力』に対し、内閣官房副長官だった安倍氏と自民党の中川昭一衆院議員(故人)のふたりが放送直前に政治的な圧力をかけ、その結果、番組が改変されたという事件もあった。このとき、安倍首相は「勘ぐれ、お前」という直接的ではない脅し文句で圧力をかけてきたことを、当時面会した放送総局長が証言している。
加えて、今は緊急事態宣言下にある。新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)では、緊急事態宣言が発出されると、NHKは「指定公共機関」とされ、政府対策本部長(総理大臣)がこの指定公共機関に〈新型インフルエンザ等対策に関する総合調整を行うことができる〉とある。さらに、〈総合調整に基づく措置が実施されない場合〉には総理大臣が指定公共機関に〈必要な指示をすることができる〉と規定されている。
NHKが政権からの介入に普段以上に神経質になっている状況で、緊急事態宣言に伴う規定を拡大解釈し、あるいはちらつかせて、圧力をかけた可能性も十分にあるのではないか。
公共放送なのに中立じゃないなどという攻撃をしているネトウヨが多いが、言うまでもなく、放送法における政治的中立というのは、時の政権からの介入を防ぐためのものであり、政権批判は偏向でもなんでもない。だいたい、問題の「バリバラ桜を見る会」は多様性の尊重が主題であり、それが「反政府」に見えるというのは、多様性やマイノリティを踏みにじることばかりしている安倍政権の問題だ。
また、緊急事態宣言とも関連するが、小野田参院議員が持ち出している「困っている国民が利用できる制度や申請の方法をもっと流すべき」という理屈であれば、すべてのバラエティやドラマなど報道以外の番組の放送全体でのバランスを見るように言うならまだしも、特定の番組をあげつらう話ではないだろう。
ましてや、こうした緊急事態宣言下という社会状況にあるからこそ、普段以上に権限を発揮しうる政権に対して、普段以上に厳しくチェック・批判するのは、報道の当然の役割ではないか。
さらに「バリバラ桜を見る会」では、多様性に逆行する動きに関して議論するなかで、伊藤さんと崔さんが新型コロナウイルスに乗じて起きている差別問題についても警鐘を鳴らすなど、現在の日本において非常に意義のある発信があった。NHK含めいま多くのテレビ局が流している過去のドラマやバラエティ、スポーツの再放送などより、はるかにいまコロナ禍のもとでだからこそ放送されるべき内容だった。(詳しくは既報で→https://lite-ra.com/2020/04/post-5390.html)
それが、不可解な再放送中止によって、観る機会が奪われたというのは許しがたいことだ。あらためて、再放送を設定してもらいたいのはもちろんだが、気になるのは、30日夜に予定されている「バリバラ桜を見る会」第2部の放送だ。この第2部は、きちんと放送されるのだろうか。あるいは内容が改変されるようなことはないのだろうか。
NHKでは政治報道が官邸と政治部に牛耳られるなか、圧力に晒されながらも真っ当な調査報道や政権批判を試みる社会部や『クローズアップ現代+』『NHKスペシャル』、あるいは五輪至上主義と歴史修正主義にNOを突きつけた『いだてん』のようなドラマなど、ギリギリのところでなんとか視聴者・読者にとって価値ある放送を続けようとする番組もある。『バリバラ』もまさにそうした番組のひとつだ。
『バリバラ』には圧力に負けず第2部を放送してもらいたいが、『バリバラ』スタッフの力だけではかなわないかもしれない。NHKに残された数少ない良心を潰させないためにも、視聴者は大きな声をあげなければいけない。
(編集部)
最終更新:2020.04.26 10:50
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