菅官房長官「政府支援で高級ホテル50カ所に新設」に非難殺到! ホテル建設ラッシュで五輪開催時でも供給過多なのになぜ?

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菅義偉Twitter(12月7日)より


 菅義偉官房長官の「世界レベルのホテルを50カ所に新設」発言に批判が噴出している。菅官房長官は7日、2016年の大地震で被災し、いまだ傷痕の残る熊本県益城町などを視察。記者団に対して「地域経済を活性化することが重要」などと述べ、政府が低金利で貸し付ける「財政投融資」を使って、外国人観光客誘致の支援を強化する考えをこのように示した。

「わが国は世界レベルのホテルが不足していると言われており、今後各地に世界レベルのホテルを50カ所程度新設することを目指しております」

 スイートルームを多数完備するような外国人富裕層向けを念頭に置いているというが、この菅官房長官の発言に、ネット上では強い批判の声が相次いでいるのだ。

〈みんな言ってる、ホテルなんかより被災地に支援をって。ブルーシートまだあるんだよ。誰を見て政治してるの?〉
〈仮設で不便な生活続くのに…〉
〈ホテルは儲かるなら勝手に民間が建てる〉
〈外国の富裕層向けのホテルが足りないだと? なんの義理があって富裕層の贅沢を国民の税金使って用意しなきゃいけないの??〉
〈増税しました→社会保障削ります→高級ホテル建てます、ときたわ。クソだな〉
〈高級ホテルのスイートルームから富裕外国人が仮設住宅に暮らす日本人を見下ろす植民地的未来図〉

 当然だろう。安倍政権の被災地ないがしろの姿勢はいまに始まったことではないが、よりにもよって、血税を投じて「世界的高級ホテル」を大量に新設……いったい何を考えているのか、呆れてものも言えなくなってくる。

 そもそも、外国人向けの高級ホテルがそんなに必要なのだろうか。たしかに第二次安倍政権誕生以降、訪日外国人観光客の数は増え続けているが、インバウンドの成長率に目を向けると、2015年をピークにどんどん鈍化しているのが現実だ。

 もともと外国人観光客の急増は、中国を筆頭とする東アジアの経済・旅行事情と円安のトレンドが主要因と分析されていた。しかし、近年では韓国、香港、台湾からの観光客に陰りが見える。これは、リピート訪日観光客数の頭打ち、安倍政権の対韓輸出規制等による日韓関係悪化、タイなどの東南アジアへの旅行先の移行などが原因だ。

 つまり、インバウンドの多くを占める東アジアからの観光客が「安さ」と「気軽さ」を求めて訪日していたのに、ここにきて「外国人富裕層向けの世界的高級ホテル」を打ち出すとは、観光戦略としてもピントが外れていると言わざるをえないのだ。

 事実、みずほ総合研究所が先月29日に発表したレポート「2020年東京五輪開催年のホテル需給の試算」でも、2020年の訪日外客数について、政府目標の4000万人を大きく下回る3400万人に下方修正された。しかも、同レポートによれば、過去の事例を参照する限り、当たり前のように言われている「東京五輪開催が押し上げ要因となって訪日外国人旅行者数が一時的に急増する」等の五輪前後における訪日観光客の急変動は否定されるという。

 さらに注目すべきは、みずほ総研が「東京五輪開催時にホテルは不足しない」との試算を出していることだ。周知のように、政府は東京オリンピック・パラリンピックでの外国人観光客の増加を喧伝し、「ホテルが足りない」と煽り立てているが、実際には十分にまかなえるというのである。

 同レポートによると、2018年にホテル客室数が大幅に増加したため、日本人と外国人のそれぞれに「標準」「上振れ」「下振れ」の 3シナリオを想定した場合、どの組み合わせにおいても「ホテルは不足しない」との結果が出たという。

〈本年の試算からは、ついにホテル不足時代は終焉したと言えるだろう。近年、ホテル不足の試算においては、東京や大阪などいずれかの地域でホテル不足が発生するとの試算結果となっていた。不足が発生していた東京、大阪においても、今回の試算では不足が発生しなくなった。この要因は、ホテル客室数の予測値が上振れしたためだ。前年試算と比べて、日本人を中心に宿泊需要が上方修正されたものの、供給側の拡大がそれを上回る予想になったということだ。〉(同レポートより)

 しかも、「東京都と大阪府ではいずれのシナリオにおいても稼働率の低下は免れられない」「特に大阪は供給増の影響が大きく稼働率は 70%を割る」との試算すら出している。つまり、五輪特需を当て込んだ開業や新装オープンが相次ぐホテル業界だが、すでに現状(開業予定含む)で“供給過多”に陥っているのだ。

菅官房長官「高級ホテル」宣言の背景? 横浜と大阪が確実視されるカジノ

 そうした状況で、菅官房長官がぶち上げた「国が投資する世界的高級ホテルの50カ所新設」が現実となれば、みるみるうちに淘汰が進み、日本のホテルグループの倒産や外資への売り渡しが進行するのは火を見るより明らかだろう。

 その来るべき「ホテル業界の大崩壊」については、あのアパホテルの元谷外志雄・グループ代表も“不敵”に断言。元谷代表といえば、本サイト読者にはおなじみ“安倍首相のビッグサポーター”にして“極右論壇のタニマチ”だが、「プレジデント」(プレジデント社)10月4日号のインタビューでこう述べている。

「現在、国内では高級ホテルの開業ラッシュが続いています。これらのホテルは、過去がそうであったように経営者の思いが反映されすぎていて、広くて豪華で、一般の利用者の多くが望むものではなく、どこかで行き詰まりを見せるでしょう。アパホテルも高層の高級ホテルをもっていますが、これは正直いってあまり儲かりません」

 念のため説明しておくと、「高級」と言ってもアパホテルであり、菅官房長官が言うような「世界レベルのホテル」つまりマリオットやヒルトン、ハイアットなどとは比較できないが、興味深いことに、元谷代表は五輪後のホテル不況を利用した拡大路線まで宣言している。「資金繰りができなくなったホテルを買い集めてシェアを拡大し、20%を目指していく計画」というのだ。恐ろしい野心である。

 まあ、アパホテルの野望はともかく、いずれにしても、“ホテル大不況”が目に見えているなか、菅官房長官が突如、「各地に世界レベルのホテルを50カ所新設」とぶち上げたのはなぜか。

 囁かれているのは、安倍政権肝いりのカジノ(IR=ホテル等との統合型リゾート)との関係だ。

 周知のように、IRについてはすでに、横浜市と大阪府・市、和歌山県、長崎県の4地域が誘致を正式表明(ほか東京、千葉、愛知などが検討)している。確実視されている候補地が横浜と大阪で、その“黒幕”は菅官房長官といわれる。とくに横浜は、菅官房長官の選挙区であり、利権を牛耳る“お膝元”だ。今年8月、林文子市長がこれまでの「白紙」を翻して誘致を表明し物議を醸した。その直前7月には官邸を訪問しており、菅官房長官の強力な介入が取り沙汰されてきた。

「地域経済活性化」の美名のもと、被災地を置き去りにして、私欲まみれの高級ホテルやカジノを推進する安倍政権。一連の「桜を見る会」問題にしてもそうだが、この国の政治権力の中枢は、もはや独裁国家のそれと同じレベルにまで堕落している。これ以上、好き勝手にさせてはならない。

最終更新:2019.12.12 04:04

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