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GSOMIA破棄 日韓対立は本当に「韓国のせい」か? 慰安婦合意から輸出規制まで…安倍首相の韓国ヘイト政策を一から検証
韓国ヘイト政策を推し進めた安倍首相(首相官邸HPより)
「日韓請求権協定に違反するなど、国と国とのですね、信頼関係を損なう対応が残念ながら続いている、韓国側が続けているわけでありますが、日本はその中にあってもですね、現在の北東アジアの安全保障環境に照らせば、日米韓の協力に影響を与えてはならないという観点から対応してまいりました」
韓国政府によるGSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄について23日、官邸での囲み取材でこう語った安倍首相。ようするに「すべて韓国が悪い」ということらしいが、まったく、どの口が言うのか。
いや、安倍首相だけではない。この国はいまや、マスコミも国民もほぼ全員が「韓国がすべて悪い」「韓国のせいでこうなった」「文在寅大統領が日韓対立を引き起こした」などとがなり立てている。今回のGSOMIA破棄の背景は“戦後最悪”といわれる日韓関係の悪化にあるわけだが、この間、次々と生じた両国間の問題を遡って点検すると、関係をここまでこじれさせてしまった発端は、何から何まで、日本の安倍政権が原因だ。
とすれば、本サイトとしてはあらためて、「すべて韓国が悪い」と思い込んでいる諸賢のために“日韓関係破綻”の本当の原因を突きつける必要があるだろう。
結論から言うが、今日にいたるまでの関係悪化を最初に引き起こしたのは安倍首相であり、その後のエスカレートも多くが、安倍首相からの“仕掛け”に起因している。
では、その始まりは何なんのか。日韓対立は韓国のせいだと叫ぶマスコミは、韓国の徴用工判決やレーダー照射問題を始まりだと言っているが、原因はもっと前にある。
それは2015年末のいわゆる「慰安婦日韓合意」だ。念のためおさらいしておくが、日韓合意は、日本政府は韓国政府が設立する元慰安婦を支援するための財団(和解・癒やし財団)に10億円を拠出し、一方の韓国政府はソウルの日本大使館前の少女像について関連団体と協議したうえで「適切に解決されるよう努力する」とし、日韓政府は「慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決」を確認するという内容だった。
だが、この合意について、元慰安婦の支援団体や韓国世論は猛反対した。当然だろう。その実態は、安倍政権がアメリカ側からのプレッシャーにしぶしぶ従い、「真摯な反省」を抜きに、カネで慰安婦問題を封じ込めようとするものだったからだ。交渉は当時の朴槿恵大統領と安倍晋三首相の「側近による秘密交渉」であり、元慰安婦の意見が十分反映されなかったことも明らかになっている。
だいたい、この日韓合意は、慰安婦問題の歴史認識を軽視し、カネですべてを解決しようとする安倍政権の意向が強く滲み出たものだ。事実、そこには河野談話にあった強制性を認める文言はまったくなく、安倍首相自身が実際に公の場で「元慰安婦たちへのおわびと反省」を語ったわけでもなかった。その後も安倍首相は一切謝罪の言葉を述べず、元慰安婦たちが首相による「おわびの手紙」を求めた際も、国会答弁で「毛頭考えていない」と全否定した。
しかも、最悪なのは、この合意のなかに、在韓国日本大使館前の少女像をめぐる項目があり、韓国政府が「関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」としていたことだ。そもそも、市民が平和を希求する像を建てることを、公権力が制限すること自体が「表現の自由」の侵害であり、当然のことながら韓国市民は猛反発した。
民間の“慰安婦像”設置にヒステリックな反応、森友・加計隠しで韓国攻撃しかけた安倍
翌2016年、かつての軍事政権の系譜にある保守系の朴政権がスキャンダルで倒れた後、大統領に就任した文在寅の登場は、まさに安倍首相の歴史修正主義に抗する韓国世論の象徴でもあった。周知の通り、文在寅は公約通りに日韓合意の交渉過程を再検証し、撤回へ向かう。安倍政権は、これにヒステリックな嫌がらせを繰り返した。
たとえば、2017年の始めには、韓国で慰安婦問題を象徴する少女像が新たに設置されたことを受け、安倍政権が駐韓大使の一時引き揚げや日韓通貨スワップ協議の中断などの対抗措置を強行。さらに、韓国政府が慰安婦問題日韓合意見直しの方針を打ち出すと、安倍首相は平昌冬季五輪開会式への欠席をちらつかせるなど、幼稚な圧力を加え始めた。その結果、米国、韓国、北朝鮮での平和的交渉から“蚊帳の外”になったのは周知の通りだが、結局、安倍は“国益”をいくら損ねようとも、韓国を敵視することで国民の目をそらさせ、森友・加計問題などで揺れる政権の再浮上を計ったのである。
そして、2018年にはいると、安倍政権が仕掛けた歴史修正主義の愚行はますます深みにはまっていく。GSOMIA破棄に直接的につながった徴用工問題の泥沼化も、そもそもは安倍首相の歴史修正主義が原因だ。
同年10月、韓国の最高裁判所(大法院)が、戦中に日本へ労働力として強制的に動員された元徴用工らの訴えを認め、日本企業に賠償を請求する決定をくだした。もともと、元徴用工の個人請求権の問題は、歴代韓国政府も「日韓の政治的配慮」のもとで封印してきたが、この司法の判決を受けて、文大統領は「司法の独立」を重視し、尊重する意向を見せた。念のため言っておくが、三権分立を原則とする民主主義国家の行政の長として当たり前の判断である。
ところが、安倍政権は「ありえない判断」「日韓請求権協定で解決済み」などと猛批判を繰り返し、あろうことか韓国政府へプレッシャーをかけた。つまり、安倍は民主主義の原則を完全に無視し、隣国の司法へ介入しようとしたのだ。もはや底が抜けた状態だが、これに韓国世論が強く反発したのは、徴用工問題が戦中日本の戦争犯罪に絡んだ人権問題だからに他ならない。
徴用工判決で安倍首相がネグった「個人請求権は消滅していない」という共通認識
いい機会なのであらためて確認しておくが、1965年の日韓基本条約の際、両国政府によって締結された請求権協定には、たしかに韓国人徴用工の損害賠償請求権等を含む取り決めもなされた。しかし、この条約及び協定は日本政府が「賠償」するものではなく、あくまで「経済協力」という名目であり、植民地支配や戦争犯罪に対する謝罪の性質は一切盛り込まれなかった。さらに、個人請求権については消滅していないというのは、日韓両政府ともに踏襲してきた認識だった。そして、条約締結当時の韓国は軍事政権であり、アメリカの意向もあって、被害者や遺族個人に対して満足な保障は行われなかった。それまで沈黙を強いられていたものが、韓国社会の民主化であらためて人権問題として出てきたというのが、徴用工問題の本質なのだ。
ところが、安倍はこうした背景を一切ネグって、壊れたロボットのように「請求権協定で解決済み」と繰り返し、メディアもバカの一つ覚えのように首相の言い分をリピートした。もう一度言うが、法的にも「解決済み」とする日韓請求権協定には個人の請求権は無関係であり、韓国司法が認定した「植民地支配の違法性」などについても、それを謝罪・賠償するものではないのだから、安倍は問題の本質をすり替えているにすぎない。
実際、戦時の強制労働については、企業レベルでの和解などもこれまで成立してきた。だが、徴用工問題は、大日本帝国の加害性に関する極めて歴史的なイシューだ。つまり、安倍政権が企業に対して請求を受けないよう働きかけたのも、徴用工問題を認めることで“日本の加害性”を認めたくないという歴史修正主義のあらわれだったのである。
にもかかわらず、国内メディアは政府の「解決済み」なるペテンを鵜呑みし、日本国内での“嫌韓感情”を煽っていった。その裏側にも、安倍政権の策動があった。元徴用要工判決と同じ時期には、韓国で開かれるた国際観艦式における海上自衛隊の艦旗「旭日旗」をめぐって、掲揚自粛を求める通知を韓国政府が出すと、安倍政権は「遺憾だ」などとして拒否、参加を見送る。言っておくが、旭日旗は戦中日本で“天皇の代わり”とされた旗で、大日本帝国のミリタリズムの象徴だ。植民地とされた韓国側の反発は当然であり、安倍政権の対応は過剰としか言いようがないのだが、安倍政権はあえてこうした大げさな反応をとることによって、メディアや大衆の劣情を煽動し続けたのだ。
「レーダー照射」問題で関係を悪化させる「動画」を公開させた安倍
そんななか勃発したのが昨年末の「レーダー照射」問題だった。発端は韓国軍と自衛隊の間での偶発的なトラブルだったが、安倍政権はこれを“徴用工問題への反撃”の奇貨として、猛烈な韓国バッシングに利用した。安倍自民党の政治家は口をそろえて「日本への敵対行為だ」とわめきたてたが、しかし、レーダー照射問題がここまでこじれてしまった最大のポイントは、防衛省が韓国側の不意をつくかたちで動画を公開してしまったことにあった。この動画公開によって、韓国国防省は追い込まれ、あの反論動画という不毛な応酬を招き、両国政府の引っ込みがつかなくなる形で対立が激化したわけである。この動画公開は、安倍の“鶴の一声”で公開されたものだ。時事通信の報道によれば、防衛省は当初〈防衛当局間の関係を一層冷え込ませると慎重だったが、韓国にいら立ちを募らせる安倍晋三首相がトップダウンで押し切った〉〈複数の政府関係者によると、方針転換は(12月)27日、首相の「鶴の一声」で急きょ決まった〉という。
あらためて指摘しておきたいのは、安倍政権が知性的な外交感覚を持っていれば、「レーダー照射」問題は担当部署での話し合いにより、粘り強く調整を続けるという選択が妥当だったはずだ。にもかかわらず、安倍首相が動画公開を支持したのは、この問題で韓国政府を追いつめることで、徴用工問題を押し切ろうとしたからにほかならない。同時に、国内マスコミによる“嫌韓キャンペーン”に燃料を与えることで、政権の支持をとりつけようとの欲望もあった。実は、このレーダー照射問題が沸騰する間、文在寅大統領は徴用工問題で「政治的争点化」を避けたい希望を述べるなど、両国の関係改善の糸口を模索する動きもあったのだが、安倍首相のほうがそれを反故にしたわけである。
そして、安倍政権は今年、参院選での争点隠しのために、韓国への輸出規制を発表、次いで「ホワイト国」から除外した。韓国側はこれを「経済侵略」ととらえたが、それは誇張ではない。何せ、安倍は一連の輸出規制を、明らかに韓国経済に打撃を与えようとの意図のもとで行っているからだ。日韓関係はもはや“武器を使わない戦争”への第一歩を踏み出してしまったのである。
いかがだろうか。こうして冷静に振り返ってみれば明らかだろう。韓国側のGSOMIA破棄を呼び込んだのは、安倍による醜悪な歴史修正主義と韓国への責任転嫁の破滅的な積み重ねだったのだ。
GSOMIA破棄「韓国のほうが困る」を強弁する日本政府とマスコミの異常
ところが、日本政府はGSOMIA破棄という深刻な事態にいたっても、「困るのは韓国」「日本は困らない」「たいした影響ない」などと強弁。マスコミも「日本の衛星のほうが数が多く優れている」「困るのは韓国なのに、韓国はバカ」などと相変わらずの調子で騒いでいる。
こいつらはGSOMIAが北朝鮮情勢を把握したい日本の要望で締結されたと言う経緯を知らないのか。この問題については、稿を改めて検証するつもりだが、ほとんど戦時中に「連戦連勝」を連呼し続けた大本営発表並みと言っていいだろう。
いずれにしても、GSOMIAの解消が東アジアと日本の安全保障に緊密にかかわる以上、安倍が引き起こしたことは、この国を危機にさらすことに他ならない。あえて右派の言葉を借りれば“亡国の宰相”と言わざるをえないだろう。
繰り返す。「最悪」を更新し続ける日韓関係と「GSOMIA破棄への道」は、まさに慰安婦問題や徴用工問題に代表される戦中日本の加害性の問題に対して、日本政府が真摯に対応するどころか、逆に、安倍がその歴史修正主義的性質をエスカレートさせ続けたからに他ならない。
ところが、いまだに国内マスコミは「韓国けしからん」の大合唱、ネトウヨだけでなく、世論全体がもはや戦中さながらの好戦的マインドに侵されている。
このままでは最悪の場合、なんらかの弾みで軍事衝突が起きれば、本当に戦争への道が開けてしまう可能性すら、決してゼロではないだろう。だからこそ、何度でも言わねばならない。日韓関係をこじらせて国民の危険を招いた責任は、安倍晋三にある。いますぐ、総理大臣を辞任すべきだ。
(編集部)
最終更新:2019.08.25 10:09
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