改憲勢力3分の2割れなのに…安倍首相が橋下徹と民意無視の“改憲議論”強要、「私の任期中に改憲実現」明言の倒錯

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安倍首相と『Live選挙サンデー』に出演した橋下氏(左・自民党HP/右・FNN PRIMEより)


 きのう投開票が行われた参院選。「憲法改正」を争点に掲げた安倍首相だったが、獲得議席数をみれば、与党・自民党は57議席と、改選前から10議席も減らし、公明党が14議席。ここに日本維新の会(10議席)を加えた“改憲勢力”は、非改選と合わせて「改憲発議要件の3分の2議席」を下回った。

 投票率が戦後2番目に低い48.80%となるなど盛り上がりに欠けた選挙だったことは事実だが、この結果は率直に“改憲発議をさせるべきではない”という世論の表れと言っていいだろう。

 ところが、信じがたいことに、昨晩、テレビの選挙特番をはしご出演した安倍首相は、「やっぱり改憲の議論をせよということだ」と真反対のアピール。民意を完全に“捏造”し、9条改憲に前のめりになっていたのである。

 繰り返すが、今回の参院選で改憲勢力は「3分の2」を割ったのだ。にもかかわらず、各局の選挙特番では、この安倍首相の詭弁にちゃんと反論したキャスターやコメンテーターはほぼ皆無。むしろ“改憲は既定路線”かのように進行するありさまだった。

 なかでも、安倍改憲に露骨な助太刀をしたのが、あの橋下徹・元大阪市長だ。フジテレビの特番『Live選挙サンデー』に大阪のスタジオから中継出演した橋下氏は開口一番、安倍首相をこうおだてた。

「まずは自民党、公明党の圧勝、おめでとうございます」

 自民党が改選前議席を割ったのに「圧勝」と言い放った時点で、橋下氏お得意の詐欺的弁術にほかならないが、これには安倍首相もまんざらでもない表情。さらに橋下氏は続けて“安倍改憲”を猛烈にPRしはじめた。

「僕は正直、衆議院、参議院のW選挙を期待していました。やはり安倍さんの、総理の任期中にですね、絶対に憲法改正の国民投票、憲法改正の発議をやってもらいたかったんですね。それはやっぱり国民の大きなうねりを起こさなければ絶対できない。背水の陣で、総理がこれはもう憲法改正をやるんだと、負けか勝つか、これをもう一か八かで賭けてやるんだってエネルギーが国民のうねりを起こしたと思うのですが、いま、この結果を受けて、圧勝ですけども、衆参Wにしておけばよかったなという悔いはありませんか」

 いやはや「安倍さんの任期中に絶対に改憲の国民投票をやってもらいたい」って、あまりにも剥き出しのアシストだが、これで安倍首相は完全に水を得た魚。「維新の会のみなさんにもご協力いただきながら、国民民主党のみなさんのなかにもですね、憲法議論をしっかりしたいと言っている方がおられる」と維新の協力を仰ぎながら、厚顔にも選挙結果が示す意味をこう言って“捏造”したのである。

「この街頭演説においては、ほとんどの会場で、“議論する政党か候補者か、あるいは議論すら拒否する政党か候補者か”ということを訴えてきました。結果としてはですね、国民のみなさんは“ちゃんとやっぱり議論せよ”ということだったのだろうと思います。私の使命として、残された任期のなかで、憲法改正に当然、挑んでいきたいと考えております」

 念のため言っておくが、すでに安倍首相のフジ出演時点で、マスコミ各社は「改憲勢力の3分の2割れ濃厚」などと報じていた。なぜそれが「改憲議論をせよ」という話にすり替わるのかまったく理解できないが、橋下氏はまるで安倍首相と事前に打ち合わせでもしたかのように、こう煽りたてた。

「今回の選挙結果を受けて、衆議院の憲法調査会(註:憲法審査会)を、全会一致の原則を外して、自民党や改憲勢力の多数決で衆議院の憲法調査会を動かしていかれるということですか」

安倍首相と橋下徹はこの期に及んで「改憲論議しない」立憲民主党と共産党を攻撃

 ようするに橋下氏は“憲法審査会を無理矢理やってしまえばいい”と言っているわけだが、つまるところ、安倍首相がカメラの前で言えないグロテスクな本音を、橋下氏が“代弁”しているということだろう。

 実際、安倍首相は橋下氏の発言を受け、待っていましたとばかりに誘導を進めていった。「共産党は議論すらしないという姿勢をほぼ明らかにしています」「それでは国会議員としての職責果たせない」「この選挙の結果を受けて、野党のみなさんにも真摯に対応していただきたい」とまくしたてたかと思えば、すぐさま橋下氏が「共産党と同じく立憲民主党も安倍政権中には議論しないと言っている」「立憲民主党もある意味、職務放棄と見なして、同意がなくても憲法調査会を進めていくということですか」と畳み掛ける。息をぴたりと合わせて補完しあいながら、「改憲議論をしない野党はおかしい」という印象操作をしかけていったのだ。

 さらに橋下氏は、MCの宮根誠司らからの安倍首相への質問が終わると、最後にまた「憲法改正の衆議院の憲法調査会、これはどうしても共産党と立憲民主党が議論に応じないというのであれば、国民民主党や維新やら、自民党、公明党、ここで、きちっと多数で憲法調査会を動かしていただきたいと思います」とダメ押し。結局、橋下氏が「圧勝」を印象付けながら改憲を煽りに煽りまくって、フジの安倍首相の出演は終わったのである。

 “与党と維新ら改憲戦力だけで憲法審査会を開いてしまえ”と言う橋下氏と、またぞろ立憲民主党や共産党ディスを繰り出す安倍首相——。自分たちに反対する政党を“敵”に仕立て上げ、力づくで願望を押し通そうとするその姿は、まさに民主主義を破壊する“独裁者コンビ”と呼ぶしかあるまい。

 しかも、フジの選挙特番では、この安倍・橋下コンビのやりたい放題に対して、他の出演者が一切止めようとしなかった。いや、フジだけではない。他局の選挙特番でも、やはり安倍首相に直接「改憲論議を押し進めることは民意無視だ」と指摘する者はほとんどおらず、ただただ“改憲の意気込み”をフリーで語らせるような番組ばかりだった。

 唯一の例外はテレビ東京の『TXN選挙SP 池上彰の参院選ライブ』で、MCの池上が「改憲勢力を確保できるかはかなり微妙」と安倍首相にふって、「そもそも憲法改正すべきだと仰っている以上、選挙で3分の2を確保するということが本来やらなければいけない責務だったのでは」と、至極当然のツッコミをしたぐらいだろう。

日本テレビでは「私の任期中に」と発言! 世論調査でも民意は「改憲NO」なのに

 まったく、テレビマスコミの体たらくには心底うんざりするが、調子に乗った安倍首相は日本テレビで粕谷賢之報道局解説委員長の質問に答えるかたちで、とうとう自ら「私の任期中にですね、(改憲発議と国民投票を)なんとか実現したいと考えています」と発言した。

安倍首相は、この参院選での「改憲勢力3分の2割れ」という結果をどう考えているのか。

いや、選挙結果だけではない。最近のマスコミ各社による世論調査を見ても、安倍首相の憲法改正に反対する声が賛成する声を上回っている。

 たとえば、朝日新聞の調査(7月13、14日)では、〈参議院選挙で、自民党と公明党の与党と、憲法改正に前向きな日本維新の会などが、参議院の3分の2以上を占めた方がよいと思いますか。占めない方がよいと思いますか〉との設問に対し、「占めない方がよい」(40%)が「占めた方がよい」(37%)を超えた。共同通信の調査(6月26〜27日)では、「安倍政権下での憲法改正」に「反対」が50.1%で「賛成」が35%とかなり差がひらいた。

 政権寄りである読売新聞の調査(7月12〜14日)ですら、「憲法9条に自衛隊の存在を明記する条文を追加する安倍首相の考え」にかんして「反対」が41%に対し「賛成」は34%だ。NHK調査(7月13〜15日)でも「今の憲法を改正する必要があると思うか」について「改正する必要はない」が32%、「改正する必要がある」が29%(「どちらともいえない」30%)という数字になっている。

 それでも、安倍首相は「“改憲議論をせよ”という国民の信を得た」と言い張って改憲発議へと邁進するらしい。

 すでに、今回の参院選で議席を減らし、危機状態にある国民民主党の取り込みを図っていると言われる。国会運営でも維新のバックアップを得て、その手法をどんどん強引にし、自民党の萩生田光一幹事長代行が語った「ワイルドな憲法審査」を推し進めていくのは火を見るよりも明らかだ。参院選は終わったが、安倍改憲を阻止するためのたたかいはこれからだ。安倍首相と橋下氏の“独裁コンビ”による民主主義と平和主義の破壊を、何としてでも食い止めなければいけない。

最終更新:2019.07.22 10:42

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