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安倍首相が新天皇に内奏の夜、「今の陛下はドアまで送ってくれた」と自慢! 宮内庁は否定したが、官邸幹部との食事会で…
毎日新聞のニュース・情報サイトより
安倍首相による天皇の政治利用が止まらない。新元号「令和」での自己PR、天皇即位パレードのルート変更、さらに14日、安倍首相が徳仁天皇の即位後初の内奏をおこなったのだが、宮内庁は即日、内奏時の写真や映像を公表した。これまでも総理大臣による内奏の模様を後になって写真で公開することはあったが、今回は映像まですぐに公開。これは異例のことで、野党からは天皇の政治利用だと批判が相次いでいる。
安倍首相は、先代の天皇(明仁上皇)から改憲や先の戦争に対する肯定的な姿勢を嫌われ、対立関係が公然の秘密となっていたが、代替わりを奇貨として、一気に徳仁天皇との“良好な関係”をアピールしているということだろう。
そんななか、驚きの報道がなされた。毎日新聞が16日付朝刊の「野党 内奏写真『天皇を政治利用』」と題し、この内奏公表に関する記事を出したのだが、そのなかで、安倍首相がこんな発言をしたことをすっぱ抜いたのだ。
「前の天皇陛下はいつも座ったままだが、今の陛下は部屋のドアまで送ってくださって大変恐縮した」
毎日は、「関係者によれば」というかたちで、〈14日夜、新元号発表に関わった首相官邸幹部らと会食〉した席で安倍首相が上記の発言をしたことを伝えている。文字通り読めば、安倍首相は明仁上皇を暗に批判しながら、徳仁天皇がいかに自分を気にかけてくれているかを吹聴していた、ということになるだろう。いったい、何様なのかと聞きたくなるではないか。
ところが、である。宮内庁はこの記事を否定する姿勢を見せている。複数のマスコミが報じているとおり、20日の定例会見で宮内庁の西村泰彦次長は、毎日が報じた安倍発言に関して、「官邸に確認したが、首相はそのような発言をしていないと聞いている」と述べたうえ、明仁上皇が「お座りのままお見送りしたということはあり得ないというのがわれわれの認識」とし「上皇陛下の尊厳を傷つけ、極めて非礼で遺憾だ」との見解を示したのだ。
これを受けてネット上では、安倍応援団のネトウヨを中心に「フェイクニュースだ」との声があがっているが、ほんとうにこの首相発言は虚報だったのだろうか。ベテラン政治部記者がこう否定する。
「ただでさえ、安倍首相の発言に関する報道は官邸が細かく目を光らせているうえ、今回は上皇、天皇両陛下の振る舞いにかかわるもの。下手を打ったら、抗議が殺到しかねない案件ですから、よほどの確度がなければ怖くて活字にできませんよ。ただの伝聞で記事にするというのはありえないでしょう」
そこで、22日、毎日新聞社に今回の取材経緯や記事についての見解を聞いてみたところ、社長室広報担当が書面で回答。取材の詳細について〈今回の記事に関わらず、取材の過程等についてはお答えしておりません。〉としたものの、記事の内容、信ぴょう性については、〈当該の記事は正確な取材に基づいたものです。〉と断言した。謝罪や訂正をするような動きは見せておらず、むしろ自信を感じさせる姿勢を見せている。
実際、本サイトが独自に取材や検証を進めていくと、毎日新聞は安倍首相の発言を聞いた当事者から情報を得ている可能性が濃厚になった。
毎日によると、安倍首相がこの発言したのは〈14日夜、新元号発表に関わった首相官邸幹部らと会食〉の席だが、たしかに、この会食は開かれていた。皇居に行って内奏をしたその日、午後7時すぎから東京・南麻布の高級イタリア料理店「Appia」で、菅義偉官房長官、杉田和博官房副長官、古谷一之官房副長官補、山崎重孝内閣府事務次官、大石吉彦警察庁警備局長ら、まさに改元や即位にかかわった政府幹部が顔を揃え、慰労会的な意味合いの食事会を開いていたのだ。
安倍首相の発言があったのは、改元、即位に関わった官邸幹部らとの食事会
つまり、毎日新聞はこの改元の慰労会の参加者から、安倍首相が語った自慢の内奏の内容をオフレコで聞き出したという可能性が非常に高い。今度は官邸担当記者が語る。
「この食事会のあと、複数の政治部記者が内奏のディテールを聞き出そうと、参加者にオフレコで取材をかけていましたからね。官邸詰めだけでなく本社の政治部記者も動いていた。毎日以外にも、参加者から同様の証言を得ていた社があったのではないかと言われています。いま、官邸は令和改元と代替わりのブームに調子付いており、皇室関連の情報については非常に口が軽い。むしろ“徳仁天皇と安倍首相の関係の良さ”を積極的にアピールしています。今回も、その流れで、参加者が口を滑らせてしまったんでしょう」
実際、参加者が安倍首相の発言を喋っていたことは宮内庁の対応からもうかがえる。前述したように、宮内庁は一応、西村次長が会見で記事を否定したが、よく検証してみると、やけに弱腰なのだ。そもそも宮内庁がわざわざ安倍首相の発言について言及するのも異例だが、その否定の仕方が「発言をしていないと聞いている」という曖昧なもの。また、西村次長は「お座りのままお見送りしたということはあり得ない」と、上皇に関する部分は強く否定したが、徳仁天皇が安倍首相を「部屋のドアまで送った」という部分については否定も肯定もしていない。
また、22日、宮内庁はHPに「天皇陛下に対する総理内奏に関する記事について」という抗議文を掲載したが、そこでも〈「前の天皇陛下」すなわち上皇陛下が、座ったまま総理をお見送りになることはあり得ません。〉と、上皇が座ったまま、というのを否定しただけで、現天皇に関する部分については言及しなかった。さらに驚いたのは、文章がこう締められていたことだ。
〈毎日新聞社は取材に基づいて報じたものと思いますが、結果として、総理発言に基づかない上皇陛下への非礼となる内容となっていることから、去る5月20日の宮内庁次長会見において、以上の経過を宮内記者会に説明するとともに、ホームページに掲載することにしました。〉
内容は一応、「総理発言に基づかない」としているが、それは「結果として」であり、「毎日新聞社は取材に基づいて報じたものと思う」という但し書きをわざわざ入れていたのである。
宮内庁と官邸の曖昧な対応の理由は? 増長する安倍官邸の天皇政治利用
しかも、である。時事通信によれば、宮内庁はこの記事に関して毎日新聞社に個別に抗議することは考えていないという。いったいこの弱腰の対応は何なのか。
官邸も同様だ。ふだん、あれだけ批判報道に神経を尖らせ、すぐに「捏造」などとわめきたてて抗議する官邸だが、いまのところ、そうしたリアクションをとったという報道はまったくない。
これはやはり、安倍首相が食事会で今回の内奏の模様について発言したこと、そして、出席者の誰かが毎日に、記事にあった首相の発言内容を喋ったことが事実だからだろう。毎日を追い詰めすぎると、「食事会の参加者のひとりから聞いた」などと反論され、逆に安倍首相が批判を浴びる事態になりかねないと判断したからではないのか。
さらに、ベテランの宮内庁担当記者はこんな分析をする。
「もしかしたら、漏らしたのが、官邸の皇室担当責任者である杉田官房副長官だったという可能性もありますね(笑)。もしそうなら、絶対に表立った強い抗議はできないでしょう。また、そうでなくても、宮内庁の西村次長は警察官僚出身で、官邸がお目付役で送り込んだ人ですから、官邸の意向をふまえて、本来は事を荒立てたくなかったはずです。ただし、今回は、上皇陛下が安倍首相のものとされた『前の天皇陛下はいつも座ったまま』という発言に不快感を示されたため、宮内庁としては、動かざるをえなかった。そこで、安倍首相がそういう発言をしていないとしたうえ、上皇の発言に関する部分だけ、過去の事例を持ち出し、強く否定したんじゃないでしょうか。板挟みの末に落とし所を探ったという感じもしますね」
いずれにしても、安倍首相の「前の天皇陛下は座ったままだったが、今の陛下はドアまで送ってくれた」発言報道は、代替わりを自分の権力強化に利用し、現天皇との蜜月を誇示し始めた安倍首相の姿勢が生み出したものだ。しかも、調子に乗った安倍首相と官邸はこれからますます、この姿勢をエスカレートさせていくだろう。
前の天皇は明確な“リベラル・護憲派”であり、一種、安倍政治に対する“防波堤”的役割を担ってきた部分もあったが、令和の時代は、皇室が安倍政治の暴走の推進役を担わされる可能性が非常に高いと言わざるをえない。
(編集部)
最終更新:2019.05.23 03:19
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