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どこが丁寧な説明? 安倍首相が国会で“森友・加計は朝日新聞の捏造”のネトウヨ陰謀論に丸乗りして疑惑封じ
首相官邸ホームページより
異常な森友学園優遇の実態が、本日おこなわれた衆院予算委員会において立憲民主党の川内博史議員の質問により判明した。
まず、財務省全体で2012〜16年度に取引された公共随意契約1194件のうち、売却前提の定期借地契約を結んだのは森友学園のみ。また、分割契約を認めたのも森友1件だけ。その上、「瑕疵担保責任の免除」という特約をつけて売却したのも、延納特約を付したのも、売却価格を非公表にしたのも森友だけ。──森友学園の扱いがいかに異例かつ厚遇であったかがあきらかになった格好だ。
会計検査院が値引き額の算定方法に「十分な根拠が確認できない」と報告をまとめたように、森友学園との土地取引に財務省による「特別扱い」があったことはもはや歴とした事実。そして、その取引でどういったやりとりがあったのかは、音声データでも裏付けられている。
しかもきょうの予算委では、昨日、財務省が存在を認めた2016年5月の音声データより前にあたる同年3月下旬〜4月上旬と思われるやりとりをおさめた音声データを、共産党・宮本岳志議員が取り上げた。
この音声データは関西テレビが今年9月にスクープしたもので、本サイトでも既報の通り 【https://lite-ra.com/2017/09/post-3448.html】、国側と森友側の打ち合わせ時に録音されたもの。この音声のなかでは、「国側の職員」と見られる人物が“3メートルより下から出てきたゴミは国が知らなかった事実だからきっちりやるというストーリーをイメージしている”と話し、近畿財務局の池田靖・国有財産統括官(当時)が「そういう方向でお話し合いをさせていただければありがたいです」などと語っている。つまり、不当な土地取引に向けて、財務省が口裏合わせをおこなっていたのだ。
こうしたやりとりを宮本議員は「これは明確な背任ではないのか」と追及し、安倍首相に答弁を求めた。しかし、安倍首相は立ち上がろうとしない。「総理!」という声があがるが、太田充理財局長に答えさせたのだ。もちろん議長には抗議が行われたが、安倍首相は微動だにせず椅子にふんぞり返ったままだった。
「真摯で丁寧な説明」と言って憚らないのに、事実を突きつけられると沈黙。しかも、安倍首相は「謙虚」どころか、いつもの「攻撃」に転じてさえ見せた。
加計疑惑を質問されても安倍晋三記念小学校のことをしゃべり続けた安倍
それは立憲民主党・逢坂誠二議員の質問時でのこと。逢坂議員は選挙中のテレビ党首討論で安倍首相が籠池泰典氏のことを「詐欺をはたらく人物」と語ったことを取り上げた。本サイトでも当時指摘をしたが、籠池氏は起訴中でまだ裁判も開かれておらず、すなわち刑も確定していない。それを総理大臣が推定無罪の原則を無視して「詐欺をはたらく人物」などと犯罪者扱いしたことは、けっして看過できない重要な問題だ。
だが、安倍首相は「詐欺をはたらく人物」と言う前に「『籠池さん自体が詐欺で逮捕され起訴されました。これはまさにこれから司法の場に移っていくんだろうと思います』ということを述べている」と主張。無論、「詐欺をはたらく人物」と断言しているのだから、こんな言い訳が通用するはずもないが、安倍首相はなぜか「同時にまた籠池氏はですね」と言い出し、こうつづけたのだ。
「(籠池氏は)たとえば朝日新聞のインタビューに答えて、小学校の申請において、安倍晋三記念小学校と申請したと述べています。これを朝日新聞は大きく報道し、であるからこそ当然、当局は私とのかかわりを認識したんだろう、と言って追及をし、それをもとにですね、民進党の方々もこれを事実としてずっと私を国会で追及してきたのは事実であります」
「安倍晋三記念小学校という申請をしていないにもかかわらず、申請をしているということを堂々と述べる、そして大きな影響を与える人物であった、こういうことではないかと思います」
ここで安倍首相がもち出したのは、自民党の広報副本部長である和田政宗議員がネット上で大騒ぎをし、昨日の同委で自民党の菅原一秀議員も取り上げた、財務省に提出した設置趣意書に籠池氏が「安倍晋三記念小学校」と記したと朝日新聞の取材に証言した一件のこと。先日、黒塗り部分が消されたこの設置趣意書が情報公開され、そこに「開成小学校」と書かれていたことから、自民党は「朝日のフェイクニュースだ!」と攻撃している真っ最中だが、ついに安倍首相までもが国会で騒ぎ出したのだ。
さらに安倍首相は、本日の予算委で1回のみならず2回もこの件をもち出したのである。しかも、あまりに強引なかたちで、だ。
安倍首相が2回目に言い出したのは、希望の党の今井雅人議員の質問時。今井議員は、2015年4月に今治市職員や加計学園事務局長らが官邸を訪問した際、柳瀬唯夫首相秘書官(現・経済産業審議官)が応対したこと、さらに当時の下村博文文科相が同時刻に官邸にいたとする報道があることを指摘した上で、このときの参加者、会談内容といった事実関係をはっきりさせてほしいと訴えた。
だが、安倍首相は「さきほど下村文科大臣が会っているかのごとくお話をされていましたが、そんなことはございません。本人も否定しています」と言うと、語気を強めて、またもこう切り出したのだった。
「報道ということであればですね、たとえば朝日新聞は籠池容疑者が言ったことを鵜呑みにして、安倍晋三小学校というですね、申請があったということを報道し、報道をもとにみなさんも質問していたのは事実だろうと思います。で、事実の根底が覆るということはあるわけでありますから、そこのところはみなさんも謙虚になっていただきたい」
「これは大切なところですから申し上げていますが、ファクトが根本から違っている、ファクトでないにもかかわらず、そういうことがあるんだということを申し上げています」
そして、安倍首相は「ファクトで申し上げますと、今治市職員の方と面会をしておりません。市長や議長ならともかく、市の課長と面会することはあり得ない」と述べたのだ。
「安倍晋三」の名前が設立趣意書になくても疑惑はまったく晴れない
加計学園疑惑の話をしているのに、唐突に飛び出す籠池氏の名前と朝日バッシング、さらには「ファクト」という言葉……。しかし、この朝日攻撃こそがフェイク、明らかな詐術だ。
昨日の記事でも言及したが、今回、公開された設置趣意書にはたしかに「開成小学校」と書かれているが、設置趣意書は複数あるのではないかと見られているのだ。事実、情報公開請求をおこなっていた上脇博之・神戸学院大学教授もツイッターで〈開示された文書は全部不開示に近かった文書と比べると微妙に異なっていました〉〈小学校設置趣意書は複数あるようなので再度情報公開請求しておきました〉と述べている。ようするに、「安倍晋三記念小学校」と書かれた設置趣意書が存在する可能性はまだあるのだ。
いや、もし「安倍晋三記念小学校」と書かれた設置趣旨書がなかったとしても、だからどうしたという話だ。実際、昭恵夫人は2015年9月に塚本幼稚園での講演会のなかで、こんなふうに語っていた。
「こちら(森友学園)の教育方針はたいへん主人も素晴らしいというふうに思っていて、(籠池)先生からは『安倍晋三記念小學院』という名前にしたいというふうに当初は言っていただいてたんですけど、主人が(略)『もし名前を付けていただけるのであれば、総理大臣を辞めてからにしていただきたい』ということで」
つまり、安倍首相は自身の名前を冠した小学校がつくられることにはまんざらでもない様子だったのである。そうした事実をなかったことにして、「朝日のフェイクニュースによって籠池氏との深い関係を疑われた」というように攻撃したところで、安倍首相の疑惑が晴れるわけではまったくない。国民が「森友が贔屓された理由」として考えているのは、小学校名などではなく、名誉校長に就いていた昭恵夫人と籠池夫妻の深すぎる関係を示す数々の証拠があるからだ。
にもかかわらず、安倍首相は鬼の首をとったように、安倍晋三記念小学校の一件を持ち出して「ファクトが根本から違っている、ファクトでない」などとわめきたてたのである。
言っておくが、今井議員が質問していたのは「今治市職員や加計関係者の官邸面談」についてだ。そもそも質問のなかで「下村議員と面会した」などとは今井議員は一言も言っていないし、「安倍首相が面会したのでは」とも訊いていない。はからずも安倍首相が「面会なんてあり得ない」と明言した「市の課長」が、国会議員でさえおいそれとは入れない官邸に急遽招かれていることに疑義を呈しているのに、話を森友問題における朝日新聞の瑣末な報道にすり替え、挙げ句、勝手に質問を盛って「ファクト」などという言葉を使って攻撃した。
朝日攻撃で森友・加計疑惑を封じる安倍一派の作戦が始まった
こうしたやり口は、安倍首相やその取り巻き、そして安倍応援団メディアの常套手段だ。誰の目にも明らかな不正の事実があるのに、ほんの些細な誤認や未確認事項を針小棒大に騒ぎ立て、報道を「フェイクだ」「デマだ」と全否定。不正そのものをなかったことにしてしまうのである。
また、安倍首相および安倍応援団がこうした印象操作をおこなうときに、格好のスケープゴートにしてきたのが朝日新聞だった。安倍首相や安倍応援団は「朝日新聞は安倍叩きを社是としている」などというまったくのデタラメを拡散し、報道を恣意的なものとして封殺しようとしてきた。
しかも、こうしたやり口は自分たちの疑惑や不正だけでなく、戦争犯罪についても使われてきた。たとえば、従軍慰安婦についても、他紙も一斉に報じているのに朝日新聞の誤報だけを問題にして、従軍慰安婦の存在そのものを否定するような情報操作をおこなってきた。
おそらく、安倍首相とその取り巻きたちは今回、森友・加計問題で従軍慰安婦問題の再現を狙っているのだろう。いまだ全容は判明してない設置趣意書の一件を「朝日による大きなデマ報道」であるかのように語り、そこから「森友・加計問題は朝日新聞の捏造」なる陰謀論に話を拡大、疑惑そのものにフタをしようとしているのだ。
実際、これまでも安倍応援団メディアや御用評論家・小川榮太郎氏の著書など、少し前から「森友・加計問題じゃ朝日の捏造、創作」とする記事がやたら増えていた。そして、ここにきて「安倍晋三記念小学校」問題を使った和田議員、麻生太郎副総理、菅原議員、そして安倍首相自身の口からも朝日攻撃が飛び出した。
おそらく、今後は「朝日のデマ」「朝日の捏造」という“フェイクニュース”が保守メディアやネット上で真実として拡散し、朝日バッシングはますます激化していくだろう。
しかし、こんな卑劣なやり口に騙されてはならない。森友・加計問題で安倍首相の意向を受けた官邸が行政をねじ曲げたというのは、明らかな事実なのだ。メディアや野党はひるむことなく、その証拠を徹底的に突きつけていかなければならない。
(編集部)
最終更新:2017.11.28 10:36
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