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トランプ歓迎のマスコミはこれを聴け! SKY-HIが人種差別を批判する新曲をリリース、星野源にも共通する問題意識
「MUSICA」(FACT)2017年10月号
差別主義者のトランプ来日大統領の来日に、大歓迎でこたえる日本のマスコミ。しかし、差別問題への意識の低さは今に始まった事ではない。8月にバージニア州シャーロッツビルで死傷者を出した衝突でも、日本のマスコミは一貫して「対岸の火事」といった態度を取り続け、あろうことかトランプ大統領による「どっちもどっち」発言に同意の声をあげたワイドショーまであった。
しかし、そんななか、あのSKY-HIが明らかにシャーロッツビル事件を意識した新曲を発表した。
SKY-HIといえば、AAAのメンバー・日高光啓がソロ活動を行うときの名前だが、踏み込んだ政治的メッセージの楽曲を発表してきた。共謀罪が参院本会議で強行採決された6月15日のわずか5日後には、突如YouTube上に「キョウボウザイ」という新曲をアップ。森友・加計学園隠しのための強行採決であることや、当時の金田勝年法相をはじめ与党がまともに議論に応じようともしない強権的な国会運営を繰り返していたことをラップで批判した。
〈燃えた家計簿に(加計)/火消しをするように/木で隠した森(Friend)/丸出しでソーリー/シンゾウには毛が生えて/舌の数は無尽蔵/HP残り36ポイント(支持率)/保護するのは秘密の方で/テロと五輪 歪なコーデ/組み合わせて出来た/それで治安維持しようぜ〉
9月には2日間東京ドーム公演を行ったほどの規模のメジャーアーティストがここまで勇気ある行動を起こしたことは、多くの人々を驚かせた。
そんなSKY-HIが先日、配信限定の企画アルバム『Marble』をリリースした。そのタイトル曲となる「Marble」ではこのように歌われている。
〈We got it, black, white, yellow, red and blue
You know there ain’t no need to fight
Listen, we don’t need to choose
どんな色にしようか?
お好きに選びな坊や
混ざるようで混ざらないマーブル模様が綺麗だ
自分と違う色の輝きが羨ましい?
混ざりゃとても綺麗 汚し合うなんて馬鹿馬鹿しい〉
「多様性の許容。それしかない」「アメリカで起きたことは他人事じゃない」
一読すればわかる通り、「Marble」では人種間の対立や差別について直接的に歌われている。その背景にはおそらく、8月にバージニア州シャーロッツビルで死傷者を出した衝突のことも頭にあるのだろう。
思い返せば、このシャーロッツビルでの事件に対し、日本のマスコミは一貫して「対岸の火事」といった態度を取り続け、あろうことかトランプ大統領による「どっちもどっち」発言に同意の声をあげたワイドショーまであった。
しかし、言うまでもなく、現在アメリカで起きている差別問題は、海の向こうの遠い国で起きている、我々とは無関係の出来事などでは決してない。先日、大問題となった、水原希子の出演するサントリー「ザ・プレミアム・モルツ」のツイッターアカウントに差別的なリプライが大量に送りつけられた騒動が象徴する通り、レイシズムに関わる問題はこの国においても現在進行形で起きていることである。
それは、SKY-HIも重々承知だ。ウェブサイト「CINRA」で彼は「Marble」についてこのように答えている。
「人種や、ちょっとした違いが積み重なって、アメリカで象徴的な悲劇が起こったわけだけど。日本でも、「誰々さん家の子とは遊んじゃいけません」とかあるわけで、決してアメリカで起こったことが他人事なわけではないと思うんですよね」
SKY-HIが「Marble」という楽曲を通して伝えたいことはなにか? 彼は、「ROCKIN’ ON JAPAN」(ロッキング・オン)2017年11月号のインタビューで「多様性の許容。それしかないよね」と答えている。
その「多様性」は、国籍や生まれ育ちや肌の色といったものだけを指しているわけではない。もっと広い意味を含んでいるものだ。彼は同種のメッセージを伝える楽曲として星野源の「Family Song」をあげながら、多様性を攻撃する人々の心理と目的をこのように喝破している。
「“Family Song”もそういう歌でしたもんね。オンタイムで世界のニュースが入ってきて、SNSのタイムラインをその話が埋め尽くすように世界がどんどんシームレスになっていて。多様性があることを実感しやすいからそれを認めない人は何かに囚われているか、そのほうが自分に大きいメリットがあるからなんでしょうね」(前掲「ROCKIN’ ON JAPAN」)
星野源「Family Song」との共通点を語るSKY-HI
星野源「Family Song」は、タイトル通り家族の愛や絆について歌った楽曲だが、その歌のなかで彼は家族の定義を「血のつながり」や「男と女、お父さんとお母さん」といったところに求めなかった。
星野は8月18日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日)のトークコーナーでこのように語っている。
「楽曲は60年代末から70年代始めぐらいのソウルミュージックをモチーフにしてるんですけど、歌詞を昔っていうよりも、いまの家族にしたいなって思って色々考えてたんですけど、僕、なんとなく家族って漠然と血のつながりだと思ってたんですけど、よく考えたら夫婦って血つながってないなって思って、だから血のつながりとか関係ないなって思って、たとえば友だちとか仕事仲間もファミリーって言ったりもするじゃないですか。だからそういう広い意味でこれからの時代に向けて、たとえば両親が同性同士っていうのもこれからどんどん増えてくると思うんですよね。そういう家族も含めた、懐の大きい曲みたいなものをつくりたいなって思って」
SKY-HIは差別、星野源は家族について歌っているが、どちらもその楽曲の根っこは同じ。人間があるがままに生きられる社会を目指すことであり、人は皆それぞれ違った生き方をしていいんだという多様性への讃歌である。しかし、ご存知の通り、現実の社会では保守的な価値観の押し付けが横行。多様性を拒絶し、排他する方向へと舵を切っている。
そういった状況に対してどうやったら抗うことができるのだろうか? そのために、彼らのようなミュージシャンがつくる楽曲は大きな武器となるはずだ。SKY-HIは「MUSICA」(FACT)17年10月号のインタビューでこのように語っている。
「たぶん我々が学ぶべきことって、いろんな人がいて、いろんな価値観があるんだよっていうことでしかなくて。それを知る機会をちゃんと作る必要はあるって思うんですよね。それって夢物語かもしれないんですけど、でも夢物語っていう以上は幻ではないから」
多様な価値観や多様な生き方があることを知り、そして、それを認め合うことがみんなの平和と幸せにつながる──SKY-HIや星野源のようなミュージシャンの楽曲は、そういったことを学び、理解する人々を増やす一助になるだろう。ジェームス・ブラウンやマイケル・ジャクソンの音楽が黒人差別問題を減らすことに寄与したように、また、マドンナやビヨンセの活動が強く生きようとする女性たちに勇気を与えたように。
(編集部)
最終更新:2017.11.06 11:04
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