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室井佑月の連載対談「アベを倒したい!」第4回ゲスト 山本太郎(前編)
室井佑月が山本太郎に迫る! アッキード事件の闇、安倍首相の素顔、そして原発とマスコミ…
山本太郎と室井佑月が安倍政権について語る
室井佑月の好評連載対談「アベを倒したい」。第4回は森友問題のさなか、室井が勝手に愛情を込めて“太郎ちゃん”と呼んでいる自由党共同代表の山本太郎参議院議員を招き、安倍独裁政治とどう闘っていくかを徹底的に語り合ってもらうことにした。
山本議員といえば、国会で舌鋒鋭く安倍首相に迫るシーンや一人牛歩などのパフォーマンスが話題になっているが、今回の対談では、安倍政治の手法に対する客観的な分析やこれから野党が取り組んでいくべき政治課題などについても、冷静かつ真摯に語ってくれた。
とはいえ、室井と山本の二人が森友問題のさなかに対談をしてただですむはずもない。前編は、森友問題への室井の怒りが炸裂、一方、山本の口からは「アッキード事件」以外に使いたかった強烈な言葉の存在も明かされた。ユーモアをまじえながらも、本質を突く2人の議論をぜひ堪能していただきたい。
(編集部)
……………………………………………………………………………
●週刊誌に「原発デマゴーグの戦犯」に仕立てられた二人の反撃とは?
室井 山本さん、わたし「週刊朝日」(朝日新聞出版社)の連載で山本さんのことを“太郎ちゃん”って書いてるの。だから、今日は太郎ちゃんって呼ぶね。お会いするの、何年ぶりですかね? まだ俳優をやっていたときに、太郎ちゃんが司会の安いワイドショーみたいな番組に呼んでいただいて。
山本 その節は、安いワイドショーみたいな番組でお世話になりました(苦笑)。当時の室井さんの印象は、とっつきにくそうなイメージでした。けど、東日本大震災、そして福島原発の事故があり、危機的な状況が露わになるなかで、自身の考えをはっきり発言され、表現されている。安保法制の時の発言も注目していました。本当に勇気がある方だと。何となくの印象でその人のキャラクターを決めつけてた自分を反省しました。
室井 芸能界から政治的な声をあげることは大切だと思っていて、だから太郎ちゃんを応援していますし、石田純一さんが都知事選の出馬意向を示したときも、すごく感動したんです。勇気がある人だなと。でも、ワイドショーや世間は完全にイロモノとか、バカ扱いして。嘲笑することで選挙の論点をずらして、そのスケープゴードにさせられた。かわいそうでした。だから自分でできることをしようと思っていて。
山本 僕のときもそうでしたが、石田さんのような行動は、仕事へ直接影響しますからね。テレビ局は面白いくらい使い控えする。特に、TV局内で、CMなどの広告枠を企業に買ってもらう営業からの反対が強い、ってTVプロデューサーから聞きました。いろんな方向からの文句や嫌がらせもあるでしょう。だから室井さんにも心から、あの世界で生き残ってほしいと思います。
室井 でも講演会も相当回数が減りました。ワイドショーで発言すると、「あのホステス上がりめ!」とか、「あのアホを降ろせ」とか言われたりもする。でも一定数いるコアな味方の人たちが必ず応援してくれる。だから頑張って安倍さんの応援団のようなコメンテーターとも闘ってきました。青山繁晴さんとか(笑)。
山本 僕も彼にはびっくりしたことがあります。同じ調査会(資源エネルギー調査会)の原子力に関する質疑で青山さんが、「原発事故の影響はほとんどない」「汚染水も問題ない」と。国会議員でそこまでの神話を全力で語る人に初めてお会いしたので、逆に感動しましたもん。
室井 えー、冗談でも「感動」なんて言わないでくださいよ。そういえば、ある週刊誌から「原発事故後も続くデマゴーグ」というテーマで、福島の健康被害は放射線とは直接関係ないし、わたしの原発に関する発言が“避難者へのイジメ”を誘発している。そのことをどう思うかなんていう質問状が送られてきたんです。もう頭にきちゃって。
山本 奇遇ですね(笑)。同じ取材、うちの事務所にFAXで来ました。僕の発言が福島の人々や避難者に迷惑をかけていることについてどう思うかと。だからキッチリ事実関係を踏まえて返信しました。最後に、「国が言う“問題ない・安全”こそが最大のデマであり根拠がない、イジメと風評被害の原因を作り出したのは国だ」と。特集を組むのは勝手ですが、コメントを出しても勝手に短く編集するだろうし、結局、政府の考え方を繰り返す御用専門家の言い分ばかりが意図的に垂れ流されてしまう。
室井 奇遇(笑)。わたしもほぼ同じ回答をしました。そもそも“デマゴーグ”という前提からして“デマ”でしょ。イジメの原因は、事故が収束もしていないのに、“風評被害”と矮小化したり、甲状腺がんを「放射能とは関係ない」と言い張って現状をきちんと伝えない国と政府にあると返信しました。その上で「もしやるなら全文載せろ」と頑張りました。
山本 追い込みましたね、ずいぶん。
室井 いちいち喧嘩しないとダメですよ。でも、こんな取材に対応して1日が終わっちゃった。相手にしても一銭にもならないけど、頑張るしかない。結局、2人からしか返信がこなくて、特集じたいなくなったと聞きました。
山本 ということは返信したのは僕と室井さんだけだったのか(笑)。でも全員がスルーしていたら、“原発デマゴーグ”の記事は作られていたと思います。だから僕たちが返信したことは無駄ではなかったんですね。
●森友問題の本質、山本が「アッキード事件」以外に使いたかった言葉とは?
室井 でも本当に、世の中は変わりました。わたし、第一次安倍政権のとき、「自衛隊の派遣」を「派兵」と言ってしまったことがあって、すごい怒られたんです。でも今は、逆に安倍さん自身が「我が軍」とか言ってもスルーされるし、普通のことになってる。すごい世の中にわたしたちはいる。
山本 安倍さんが昨年5月の衆議院予算委員会で「議会については、私は立法府の長であります」なんて言っても、問題にならないという世の中なんです。総理は本気で思い込んでるんでしょうね、“立法府の長”発言は過去に3回も言っていますから。室井さん、怒られ損ですね。ほんの10年前ですか。
室井 「力のあるものに逆らうな」という空気感は、社会の格差が激しくなって、人々に余裕がないから蔓延するんでしょうね。この連載のタイトルは「アベを倒したい」ですが、次の衆議院選挙が、今年か来年かわかりませんが、本当に野党は頑張れるんですか? 民進党は本当に勝とうと思ってるのかな。太郎ちゃんには自由党共同代表として、ぜひ、頑張ってもらって政権を取ってほしい。どこかの党から議員を勧誘して、盗んできたほうが手っ取り早いんじゃない?
山本 そんな(苦笑)。みんな、ビビりますよ。所属する党の支援なしでは選挙に勝てない、と言う人がホトンド。その中で、党を離れて僕と組むなんて、かなり勇気いると思います。この前も飲みの席でおじさん議員に、「お前! みんなお前のことイロモノだって言ってるぞ」って言われて、「ほんとそうですよね」って答えておきました(笑)。
室井 イロモノって言うけどさ、他が白黒で、太郎ちゃんだけカラーなだけですよ。太郎ちゃんをすごいと思ったのは、いつだったか街頭演説をしているのを見たことがあるんです。そのとき変な男にヤジられて太郎ちゃんが「そんなあなたのことも守りたい!」って言った。変なおっさんに絡まれて、咄嗟にそんな言葉が出る。
山本 これまでずっと、変わった方々に絡まれ続けてますから(笑)。慣れているんじゃないですか。
室井 でも、日本は本当にやばい。共謀罪が閣議決定されたし、自民党は今国会で共謀罪を成立させるつもりなんでしょ? 共謀罪で徹底的に攻めてください! これで倒せそうですか?
山本 残念ながら共謀罪では倒せないです。共謀罪成立を止めることすら難しいのが国会のパワーバランスの現状ですから。共謀罪に関してはまだ国民の興味や反応が弱いですね。「テロに関係する」と言うハッタリで思考停止したのも大きいですし、「過去に3回、廃案になっているんですよ」というところから説明するには、時間が掛かる。長い説明はみんな聞きたくない。工夫が必要と考えてます。街頭などの国会外でも説明して、なんとなく広がったかな、と思ったときには、もう法案が通っているというのが今までのパターン、安倍一強の現実です。その一方で、森友問題のように、「国民の財産を、タダ同然でオトモダチにくれてやる」というわかりやすい構図の事件、お金に関する事の方が人々は関心を持つし、すぐにイラッと反応する人が多い様に感じます。
室井 でも森友学園問題だって、最初の頃はこんなに大きな騒動になるとは思えなかった。ほとんどのマスコミやワイドショーも完全に無視していて。だからわたしは連載コラムでもこの問題を書き続けた。そしてやっとワイドショーが重い腰をあげて、ようやく大騒動になった。
山本 経過を見てもわかりやすいですよね。一昨年の9月に国有地を管轄する部門の最高責任者だった迫田(英典)前理財局長が安倍首相と面談して、翌日には安倍首相が国会ズル休みで大阪入り、その翌日には昭恵夫人が塚本幼稚園の講演会に出て名誉校長に就任した。丸バレですよ、みたいな。しかも土地売買の交渉記録は全部破棄、証拠は隠滅したと。誰にでもわかりやすく、「いい加減にしろ」という話じゃないですか。だから国民の反応がすごい。
室井 太郎ちゃんが3月1日の予算委員会で「アッキード事件」と発言したのも話題になりましたね。
山本 いえいえ、「アッキード」という言葉は僕の言葉じゃないです。ネットで「アッキード事件」と呼ばれていて、「これはわかりやすい」と。ほかにもネット上で流通していて使いたかった言葉は、昭恵夫人を「プロ私人」と呼んだもの。「プロ市民」をもじった言葉ですよね。ただ、一般的にはこの言葉は広く理解されない、という判断で国会では使いませんでしたけど。こうした言葉ってキャッチーというだけでなく、疑惑の本質を突いていると思いますね。ネットの中には才能溢れる人がたくさん生息しているな、と思いました。
室井 だから、国会も頑張らないと。森友問題を見ていてわたしが歯がゆく思っているのが、野党一丸でこの問題を攻めたらいいのに、なんでひとつにまとまらないんだろうって。
●裏で相手を取り込もうとする安倍首相の狡猾なやり口
山本 確かに、連携はあまりないですね。おそらくネタの共有もしていないと思います。政治の世界では、多くが自分、そして党の手柄にしたいと思ってしまうんじゃないでしょうか。一方で、情報を教えてくれる先輩はいます。「今、森友が盛り上がってるけど、実は加計学園もヤバいよ」とか、「森友の比ではない、内閣が吹っ飛ぶ」とかね。実際に、自民党内部にも、現政権はそろそろ交代してもいい、という声もあるようです。いずれにせよ、今回の数々の問題の背景は、自分たちのお仲間にオイシイ思いをさせる為に、口利きだけでなく、規制緩和など法整備を事前に整える、ということも含まれています。当然、法律違反になることもありません、ちゃんとルール変更までするんですから。
室井 でも、それってズルじゃん。8億円のダンピングだよ。
山本 今回と同様の構図は小泉純一郎元首相の時代にもあった事ですよね。構造改革や規制緩和と言いながら、自分たちのお仲間を政府の諮問会議的な所に座らせて発言させて、実際に制度を変えていく。それによって、派遣社員が厳しい労働環境に置かれたり、タクシーの台数が増えたり。結果、派遣業やリース業を営む政商たちに金が流れる仕組み。政治家になってやっとそうした構図がわかってきました。政治家は組織票と企業献金、官僚は出世と退職後の為に、都合良く法律を作ったり制度を変えて、オトモダチに都合よく仕事や金を回すご奉仕をするんだ、と。
室井 でも小泉さんの頃は、もっとざっくりしていました。たとえば政権批判を書いても、嫌がらせはまったくなかったし。当時、雑誌で息子の小泉孝太郎くんと対談したこともあったんです。わたしがホステル役の連載だったんですけど、オファーしたら快く来てくれました。「お父さんの悪口を書いているから、来てくれると思わなかった」と言ったら、「なんで呼ばれたのかと思った。担がれたんじゃない?」なんてゲラゲラ笑って。そういう余裕があった。でも安倍政権は違う。これまでどれだけ仕事を失ったか……。いや、直接何か手をくだされたのかはわからないですよ、忖度かもしれませんけど、わたしはどうしても安倍さんは許せない。とんだ愛国者ですよ。しかも歯向かうと「売国奴だ!」と言われてしまう。メディアの役割って権力への監視ですよね。でも言えない空気感ができてしまい、忖度して誰もモノを言わなくなる。それがイヤなんです。あと安倍さんが嫌なのは、人たらしというか、人を狡猾に取り込もうとするところ。もし直接会ったら、わたしもコロッと騙されるかも。
山本 それは同感です。たとえば予算が決定すると、内閣の閣僚全員が各会派の部屋に挨拶に回るんですが、昨年秋の補正予算成立の際、僕もその挨拶を受けました。僕なんて、牛歩をやったりと安倍政権に批判的だし、政界ではガキじゃないですか。影響力もないし、政治家としてペーペー。なのに、安倍首相はちゃんと会話してくれる。「山本さん、安保法のときは鋭い質問ありがとうございました」という感じで。こっちはびっくりしちゃう。「芸能界には私、友達がいるんですよ。◯◯さんとか」なんて会話までふってきて。悔しいけど、ある意味人たらしだし、飲みに行ったら楽しそうだなと思わせるんです。
室井 太郎ちゃん、それ、もう取り込まれてるんじゃない? 芸能人でも、私が知っているだけで何人が取り込まれているか。みんな、「すごい気さく」って喜んじゃうんですよね。
山本 もちろん、取り込まれてはいませんよ。政策や国会ではきちんと議論します。安倍首相には、どう見られるかを客観的にコーチする人も、ついていると思いますね。一応、メッソッドみたいなのがある様に感じます。原稿にもこのタイミングで「水を飲む」とか書かれていましたもんね。自信を持って、意味の無い事を延々と喋る天才だし、質問時間が短いこちらとしては、変わりにAIが答弁してくれてもいいレベルですけど。
室井 手の動かし方ひとつをとっても、振り付けみたいな感じですよね。「ここで一呼吸」とか、「力強く」とか、「間をとる」とか。気になるのは、安倍さんって、自分が“全能”という意識があるんじゃない? 本来、一国の首相が国会でキレたりするのはみっともないことなのに、でも安倍さん自身は「言ってやったぞ!」くらい思っていそう。
山本 言い方が上手いんです。たとえば、森友問題でうちの党の森裕子さんが質問した際、総理の答弁の第一声が、「印象操作ですね、完全に失敗していますよ」と、余計な一言から始まったんです。メディアにとっては切り取りやすい部分ですし、報じやすい。そうやって、言葉尻で自分の体勢を立て直すのが上手いんです。印象操作の才能が抜きん出ている。幼稚ですが、戦い方は上手いです。
室井 あと、嘘を言っても嘘だと認めないのも大きな特徴ですよ。自分の頭のなかでは嘘が真実になっちゃっていると思う。だから嘘をついてすぐ暴かれても、認めないし恥ずかしくない。そもそも、“恥ずかしい”という感情って、勝った、負けた、嬉しい、楽しいとかより、一歩深いところにある。安倍さんはその深い感情がないのかなと思います。
山本 あはは(笑)。そんなズバリ指摘したら、心の狭い権力者から制裁受けますよ(笑)。
(後編に続く)
※この対談は3月に収録されたものです。
山本太郎 政治家、俳優。1974年兵庫県生まれ。高校1年で芸能界入りし、以降、人気俳優として数々の映画、ドラマで活躍。 2011年3月の東日本大震災、福島第一原発事故を契機に、反原発活動を開始。2013年7月の参議院議員選挙に東京選挙区から出馬し当選。以降、原発問題、被曝問題、子どもと放射能、TPP問題、労働問題、社会保障制度改革、表現の自由に関わる問題等に特に深く関わり活動中。現在、自由党共同代表。
室井佑月 作家、1970年生まれ。レースクイーン、銀座クラブホステスなどを経て1997年作家デビューし、その後テレビコメンテーターとしても活躍。現在『ひるおび!』『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS)、『あさイチ』(NHK)などに出演中。
最終更新:2017.11.22 06:42
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