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マスコミが財務省・迫田前理財局長を追及しないのは国税庁長官だから! 税務調査を使った報道への圧力
国税庁HPより
本日23日、国会で学校法人森友学園理事長の籠池泰典氏の証人喚問が行われる。しかし、森友疑惑の本筋である国有地の不当な払い下げの真相を解明するには“買い主”の籠池氏の証人喚問だけでは意味がない。“売り主”の財務省、とくに国有地売却の責任者だった理財局長(当時)の迫田英典氏の証人喚問は必須だろう。
迫田氏は首相と同じ山口県下関市の出身で、土地取引の直前、異例なほど頻繁に官邸に出入りして、安倍首相と会っていた。問題の値引きが決まった森友学園関係者と財務省近畿財務局が話し合いを行った前日にも、迫田氏は理財局長として安倍晋三首相と綿密な打ち合わせをしていた。そういう意味では、まさに、今回の疑惑のキーマンなのだ。
ところが、連日籠池氏を追い回しているマスコミからは、この迫田氏を追及すべきという厳しい声はあまり聞かれない。参考人招致も自民党が拒否すると、そのままフェードアウト。籠池理事長を単独取材した菅野完氏は緊急会見で、迫田前理財局長の写真を掲げながら、私人の籠池氏の自宅や自分の自宅に詰めかけながら、公人である迫田前理財局長の官舎には押しかけないマスコミの姿勢を糾弾していたが、まさにそのとおりだろう。
いったいこの及び腰の理由はなんなのか? 全国紙社会部デスクが解説する。
「それは、迫田氏が理財局長の後、いまは国税庁長官に就いているからですよ。財務省はただでさえマスコミにとってタブーなのに、相手は国税トップですからね。税務調査で報復されるのが怖くて、厳しい追及なんてとてもできません」
税務調査による報復? 信じがたい話だが、これは陰謀論でも過剰反応でもない。事実、国税庁は親玉である財務省のスキャンダルや増税反対キャンペーンなどを張った報道機関や記者に対しては、厳しい税務調査を行うことで“報復”してきた。
「報復調査のときの国税のやり口はすさまじいですからね。新聞販売店への押し紙や奨励金など、新聞社のブラックボックス部分を突いてくるのはもちろん、記者の出した領収証を1枚1枚チェックして、いったい誰と会ったのかを厳しく調査するんです。調査は長期に及び、日常業務にも支障が出てくるし、記者の人脈や情報源が筒抜けになってしまう。逆に、面会相手を秘匿すると、経費とは認められず、すべて申告漏れとされて追徴金を払わされる。しかも、申告漏れがあると、国税は他のマスコミにこれをリークして、大々的に記事にさせるんです」(全国紙元国税担当記者)
実例をあげよう。直近でもっとも露骨だったのは、2011年から2012年にかけての東京新聞(中日新聞)に対する調査だ。財務官僚に籠絡され、消費財増税へとひた走ろうとしていた当時の民主党・野田政権に対して、東京新聞は〈野田改造内閣が発足 増税前にやるべきこと〉〈出先機関改革 実現なくして増税なし〉などの社説で真っ向から批判を展開していた。すると、半年以上の長きにわたる異例の“調査”が入り、約2億8600万円の申告漏れが指摘されたのだ。
「このときは、名古屋国税局と東京国税局が連動するかたちで、中日新聞と東京新聞に同時に入り、異常なくらいのしつこさでやった。東京では国税が資料分析のための部屋を提供させて、徹底的に記者の領収証などを調べ上げたと聞いています。業務にも相当な支障が出て、ほとんど嫌がらせに近いような状態だったようです」(前出・全国紙元国税担当記者)
中日新聞と東京新聞は2016年にも、再び大規模な“調査”を受けている。このときは大きな不正はほとんど見つからなかったが、取材源秘匿のため取材先の名前を公開しなかった領収証を経費として認めないなど、重箱の隅をつつくような調査で、約3100万円の申告漏れを指摘された。しかも、こんな少額の申告漏れにもかかわらず、国税当局はこの情報を他のマスコミにリークして記事にさせている。
「2016年の調査は、官邸の意向を受けてのものと言われていましたね。2015年の安保法制強行採決や米軍基地問題での東京新聞の批判に、官邸が激怒し、国税を動かしたのではないか、と」(全国紙政治部記者)
もちろん、こうした目にあっているのは東京新聞だけではない。マスコミが財務省の政策批判や不祥事報道に踏み込んだあとには、必ずといっていいほど、税務調査が入っている。
たとえば、90年代終わり、それまで絶対タブーだった旧大蔵省にマスコミが切り込み、ノーパンしゃぶしゃぶ接待など、汚職事件の端緒を開いたことがあったが、その少し後、2000年代に入ると、国税当局は一斉に新聞各社に税務調査を展開した。
07年から09年にかけても、朝日、読売、毎日、そして共同通信に大規模調査が入り、申告漏れや所得隠しが明らかになっている。この時期は第一次安倍政権から福田政権、麻生政権にいたる時期で、マスコミは政権への対決姿勢を明確にし、官僚不祥事を次々に報道していた。これらの調査はその“報復”ではないかと指摘された。
さらに、東京新聞に大規模調査が入った2011年には、やはり消費増税に反対していた産経にも“調査”が入っている。また、12年3月には朝日が2億円超の申告漏れを、4月には日本経済新聞が約3億3000万円の申告漏れを指摘された。そして、この税務調査ラッシュの後、新聞各紙はどんどん消費増税の主張を強めていくのである。
また、税務調査による報復は、新聞やテレビだけではなく、週刊誌にも向けられてきた。
「財務省のスキャンダルをやった週刊誌の版元の出版社もことごとく税務調査で嫌がらせを受けてますね。それどころか、フリーのジャーナリストのなかにも、財務官僚のスキャンダルを手がけた後に、税務調査を受けたという人が結構います。年収1千万円にも満たないようなフリーに税務調査が入るなんてことは普通ありえないですから、これは明らかに嫌がらせでしょう」(週刊誌関係者)
たしかに、これでは腰がひけるのも当然だろう。実際、いまの新聞・テレビでは、財務省や国税がからむ不祥事は、よほどのことがない限り事前に自主規制で潰されてしまうという。森友学園問題は「みんな赤信号を渡っている」状態なため、ある程度は財務省の批判もしているが、現国税庁長官である迫田前理財局長を名指しで批判し、証人喚問を要求するというのは、やはりハードルが高いということだろう。
そう考えると、国税庁長官に迫田氏が就任しているということ自体がきな臭く思えてくる。つまり、安倍首相は自分たちのさまざまな疑惑を封じ込め、マスコミの情報源を特定するために、同郷の子飼い官僚を国税のトップに座らせたのではないか。
賭けてもいいが、安倍政権に飼い慣らされたマスメディアは、今日の証人喚問が終わったとたん、幕引きムードを醸し始めるだろう。しかし何度でも言う。森友学園問題は、籠池理事長の証人喚問だけでは何もわからない。国有地は国民全体の財産だ。真実を知るために、迫田氏の証人喚問は必須。そして、マスコミはいまこそ腹をくくり、総力をかけて“伏魔殿”に切り込まねばならない。
(野尻民生)
最終更新:2017.11.21 07:09
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