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フジ『みんなのニュース』創価学会批判の舞台裏! タブー打破と思いきや安倍政権の改憲に向けた揺さぶりだった
「みんなのニュース」HPより
昨日2月11日放送の『みんなのニュース』(フジテレビ)が、“テレビ初取材”と銘打ち、創価学会総本部の内部を取材したことが話題になっている。
といっても、フジは創価学会を褒めたり宣伝したりしたわけではない。あからさまではなかったものの、そのカルト的体質や問題点にもかなり切り込んだのだ。
いまさら言うまでもなく、創価学会は公称827万世帯という日本最大の宗教団体。その政治部門である公明党は、現在、自民党と連立を組む政権与党だ。しかし、これほどまでに巨大な影響力を持つ宗教団体でありながら、これまでテレビメディアでは学会の実態を報じることはほとんどなかった。
ところが今回、フジテレビは取材班が東京・信濃町にある創価学会総本部を取材。池田大作名誉会長の写真、使用していたカメラ、弾いていたピアノ、若い頃に編集長を務めた少年雑誌などが展示されている模様を映しつつ、「ちょっと不思議、ですね」と、その個人崇拝に疑問を呈した。取材班を案内した学会の岡部高弘副会長(広報部長)に対して、池田名誉会長はどういう存在か?と質問するシーンもあった。
また、施設内で数百名の学会員が一心不乱に「南無妙法蓮華経」を唱える「勤行」の模様も放送。さらに、強引な宗教勧誘の一端も指摘。街頭インタビューで、「ちょっと話を聞くとすぐ偉い人が来て『入りなさい 入りなさい』って」「おじさんたちに囲まれて『入ろうよ』って言われたときはちょっと怖かったですね」という市井の声を紹介しつつ、岡部副会長に信者の年間費や「お布施」、そして学会の年間収入まで、かなりつっこんで質問した。
そして極め付けは、やはり、学会と公明党の“政教分離問題”にストレートに踏み込んだことだろう。番組冒頭から「創価学会は公明党の支持母体として応援し、多くの国会議員を当選させている」と明言。「宗教は宗教で政治は政治だと思うんだけど」「日本国憲法の場合は政教分離ですよね。違反していると思います」という街頭インタビューを流したあとで、岡部副会長に「公明党と創価学会の政教分離についてはどう考えていますか?」「投票の依頼をするということですか?」と畳み掛けたのである。
そして、岡部副会長から「(学会員に)公明党の支持を依頼するということです」という答えを引き出し、VTR後のスタジオではキャスターが「政策に創価学会の影響力があまりにも大きいのではないか?という質問には明確なこたえはなく疑問が残る点もありました」と締めくくった。
これは、この数十年の間には、考えられなかったことだ。1964年の結党当時の公明党は、党綱領には仏教用語を使い、「仏法民主主義」を掲げるなど、あきらかな「政教一致」の体制だった。しかし69年、政治評論家の故・藤原弘達氏らの学会批判本出版に対する圧力妨害を機に大きな政治問題となり、翌年には池田会長が謝罪、学会と公明党を制度上分けることを宣言した。以降、少なくとも建前としては「政教分離」としつつも、実質的には選挙に学会員を動員するという状況が続いていた。この状況下、テレビ業界では、学会が有する多数のタレント信者やスポンサーの引き上げを恐れ、この問題はタブー化してしまったのだ。
ではなぜ今回、フジテレビは、ここまで踏み込む報道をおこなったのか。いや、行うことができたのか。
そのヒントはやはり、放送のなかに隠されていた。実は『みんなのニュース』は2度、政教分離に疑問を呈するVTRを放映したのだが、そのどちらにも使われていたのは、昨年夏の安保法制の国会審議中に一部の学会員らが三色旗を掲げて抗議デモを行う映像だった。
1度目は映像に「“政教分離”はできているのでしょうか?」とのテロップとナレーションをかぶせ、特集終盤の2度目にはデモのVの直後に「政教分離に違反している」という街頭インタビューを挿入している。あたかも「このデモが政教一致の例だ」と言わんばかりだ。一方で、山口那津男代表や石井啓一国交相など、公明党議員の議員活動などは1秒も流していない。
これはどう見ても不自然だろう。そもそも憲法20条1項は〈信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない〉というもの。禁じられているのは〈宗教団体〉が〈国から特権を受け、又は政治上の権力を行使〉することだ。したがって、創価学会が公明党と一体化して国の政策を左右することは20条に抵触する可能性が大だが、他方、個々の信者がデモを行うこと自体は少しも違憲ではない(もしも違憲であれは、キリスト教徒や仏教徒、神道信者の個々人による政治活動も違憲になってしまう)。
そう考えると、今回のフジの特集は、別の狙いがあったのではないか。それは、ズバリ、創価学会=公明党が安倍政権の憲法改正の動きに逆らわないようにするための恫喝だ。
すでに参院選での大勝予測、そしておおさか維新の会と協力関係が確定したことで、安倍政権は今、参院選後の憲法改正発議に明らかに前のめりになっている。
実際、今の情勢では、自公とおおさか維新で憲法改正に必要な衆参3分の2の議席を確保するのは確実だろう。ただ、安倍政権にとってひとつだけ不確定要素がある。それは公明党が創価学会内部の護憲勢力にあらがえずに、憲法改正に消極的になることだ。
そこで、官邸はフジテレビを通じて、創価学会と公明党に対して、“連立から離れたらどうなるかわかってるだろうな”というメッセージを送ったのではないか、と考えられるのだ。
これは陰謀論ではない。実はこれまでも、公明党が自民党の政策に完全に反対したり、政権離脱の動きを見せたときは、必ず、自民党右派、もしくは政権に近いメディアが学会と公明党の政教分離問題をちらつかせて、プレッシャーをかけてきた。
たとえば、2014年の集団的自衛権行使容認の閣議決定にあたっては、安倍首相のブレーンのひとりである飯島勲内閣官房参与が、アメリカでの講演で「法制局の発言、答弁が一気に変われば、(公明党と学会の)『政教一致』が出てきてもおかしくない」と発言。公明党はこれを境に態度を一変させ、集団的自衛権容認、安保法制賛成に傾いた。
そして、今回も同じように、フジが政権の意図を先取りして、この企画を立ち上げ、大々的に報道したという見方が、永田町では一般的になっているのだ。
「フジの日枝久会長と安倍首相は毎年、一緒に夏休みをすごすほどの関係で、同局の報道局は官邸の宣伝装置のような存在です。官邸に命じられたかどうかはわかりませんが、少なくとも、こんな内容の番組を、官邸の許可なしにやれるとは思えない」(大手紙政治部記者)
もっといえば、今回の番組に関しては、公明党や学会の上層部も了承済みの企画ではないか、との見方もある。
本サイトで既報のとおり、学会内の派閥闘争では、官邸と強力なパイプを持つ東日本の谷川佳樹氏と、護憲の傾向が強い大阪の正木正明氏との間で次期会長レースが展開されているとみられていたが、昨年の幹部人事では正木氏は理事長の座から退き、会長の諮問機関にすぎない「参議会」副議長に異動になった。表向きは正木氏が「体調不良」を理由に理事長を辞任した形になっているが、事実上の左遷ではないかともいわれている。
こうしたことから、すでに、公明党=創価学会の上層部は平和路線を捨て、憲法改正についても、自民党と共同歩調をとることを決めているとの見方が強い。
しかし、上層部はそうでも、婦人部をはじめとする多くの信者は今も、池田大作の教えである護憲と平和主義を強く訴えている。その一端がかいまみえたのが、昨夏の学会員による反安保デモや反対署名だった。
そこで、官邸と公明党、学会上層部が一体化して、学会員に向けてメッセージを送ったのではないか、というのだ。
実際、『みんなのニュース』の放送でも、学会上層部側の意図がうかがえる場面があった。「公明党の政策と意見の食い違いがあった場合は、公明党以外に投票することもありえるか?」と問われた学会の岡部副会長はこう答えたのだ。
「理屈としてはあると思います」
「会員のみなさんに理解をいただいて、それで納得していただいたかたに応援していただく形を丁寧にやっていっています」
創価学会=公明党に対する外堀は着々と埋められているというわけだが、それにしても、うんざりさせられるのは、今回の『みんなのニュース』のやり口だ。本サイトはいかなる場合も宗教団体が政治に関わるべきではないと考えているし、創価学会と公明党の一体関係にも批判的だが、今回のフジテレビはたんに、官邸と自民党に操られて政治的謀略に加担しているにすぎない。
権力を監視することが使命である報道機関がこういった番組をつくって、垂れ流すことは、公明党=創価学会の政教一致と同じくらいに犯罪的だろう。
もし、フジが政治と宗教の問題を本気で追及するつもりがあるなら、次は安倍首相と神道政治連盟と神社本庁の関係を報道してみたらどうだろうか。
(宮島みつや)
最終更新:2017.03.02 05:34
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