国際問題・戦争に関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ
上坂すみれ、小島慶子、黒柳徹子…安保法制論議の中で彼女達が語った「平和」のための提案とは
『世界を平和にするためのささやかな提案』(河出書房新社)
十分な説明や議論もなされないまま、拙速に国会運営が進み、いよいよ厳しさを増してきた安保法制。そんななか、芸能人や文化人、学者、ジャーナリスト等、さまざまなジャンルの人たちが「平和」について語った本が出版された。『世界を平和にするためのささやかな提案』(河出書房新社)だ。
じつはこの本には、普段、こういうテーマで発言をすることがあまりない、意外な芸能人も参加していた。
たとえば、そのひとりが『艦隊これくしょん―艦これ―』や『中二病でも恋がしたい!』などへの出演で知られる、声優の上坂すみれ。彼女は、他の国を、世界を、もっと身近なものに感じることが平和のための手段だと語る。
〈私が提案したいのは、世界に、国家に、オマージュを捧げて遊んでみることです。思想を発信して世界に影響を与えるとか革命を起こすとか、大それたことをやるんじゃなくて、もうちょっとまろやかに、思想を刺激せずに、遊ぶという感覚で他の国を見てみませんか? きっと、他の国が、世界が、全然違って見えるようになります〉
実際に彼女は、“ソビエト連邦”に着目し、ソ連を「物騒なものじゃなくて、過去に存在して今にはない面白いもの、刺激的なものという風にファッション的に眺める」といった遊びに夢中になった。
そうして、共産主義の構造や、ソ連の軍歌・大仰なプロパガンダの方法などを調べるうちに、「何事もやりすぎる感じ」が面白く、その“アバンギャルド”な魅力にはまっていく。
しかし、声優を始めてから、実際にモスクワで行なわれているイベントを訪れてみると、そこには、これまでインターネットを通じて受けてきた、ロシア・ソ連とはまったく違う印象の光景が広がっていた。
世間でステレオタイプに描かれる「暗くて寒くて怖い」というイメージとはまったく異なり、会場には、日本や日本のアニメが好きな人たちがいっぱいいたのである。手作りのコスプレを楽しんだり、ロリータファッションをしている人がいて彼女は衝撃を受ける。そして、その経験が大事なことに気づかせた。
〈今まで思い込んでいたところがあったんだな、と分かったんです。興味を持ったものは現地で見るべきなんです。インターネットで知ったことはちゃんと確かめる。インターネットで満足して、頭で分かった気持ちになってしまって実際に行かなくなるのは、おそろしいことと思います。それに行った方が新しい面も見えて楽しいですし、どんどん世界が広がります〉
こうやって肌で感じつつ、楽しみながら広げた“世界”を、人は壊す気にはならない。実際に現地に行ってみたら、そこで友だちができることもあるだろう。友だちが住んでいる国と戦争なんて絶対にしたくならない。上坂はそう言いたいのだろう。
一方、この本には、普段から積極的に社会的発言をしている、もの言うタレントたちも参加しているが、その発言はやはり説得力がある。たとえば、元TBSアナウンサーでタレントの小島慶子は、日本に横行している「排除の空気」を問題にしている。
〈自分と違うもの、自分と考えが相容れないものを排斥するのではなく、まずなぜ相手がそうであるのか、そうでなくなる方法が何かあるのではないか、と考えることが大事です。
同時に、相手と自分がどう違うのかを知ろうとすらしないことも、また他者を排斥することなのです〉
また、対話するときに大事なことがあると、小島は主張する。
〈そのときに気をつけなくてはいけないのは、正解というのは人の数だけあるということ。「自分にとっての正解が相手にとっての正解ではないかもしれない、だから、お互い違う正解を持っていてもなお殺し合わずにすむ方法ってあるだろうか」という問いが必要なのです。
「私は唯一の正解を知っている」という人間に対して、用心しなくてはなりません。つまり「私は唯一の正解を知っている」という人間は、決して「君の正解はなんですか?」とは問わない。そう問わないということは、君と私はどう違うのかを知りたいという問いを発しないということなのです。つまりすでに言ったように、違いを知ろうともしない人なのです〉
この文章を読んで、みなさんの頭に浮かぶ人間は一人しかいないのではないだろうか? 日本の未来を左右するような重要な法案なのにもかかわらず、野党の意見にまともに向かい合おうともせず、挙句の果てに「はやく質問しろよ」とまで言う人間。いまこそ丁寧な議論が必要なのにもかかわらず、新聞社を「つぶす」と言って議論の機会すらなくそうとする仲間に囲われている人間。彼は自分が「正解」を知っていると思い込んでいるようだが、「正解はひとつじゃない」ということに気づいてくれる日は果たしてやって来るのだろうか?
この本には、あの黒柳徹子も登場する。黒柳はまず、第二次世界大戦中の自身の体験を語りだす。
空襲が頻繁にあった東京では、一日の食料が大豆15粒。しかも、米軍機が飛来するたびに防空壕で怯える毎日が続いていた。そんな日々に耐えかね泣きながら街を歩いていると、それを見かけたおまわりさんに「どうして泣いているのか」と聞かれたという。
当時、8歳の彼女は、戦争に対して不安な気持ちをありのまま伝えた。すると、慰められるどころか、「戦地に行っている兵隊さんはもっとつらい。兵隊さんのことを思ったら、つらいなんて言えないはずだ、泣くな!」と怒られる。まだ何も知らない子どもですら、自分の気持ちを言うことが許されない。そのことに黒柳は「ひどく絶望した」という。
その経験をふまえて、黒柳は、いま我が国が突き進もうとしている“言論統制”の雰囲気に警鐘を鳴らすのだ。
〈自分の考えを自由に口に出せないというのは、不自由で窮屈で、そこに希望など全くありません。決められた考えや思想を押しつけられ、それ以外は許されないという世の中に、平和への道筋などないでしょう〉
〈「戦争反対!」と堂々と叫べる今が、どれだけ幸せで平和であるかを、ぜひ改めて考えてみてください。そして、この平和が少しでも長く続くよう、誰もが自分の考えや意見を声に出していったらよいと思うのです。
それは、決して言い争うためではなく、お互いの考えていることを知り、理解し合い、協力し合っていくきっかけをつくるためです〉
〈もっと広く周りを見てみましょう。刻々と日本も世界も変わっていきます。もし、悪い方へと変わりはじめたときに、ぼんやりしていたら、声をあげるタイミングを逃してしまい、今、あなたの目の前にあるものがすべてなくなってしまうかもしれません〉
こうして見ると、彼女たちが主張していることには、一つの共通点がある。それは、相手を“知ること”“見ること”“対話すること”“お互いに理解すること”、これらの大事さだ。
まるで、道徳の教科書のようだが、宗教・人種・石油などのエネルギー利権・領土など、様々な問題を乗り越えて、なお平和を得るためには、根気強い「対話」しかないのである。
そういえば、安倍政権は、道徳の授業に力を入れるよう教育政策を進めていたはずだが、まずは、自分たちが「人の話はちゃんと聞きましょう」という補習授業を行なう必要がありそうだ。
(井川健二)
最終更新:2015.07.13 12:33
関連記事
新着 | 芸能・エンタメ | スキャンダル | ビジネス | 社会 | カルチャー | くらし |
斎藤知事が百条委員会欠席で「知事会出席」を理由にするも…前の知事時代には政府主催の知事会を欠席しあの時の懇話会に参加
国民民主・玉木雄一郎の不倫に“政治活動中の公私混同”疑惑が浮上! ヤバすぎる差別体質とビジネス右翼ぶりにも懸念の声
松本人志「訴訟取り下げ」でワイドショーが醜悪な忖度! 吉本御用スポーツ紙は「物証なし」だけ強調し復帰を扇動
萩生田光一ら非公認“裏金”候補に自民党から政党助成金2000万円振込み発覚も…選挙情勢では続々当選の可能性
“裏金”“統一教会”の萩生田光一を応援する極右勢力と有名テレビコメンテーター 一方、新たな裏金疑惑を検察が捜査開始の報道も
石破茂が史上最速で馬脚あらわに! 手のひら返し解散、統一教会も裏金も再調査せず、菅・麻生以外の人事も酷い
安倍首相が統一教会に選挙支援依頼の証拠を朝日がスクープ! 進次郎のバックにいる菅義偉や萩生田光一もあらためて追及せよ
高市早苗のヤバさは極右思想だけじゃない! 総務省文書問題、統一教会との関係、政治資金規正法違反をめぐる“大嘘”の数々
傀儡・小泉進次郎が改革できない“キングメーカー菅義偉”の官房機密費疑惑! 不正選挙やメディア対策にも
兵庫・斎藤知事問題で維新の責任を改めて検証! 局長を“自死”に追い詰めた維新県議、課長の自死は吉村肝煎り優勝パレードが原因か
松本人志「訴訟取り下げ」でワイドショーが醜悪な忖度! 吉本御用スポーツ紙は「物証なし」だけ強調し復帰を扇動
『仰天ニュース』“赤木ファイル”特集で安倍政権・公文書改ざん事件の卑劣があらためて注目! 中居正広も「あってはならない」と
ジャニーズ会見で井ノ原の「ルール守って」発言賞賛と記者批判はありえない! 性加害企業が一方的に作ったルールに従うマスコミの醜悪
ジャニーズ性加害でジュリー社長辞任もテレビ局は検証放棄! 局内での行為が疑われるテレ朝とNHKの無責任な姿勢
ジャニーズ性加害問題で露わになったテレビ局の共犯性! ジュニアの練習場を提供したテレビ朝日はジュリーの謝罪後も批判なし
坂本龍一が最後まで中止を訴えた「神宮外苑森林伐採・再開発」の元凶は森喜朗! 萩生田光一も暗躍、五輪利権にもつながる疑惑
れいわから出馬 水道橋博士が主張する「反スラップ訴訟法」の重要性! 維新・松井だけでなく自民党も批判封じ込めで訴訟乱発
自公維新が提出「国民投票法改正案」にネットで批判の声広がる! 小泉今日子も〈#国民投票法改正案に反対します〉と投稿
三浦瑠麗が「医者はワイドショー見てコロナ怖がりすぎ」と医療従事者を嘲笑! 専門家から反論されると半笑いで「私、医者じゃないんで」
Netflix版『新聞記者』の踏み込みがすごい! 綾野剛が森友問題キーマン官僚に、安倍御用ジャーナリストはあの人が…
国民民主・玉木雄一郎の不倫に“政治活動中の公私混同”疑惑が浮上! ヤバすぎる差別体質とビジネス右翼ぶりにも懸念の声
“裏金”“統一教会”の萩生田光一を応援する極右勢力と有名テレビコメンテーター 一方、新たな裏金疑惑を検察が捜査開始の報道も
窮地の岸田首相が一番頼りにしているのはあの「Dappi」“仕掛人”説の自民党・元宿仁事務総長!「日本の黒幕」特集本が暴いた新事実
兵庫・斎藤知事の「パワハラ告発職員」追いつめに維新県議が協力していた! 職員は吉村知事肝いり「阪神優勝パレード」めぐる疑惑も告発
“既成政党に与しない”石丸伸二の選対本部長は「自民党政経塾」塾長代行! 応援団筆頭に統一教会系番組キャスターの元自民党職員も
小池百合子が都幹部だけでなく“最側近”を天下りさせていた!「大日本帝国憲法復活」「国民主権を放棄せよ」の請願に関与の元特別秘書
大阪万博建設現場のメタンガスが急増し1日2tも発生! 3月の爆発事故では「通報遅れ」「天井破損」を隠蔽していたことが発覚
萩生田光一が裏金問題で提出した「領収書の嘘」が発覚! 安倍元首相が「官房機密費100 万円を参院候補者に手渡し」報道も
吉村知事はガス爆発でも開き直り「他区域ではガスが出ない」と大嘘! 地下鉄工事でメタンガス確認、大阪市も発生可能性認めたのに
吉村知事が「万博出禁」と攻撃した玉川徹のコメントはどれも当たり前の指摘ばかり! 吉村の言論弾圧体質はプーチン並み
維新ゴリ押し 万博&カジノにかかる金はインフラ整備を含めると8000億円以上だった! 大半が国と大阪市の負担、巨額の税金も投入
防衛費増額の財源で「法人税」を削除し「国民全体の負担」だけにした政府有識者会議は読売社長、日経元会長、朝日元主筆がメンバー
菅首相の追加経済対策の内訳に唖然! 医療支援や感染対策おざなりでGoToに追加1兆円以上、マイナンバー普及に1300億円
菅首相のコロナ経済支援打ち切りの狙いは中小企業の淘汰! ブレーンの「中小は消えてもらうしかない」発言を現実化
菅首相の追加経済対策が“自助”丸出し! コロナ感染対策は10分の1以下、大半が新自由主義経済政策に…坂上忍も「バランスおかしい」
悪評「マイナポイント」事業の広報費は54億円、1カ月で半分を浪費! 事務局事業も電通がトンネル法人通じて140億円
三浦瑠麗のアマプラCMは削除されたが…amazonもうひとつの気になるCM! 物流センター潜入取材ルポが暴いた実態とは大違い
安倍首相“健康不安”説に乗じて側近と応援団が「147日休んでない」「首相は働きすぎ」…ならば「147日」の中身を検証、これが働きすぎか
正気か? 安倍首相の諮問機関「政府税調」がコロナ対策の財源確保と称し「消費税増税」を検討! 世界各国は減税に舵を切っているのに
東京女子医大がボーナスゼロで400人の看護師が退職希望! コロナで病院経営悪化も安倍政権は対策打たず加藤厚労相は “融資でしのげ”
斎藤知事が百条委員会欠席で「知事会出席」を理由にするも…前の知事時代には政府主催の知事会を欠席しあの時の懇話会に参加
萩生田光一ら非公認“裏金”候補に自民党から政党助成金2000万円振込み発覚も…選挙情勢では続々当選の可能性
安倍首相が統一教会に選挙支援依頼の証拠を朝日がスクープ! 進次郎のバックにいる菅義偉や萩生田光一もあらためて追及せよ
高市早苗のヤバさは極右思想だけじゃない! 総務省文書問題、統一教会との関係、政治資金規正法違反をめぐる“大嘘”の数々
傀儡・小泉進次郎が改革できない“キングメーカー菅義偉”の官房機密費疑惑! 不正選挙やメディア対策にも
兵庫・斎藤知事問題で維新の責任を改めて検証! 局長を“自死”に追い詰めた維新県議、課長の自死は吉村肝煎り優勝パレードが原因か
自民党総裁選広告「THE MATCH」は「おじさん」どころか「腐敗ジジイの詰め合わせ」だ! 担当の平井広報本部長は親族ぐるみ税優遇
岸田首相「総裁選不出馬」にごまかされるな! 後継候補の河野太郎、高市早苗、石破茂、小泉進次郎、小林鷹之の欺瞞
都知事候補討論会ですっとぼけるも…小池百合子に清和会時代、裏金を受け取っていた可能性が浮上! 派閥上納額は安倍を超える120万円
裏金裁判で安倍派幹部たちの嘘が明らかに! 抜け穴だらけの政治資金規正法改悪で幕引き図ろうとする自民・岸田政権
瀬戸内寂聴が生前、語っていた護憲と反戦…「美しい憲法を汚した安倍政権は世界の恥」と語り、ネトウヨから攻撃も
「BTSグラミー賞逃す」報道に「韓国人のニュースいらない」「日本人の受賞を報じろ」と炎上攻撃が! 日本スゴイの精神的鎖国
ぼうごなつこ『100日で崩壊する政権』を読めば、安倍首相が病気で辞任ししたのでなく国民が声をあげ追い詰めたことがよくわかる
百田尚樹が「安倍総理にお疲れ様とメールしても返信なし、知人には返信があったのに」とすねると、2日後に「安倍総理から電話きた」
村上春樹が長編小説『騎士団長殺し』とエッセイ『猫を棄てる』に込めた歴史修正主義との対決姿勢! 父親の戦中の凄惨な中国人虐殺の記憶を…
村上春樹がエッセイ『猫を棄てる』を書いたのは歴史修正主義と対決するためだった! 父親の戦中の凄惨な中国人虐殺の記憶を…
安倍首相に利用された星野源がエッセイに書いていた“音楽が政治に利用される危険性” 「X JAPANを使った小泉純一郎のように」
“宇予くん”で改憲煽動のJCと手を組んだTwitter Japanはやっぱり右が大好きだった! 代表は自民党で講演、役員はケントに“いいね”
ウィーン芸術展公認取り消しを会田誠、Chim↑Pomらが批判! あいトリ以降相次ぐ“検閲”はネトウヨ・極右政治家の共犯だ
「ノーベル賞は日本人ではありませんでした」報道で露呈した日本の“精神的鎖国” 文化も科学もスポーツも「日本スゴイ」に回収
幸福の科学出家騒動は清水富美加個人の責任なのか? カルト宗教信者の子どもたちが抱える問題
話題の本『夫のちんぽが入らない』のタイトルに込められた深い意味…しかし一方では広告掲載拒否の動きが
福島の子ども甲状腺がん検診「縮小」にノーベル賞の益川教授らが怒りの反論! 一方、縮小派のバックには日本財団
介護殺人に追い込まれた家族の壮絶な告白! 施設に預ける費用もなく介護疲れの果てにタオルで最愛の人の首を…
宇多田ヒカル「東京はなんて子育てしにくそう」発言は正しい! 英国と日本で育児への社会的ケアはこんなに違う
今もやまぬ人工透析自己責任論の嘘を改めて指摘! 糖尿病の原因は体質遺伝、そして貧困と労働環境の悪化だった
『最貧困女子』著者が脳機能障害に! 自分が障害をもってわかった生活保護の手続もできない貧困女性の苦しみ
雨宮塔子が「子ども捨てた」バッシングに反論! 日本の異常な母性神話とフランスの自立した親子関係の差が
『NEWS23』に抜擢された雨宮塔子に「離婚した元夫に子供押しつけ」と理不尽バッシング! なぜ母親だけが責任を問われるのか
小島慶子が専業主夫の夫に「あなたは仕事してないから」と口にした過去を懺悔!“男は仕事すべき”価値観の呪縛の強さ
人気記事ランキング
カテゴリ別ランキング
社会
ビジネス
人気連載
アベを倒したい!
ブラ弁は見た!
ニッポン抑圧と腐敗の現場
メディア定点観測
ネット右翼の15年
左巻き書店の「いまこそ左翼入門」
政治からテレビを守れ!
「売れてる本」の取扱説明書
話題のキーワード