モテホストが教える“モテテク”は本当に使えるのか? リア充女子が診断!

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『「モテの原理」モテるオトコに変わるための出張ホスト禁断の教え32』(ゴマブックス)

 世の中に多数存在する「男性用モテ本」。参考にしている男性も多いようだが、女性からすると内容に疑問を感じることが多い。例えば“自信のある男はモテる”という教えはありがちだが、これは自信の根拠となる実績を持っていることが絶対条件。自信だけがあっても、プライドが高い男ははっきりいって面倒である。卑屈な男性よりはマシだが、プラス評価になるとは限らない。

 そんななか、男の勘違いがよくわかる本を発見した。“年収1000万をコンスタントにキープするカリスマ出張ホスト”だという藤崎清十郎氏による『「モテの原理」モテるオトコに変わるための出張ホスト禁断の教え32』(ゴマブックス)なる本だ。なんでも藤崎氏によれば、女心を知るためには「身体言語」をマスターしなければならない……らしい。身体言語とは、仕草や表情、声のトーンなど「言語以外の情報」。だがこれが、女からすると「マジすか!?」のオンパレードなのである。


●その1 女性が唇をかむという仕草

 藤崎氏によると、これは意識的に「その件は言わない」とふるまっているか、あるいは「何が言いたいかわかないから黙っておく」という自信のなさゆえの仕草であると考えられるのだそう。どちらの場合も自分から言葉を発しないようにしているが、内心では何か言いたいことがある可能性が高いので、「僕でよければ話を聞くよ」と声をかけるといいらしい。「これが言えたら、オンナはオチます」と自信たっぷりだ。なぜなら女性は「言葉で言えないことに気が付いてくれた」男性を手離さないからだそうだが、ちょっと待ってほしい。唇を噛む仕草は心理学的にストレスのサインといわれているし、返答を考えるのが面倒で“悩むふり”をしているだけのときもあり、何にせよプラスの表情ではない。「うまく話せない」パターンより、「言いたくない、話したくない」ときのほうが多いのではないだろうか。おそらく話題の選択をミスっているのだ。そんなときに「僕でよければ話を聞くよ」と言われたら、それこそ「言葉で言えないことに気が付いてくれよ」という感じである。


●その2 女性が「首」や「のど」を見せる仕草

 首をかしげたり、髪をかきあげたり、顎を少し上にあげたり……という仕草。こちらも意味は二通りで、一つは「怖いと思っていない、かかってこい」というプレゼンテーション&挑発。もう一つは、自分を無意識に魅力的に見せようとする「誘いのサイン」で、「ほら、こっちを観て」「私はあなたに自分の弱点を見せているのよ」という意味らしい。こんなときに「○○ちゃん、ほんと、かわいいね」「キレイだね」褒めちぎれば、女性の気分はどんどん高まって……と、怪しい広告かのように都合のいいことが書かれているが、これも疑わしい。首やのどを見せる仕草に何の意味もなかった場合、女性は“急に褒められた”ことになる。「女は褒めると喜ぶ」と思い込んでいる男性は多いが、いきなり褒めちぎれられると気味悪く感じるし、いちいち礼を言うのも面倒だし、「褒めれば喜ぶと思ってんだろうな、私はそういう女だと思われてるんだな」と解釈して萎えることもある。褒められたときに素直にうれしいと感じる相手は、明るくさわやかで下心を感じさせない“褒め慣れキャラ”だけなのだが、そんな人はこの本を手にとらないだろう。

●その3 女性が上目遣いであごをひく仕草

 女性があごを引いて上目遣いで相手を見つめると、女性の目はより大きく、身体はより小さく見える。ダーウィンによれば、人間は相手に「威嚇しているのではない」ということを示すために、頭を低くするのだとか。そのため、この行為が女性から繰り広げられると、「もっと親しくなりたい」という男性への誘いサインだと受け取ってよい、らしい。

 好きな人にかわいいと思われたくて、つい上目遣いに……というパターンがないとは言わない。ただ、相手が怖いとき、興味がないとき、ちょっと引いているときも、顎が引けて結果的に上目遣いになることがある。また、「せっかくデートだから、相手への礼儀として女性らしい表情をつくろう」というパターンもあるし、さりげなく「かわいこぶる」のが習慣になっている女性も多い。

 このようなケースには一切触れず、「上目遣い=誘い」などと、今さら感あふれることを自信満々に言われても。「身体言語」という大げさな単語を使うからには、それなりに学術的な裏付けのあるテクニック本なのだろうと思っていたのだが、「ダーウィン」という言葉だけで説得力を出そうとする姿勢は逆にスゴイ。「勢いでどうにかする」という点で、合コントークの参考にはなるかも。


●その4 女性が「瞳」を大きく見せる仕草

 カラーコンタクトを入れたり、目を見開いたりして瞳を大きく見せるのは「今起きたことや耳にしたことについて、もっと知りたい」ということ。この行為は「相手に興味がある」というサインを送り、「私はあなたの話に興味があるよ」と愛想を振りまいている意味を持つのだという。

 話に聞き入ってしまい目を見開くことは、たしかにある。しかし目を見開くというのは、まぶたを動かすだけでいい“省エネリアクション”でもある。相手の言うことがおもしろくない、返答が浮かばない、とはいえ退屈そうにするのは失礼だし……という状況において、「そうなんだ~!」「へ~すごい!」などと言いながら目を見開くことは、場をやり過ごすためのテクニックなのだ。それに限界がくると、「困ったな」と唇を噛む……なんだか、この本を読み進めていると、モテテクを駆使しているつもりの男性と、ウンザリしている女性のデート模様が浮かんでくる。


●その5 アイコンタクトの使い分けの仕草

 これは主に男性側に推奨する仕草。目を見てアイコンタクトをすると、何かを意図しているように思われるため、デートの約束を取り付けたい時は、相手の目を見ないほうが成功する。「来週の土曜日は?」などとスケジュール帳に目を落としておくのが得策。女性は目を見て予定を聞かれると、その男性の目線から何かを察知しなければという余計な勘ぐりが働き、それが相手への不信感につながり、約束を断ってしまうのだとか。スケジュール帳を見ながら話をすることは不自然な行為ではないし、相手が出張ホストなら「デートの予定がいっぱいあるんだろうな」と解釈するだろうが、一般人男性なら「えっ、なにこの“忙しい俺”アピール」という感じだ。少なくとも、やる気がないように見えて好感は抱かない。普通に顔を上げてほしい。


●その6 階段を降りる時は女性のほうに半分身体を傾ける仕草

 これも主に男性側に推奨する仕草。階段を下りる時は自分が一歩先に降り、さりげなく手をさしのべる。大半の女性が「大丈夫です」と断るが、そこは折り込みずみ。断られたあとは「足下に気をつけて」と一言そえ、身体の半分を女性のほうに向けて降りる。これで「常にあなたを気にしている」という状態をアピールでき、評価がグッとあがる──とのこと。ドレスアップして高級レストランに行くなど特殊なシチュエーションを除けば、「恥ずかしいからやめて!」。そもそも好感度が高くなければ「さりげなく手を握るつもりだろうけどバレバレだぞ、童貞かよ」と逆効果になりそうだ。


 ……同書は残念ながら、女性からすると「ぜんぜんわかってない!」の一言。読み進めながら、少女マンガ『ハチミツとクローバー』(羽海野チカ/集英社)に登場する「女子が一番イヤがるのは『そーゆーのに振り回される男』なんだよな」というセリフを思い出していた。そーゆーの、というのは、まさしくこのような恋愛テク本である。出張ホストである著者がこれらのテクニックを駆使するのは様になるのかもしれないが、この手の本を読まないといけない、つまりモテない男性が行うのは、絶対にサムい。いっそのこと「俺はあまり慣れてないから、気になるところがあったら言ってね」と素直に伝えたほうが、よほどモテそうな気がする。
(池内あさこ)

最終更新:2014.12.17 07:48

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