早野龍五・被曝論文の重大誤りに糸井重里は? 福島原発後に“放射能汚染たいしたことない”論を振りまいた責任

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放射能汚染を矮小化した早野・糸井“放射能”対談に疑問の声

 ほかにも『知ろうとすること。』のなかで早野氏は、「事故の後、最初の年、できたお米を測定してみると、これが驚きなんですけど、土の汚染度と米の汚染度の比例が、まったく確認できなかったんですよ」と述べているのだが、これについても黒川氏は「確かに農林水産省と福島県が測定したグラフを見ていると、一見バラバラなように見えます。しかし、対数表示のグラフにすると、土の汚染度が高ければコメの汚染度も高い比例関係がはっきりと浮かび上がってきます。早野氏でなくても、物理学者なら相関をしっかりと調べなければなりません。もし、わかっていて「比例関係にない」などと話しているなら問題です」と批判している。

 そもそも、黒川氏が早野論文を読んだきっかけこそ、『知ろうとすること。』だった。黒川氏は「2人が対談し、福島の放射線影響や、科学的に考えることについてまとめているのですが、オヤッと思う点がいくつもあったのです」と言い、危機感をもったことをこう語っている。

「物理学は量をはっきりさせることが大切な学問で、ものを言う前提として具体的な数値に基づかないといけません。しかし、早野氏はこの本の中で曖昧な言い方を多用しながら、福島の放射能汚染がたいしたことがないような印象を読者に与えてしまっています。こうした科学的でないことを東大の物理学教授という肩書でやっている。これはまずいと感じたのです」

 この、福島の放射能汚染はたいしたことがないという印象を与えようとする早野氏に“信頼感”を与えているのは、もちろん早野氏に同調する糸井氏の存在であるのは間違いない。いや、信頼するよう誘導していると言ってもいい。たとえば糸井氏は、こうも語っている。

糸井「本当に取り返しがつかない、ひどいことが起こってしまった。でも、あえてそこでもう一度、「……でも」と続けたい」
早野「はい」
糸井「でも、放射線のことを闇雲に怖がっていても先に進めないんです。いま必要なことは、事実を正しく知って正しく怖がることなんだと思います。早野さんのような人にきちんと噛み砕いてもらって、ちゃんと怖がるために、本当に危なかった、という話はちゃんと踏まえた上で、「科学的に正しい事実を、人間が暮らすという視点から見てみよう」ということが、必要だと思うんです」

 本人も認める“科学のド素人”である糸井氏が、どうして早野氏のことを手放しで「科学的に正しい」と信じ、「怖がってる人たち」は「正しい知識がどうも伝わっていない」と断じることができるのか。事故後、即座にメルトダウンの可能性を指摘した学者たちのほうがよほど信頼がおけるはずだが、どうしてそれを否定した原子力の専門家でもない学者を「冷静に事実だけをツイート」していたと感じ、「この人は信頼できる」と思ったのか。

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