ガンバ大阪「ナチス旗」問題を取材検証! 本質は日本社会の差別への無自覚性、サッカー界は対策プログラムの導入を

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ナチスのエンブレム掲揚行為は虐殺の支持を意味する

 欧州サッカー連盟(UEFA)とタッグを組む、FARE(欧州サッカー反人種差別行動)は、欧州での反差別のプログラムを推進する機関であり、近年では世界にフィールドを広げつつある。そのFAREは、2018年のロシアワールドカップにむけて現在世界各地で行われている予選の試合に差別行為がないかを監視する公式のオブザーバーを導入している。その日本の公式オブザーバーが加盟する団体が、ARIC(反レイシズム情報センター)である。ARICは、日本におけるスタジアムの差別行為の事例などをFAREに情報提供も行っている。そのARICの代表の一橋大学の梁英聖に今回のナチス旗について話を聞くと、まずはナチスに対する日本社会の無理解を指摘した。

「世界の先進国のなかで、唯一ナチスの問題をわかっていないのが日本です。600万人のマイノリティや障碍者や同性愛者を殺戮してきたナチスのエンブレムをあげるというのは、その行為を支持するということを意味します。欧州ならばこれらのエンブレムを人前で使ったというだけで即逮捕されることもあります」

 ARICの梁は、この旗が野放しになっているということが伝われば、現在でも跳梁跋扈する海外のネオナチや極右に、日本はそういう活動ができるというメッセージを与えかねないと不安視もしているという。なお、オロウィツも、この事件により日本で反ユダヤ主義が広がっているという誤解が生まれる可能性があるということを指摘している。2020年、東京オリンピックはもう目の前である。

 スタジアムを活動の場所としようとするネオナチや極右をスタジアムから排除するために、欧州のクラブチームは日々戦っているといっても過言ではない。FAREでは、そうしたクラブを支援するためのツールとして、インターネット上で小冊子を発行している(外部リンク:http://www.farenet.org/wp-content/uploads/2016/10/Signs-and-Symbols-guide-for-European-football_2016-2.pdf)。「偏見や差別がない、開かれた自由なスタジアムであるためには、このサインを警戒し、排除しなければならない」と書かれたリストには、欧州やアメリカのネオナチや人種差別主義団体などが使うマークがリストアップされている。

 クラブチームによっては、スタジアムのローカルルールとして独自に禁止した極右やネオナチのエンブレムも公開している。こちらは日本でおなじみの内田篤人選手が所属するシャルケ04のサイトに掲載されているものだ(外部リンク:http://www.schalke04.de/fileadmin/images/Hauptseite/Fans/Fanbelange_Rechte_Symbole.pdf)。

 欧州のネオナチは、法律で禁止されているナチスのエンブレムを使うために微妙なデザインの改変を加えたり、ヒトラーの名前などを隠して使うために様々な手を使う。たとえば、ドイツでスキンヘッドの人間が“88”や“18”の数字を何かこれ見よがしに使っているとすれば、それはヒトラーを賛美しているということだ。88はアルファベットの順番で8番目の“H”を表し、すなわち「ハイル・ヒトラー」、18は同じように“A”と“H”、つまり「アドルフ・ヒトラー」のことだ。またナチスがその思想的バックグラウンドとした古代のケルト紋章やリューン文字なども、彼らは多用する。

 “SS”を“Sh”にしたという言い訳の仕方や、このリストにもいくつか代表的なネオナチのサインとして掲載されている歯車やハンマーの紋章から、筆者が「政治思想的な背景はない」と言い切れないと考えた理由がおわかりいただけるであろうか。

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