東海テレビ・阿武野プロデューサーを直撃!

ヤクザの人権、犯罪弁護団、安保批判…萎縮状況の中でなぜ東海テレビだけが踏み込んだドキュメンタリーをつくれるのか

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『光と影 〜光市母子殺害事件 弁護団の300日〜』(c)東海テレビ放送


 まず、阿武野に聞きたいのは、普通の地上波が扱わないような“危険な”テーマに踏み込んで、これまで圧力や規制、クレームなどを受けたことがなかったのか、ということだった。しかし、阿武野はこんな拍子抜けするような返事をする。

「いや、私たちがやっていることは、ど真ん中の仕事。キワモノでもなければ、トンガっているわけでもなくて、ドキュメンタリーの真ん中、当たり前のことを当たり前にやっているという認識しかないので。クレームなんかもそんなにこないですよ。むしろテレビを観てくれたみなさんからは『よく撮って、知らせてくれた』というお褒めの声のほうが多いくらい」

 が、個別に聞いてみると、やはり局内外でのトラブルはないわけではない。たとえば、光市母子殺害事件を扱った『光と影』。この事件では、被害者遺族の訴えがメディアで盛んに取り上げられ、被告の元少年を「極刑にせよ」という世論が過熱。彼を弁護する弁護団もまた「鬼畜」とバッシングを受けた。その「鬼畜弁護団」側にカメラを入れた『光と影』の制作中、阿武野は東海テレビの当時の社長と番組を挟んで、直接相対したという。

「『光と影』は少々揉めましたね。制作が7、8割方進んでいるところで突然、先代の社長ですが、私を呼び出し『鬼畜を弁護する鬼畜弁護団。それを番組にするお前は鬼畜だ!』『お前は狂ってる!』というようなことを言われましたね。社長に狂人扱いされるなんて中々ないですよね。でも、これは私が辞表出して済む話ではないんですよって。東海テレビの名前を出して、私たちは弁護団と取材をする、されるという関係になっている。その途中で社長の鶴の一声というか、圧力というか、で番組をやめるわけにはいかない。『社長が制作を止めるんですよ、よろしいんですね? 相手は腕っこきの弁護団ですよ? 訴えられるのは、社長ですよ』とお話しましたね。当時の報道局長と編成局長も、どういう形であってもいいから番組にしようと言ってくれて、放送することが出来ましたね」

 キー局のフジテレビともいろいろあったようだ。もともとフジテレビ系列では、地方局制作のドキュメンタリーが全国ネットで放送される機会はほとんどない。例外は「FNSドキュメンタリー大賞」に応募し、ノミネート作として深夜に放送されるぐらいだ。いわば地方局にとって唯一、全国の視聴者を獲得できる“出口”。しかし、阿武野たちは、数年前から「FNSドキュメンタリー大賞」についてはノミネート枠を、他の部署に譲った。なぜか。

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