東海テレビ・阿武野プロデューサーを直撃!

ヤクザの人権、犯罪弁護団、安保批判…萎縮状況の中でなぜ東海テレビだけが踏み込んだドキュメンタリーをつくれるのか

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『平成ジレンマ』(c)東海テレビ放送


 きっかけは、『ホームレス理事長 退学球児再生計画』(2013)を巡っての、東海テレビ社内の対応とフジテレビからの放送謝絶だった。ドロップアウトした高校球児たちに「再び野球と勉強の場を」と謳うNPOを取材した本作には、金策に奔走する理事長が取材スタッフに土下座して借金を懇願したり、闇金にまで手をだすなど、かなり“危うい”場面がある。なかでも作中で監督が球児にビンタを連発するシーンは、名古屋での放送時に物議を醸した。フジテレビはこの番組について放送しない決定をした。

「終わったことですし、話すと長くなるんですけど(笑)。まあ、あのビンタのシーンでもめたんですよ。フジテレビは番組考査にかける、という話しになった。ようは、番組を事前にチェックしてウチで放送できるかどうか検討します、というわけですね。でも、これまでそういうことはしてこなかったはずですし、各局で放送した内容をそのまま放送するのが前提だったはず。何でそうなったのか説明もなく、これからどうするかも伝えられず、その対応が理解できなかった。信頼関係が崩れたと思いましたね。だから、私たちはこの仕組みには乗れないと。喧嘩した訳ではなく、番組、ドキュメンタリー、放送についての考え方が違う以上、仕方がない、ご遠慮申し上げることにしたんですね」

 こうした姿勢は時として、暴走に映ることもある。たとえば『平成ジレンマ』は“体罰の代名詞”と化している戸塚ヨットスクールの今に密着した作品だが、激しい批判が起きた。本サイトから見ても、体罰肯定論の宣伝につながるような危うさを感じざるをえなかった。

 しかし、阿武野はこうした批判も、ドキュメンタリーには付きものだと思っている。それは彼が求めているものが、右か左か、正義か悪かという二元論的な価値観を超えたもっと深いところにあるからだろう。その深い場所に光をあてるためならば、ときに世間の流れの逆側に立って物事を切り取ることもいとわない。そういう覚悟に裏打ちされているような気がする。

「ありがちなドキュメンタリーは、誰も求めていないと思うんです。決まり切った美談のようなものを求めているという風に制作者が思っているとしたら、大きな勘違い。そんな時代じゃないよって思うんです」
「今、みんなどうやってリスクを回避するかにとても繊細ですよね。そういう教育を受けているから仕方がないと思います。でも、私たちのところには、リスクだらけのところに突っ込んでいって、何かとんでもないドブの中から宝物を引っ張りだすぐらいの力を持っている人間が、いるんです」

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