もはや愛国ポルノ!? 空疎な“日本人はスゴい”論連発で大ブームの日本礼賛本トンデモランキング

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★第2位 「二〇〇八年のリーマン・ショックの際、日本人の被害がもっとも少なかったと言われるのも、何となくいかがわしい金融デリバティブには手を出すのを控える人が多かったことによるものだと思います」
馬渕睦夫『日本「国体」の真実 政治・経済・信仰から読み解く』(ビジネス社)

 ■会社は仏道修行の場、お金は穢れ ユダヤ陰謀論の次はトンデモ神道■

 グローバリズムを徹底批判する数冊の本がベストセラーになった元ウクライナ大使だが、その思想的立ち位置は「グローバル化はユダヤ思想に基づく」というユダヤ陰謀史観。そのままではユダヤ人差別に直結しかねず、きわめて政治的にも思想的にも危ういものだ。そのせいもあってか、この最新刊では、日本人礼賛に焦点を当てたものにシフトチェンジ。

「わが国を襲っているグローバリズムという普遍主義に対抗するために、神道的な世界観が普遍性を持つように理論化することが必要」と、『古事記』『日本書紀』の世界から日本思想の根本に存在する「国体の本義」を考察する。

 元大使によれば、聖書にもとづく欧米との大きな違いに労働観があるという。「欧米の労働観は神の掟に背いた罰」だが、「日本人にとって労働とは神事です。私たちの先祖の神々は高天原で労働をしておられたのです。したがって、今日私たちは働くということは、神々と同一化するという意味があるのです」と“労働=神事説”を打ち出す。

 さらに、「会社は仏道修行の場でもある」説も説く。「かつての日本式経営方式の下での(略)会社員は残業もいとわずひたすら仕事。すなわち仏道修行に勤しんだのです。会社に長く居残ることは苦痛ではなかったのです。会社は生活の糧を得る場だけではなく精神修養の場を提供してくれているのです。退職して会社を離れると、急に老け込むサラリーマンが少なくないと言われますが、会社はサラリーマンにとって家庭では得がたい修行ができる貴重な場所でもあったのです」とブラック企業が喜びそうな“労働=仏道修行説”なのだ。

 さらに、「高天原の経済活動の中に、金融は存在しなかった」ことから、「日本の場合、穢れ忌避思想から言えばお金というのは伝統的に穢れているのです。そのため日本は金融資本主義に対していつも距離をおいていた」として、冒頭のように言い出すのだ。

 しかし、リーマン・ショックでも金融機関は(みずほフィナンシャルグループ、農林中金など)巨額損失を計上しているし、何よりもバブルのときに日本は金融資本主義に踊らされていたではないか。このトンデモ元外交官はこれまで、外交の場でどれほどのトンデモ日本イメージをまき散らしてきただろうか、心配になってくる。

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