『バケモノの子』はショタ萌え映画か? 細田守監督の“ショタ愛”を検証してみた

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「いやぁ、これねぇ…絵コンテを描いていても、レイアウトチェックや原画チェックをしていても思うんだけどさ、健二君はさておき、佳主馬が色っぽくて」
「首筋とかを描いていて、何かドキドキするんだよ…こっちはもう中高年なのに」
「一二歳くらいの子の妙な色気っていうのはさあ…手足が妙に長くて、細くてさ、それで変声期でさ。変化の瞬間って、実はすごく魅力的なのに、たぶん中一や中二の男の子たちは自分のそういう魅力に気づいてないんだよね。惜しいなあ、みたいなね。まあ、みんな手を出さないからね。同年代の女の子も若過ぎて、男の子の魅力に気づけないじゃん。いやあ、良いんだよね…プール帰りの男の子とかって、すごく色っぽいんだよね」
「何かそういう、いやらしい目線を佳主馬には監督ながら注いでしまう…」

 王道作品が作りたいとか、誰かに対抗するためという理由だけで、ここまでショタの魅力を熱く語れるものだろうか。ショタ萌えポイントをしっかりおさえ、細部までこだわった描写。魅力的なショタキャラが生まれるのは、やはり細田監督自身のショタ愛があってこそだろう。

 そんな細田監督のショタ愛だが、過去作品からの流れをよく見てみると、ショタはショタでも作品によって描かれ方が微妙に変化してきているように思える。とにかく“男の子が描きたい!”という思いが叶った『サマーウォーズ』では、自分の趣味が溢れ出してしまった感もあるが、『おおかみこどもの雨と雪』では、男子に人気の“かわいいショタ”である雨と、お姉さんとショタの組み合わせを描くおねショタジャンルでも女子に人気の“かっこいいショタ”である草平が登場している。いわゆる男女それぞれに人気のショタを詰め合わせた作品といえるかもしれない。

 逆に、今作の『バケモノの子』では、1人のショタの表と裏のような姿を描いている。子どもらしく、不満や言いたいことを言えて、それを言ってもきちんと受け止めてくれる相手が居る九太と、言いたいことが言えなくて闇を抱えていく一郎彦。小さなきっかけや選択、周りの環境でどちらにもなり得る二面性を2人のショタで表現しているようだ。

 最近のショタキャラからはあからさまなエロは減ってきているし、「エス」のインタビューで語ったようなショタ愛発言もあまり見られなくなってきてはいるが、たとえ自分に息子が生まれようとも、彼のなかにあるショタ愛は変わっていないはずだ。

 もしかしたら、自分のなかのショタ愛を、多くの人に受け入れられるエンターテインメントにどう昇華するか試行錯誤しているのかもしれない。まあ、観ている側からするとどれも「ショタかわええ」としか思わないのかもしれないが。
(田口いなす)

最終更新:2018.10.18 04:29

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