待機児童解消の掛け声の裏で「保育現場」が崩壊! 虐待、保育士の疲弊、ブラック化…

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『ルポ 保育崩壊』(小林美希/岩波新書)

 全国の保育所でこの10年間に少なくとも163人の子どもが死亡したと厚労省が発表した。その7割が認可外保育施設での事故だ。子どもを安心して預けられるはずの保育所での悲惨な事故――。

 保育の現場で何が起こっているのか。しかも問題なのは何も認可外保育施設だけではなく、保育の現場全体が“崩壊”しつつあることだ。そう指摘するのは、保育の現場、そして母親たちを丹念に取材した『ルポ 保育崩壊』(小林美希/岩波新書)だ。

 女性が輝く時代に――。2013年4月、安倍首相は「成長戦略スピーチ」のなかで女性の活用をこう高らかに宣言した。そして働く女性にとって待機児童の問題解決が急務であり17年までに40万人分の保育を確保すると宣言した。実際、保育所への民間参入が進み、また幼稚園と保育園を合わせた「認定こども園」は昨年比で倍増した。しかしその実情は数字だけでは推し量れない、惨憺たるものだという。

「“箱物”は用意されても、肝心の人材確保や人材の教育が追いつかない。利益を出すことを目的とする株式会社の新規参入や事業拡大が目立つなか、『とにかく保育園に入れないことには仕事を失いかねない』という保護者の切迫した状況と裏腹に、とても安心して子どもを預けられないような現実がある」(同書より)

 実際の保育の現場は殺気立ち、まるで「地獄絵図」のような光景が広がっているという。特に著者が問題視するのは株式会社が運営する認可保育所だ。

「午前一〇時頃、親に預けられた子どもたちが、部屋の壁が割れんばかりの大きな声で泣きわめいていた。(略)保育士は、皆若い。クラス担当の責任者でも二年目だった。(略)新卒の保育士が、『どうしていいか分からない』と口にしながら途方に暮れていた。リーダー保育士は怖い顔をして『泣き過ぎ!』と子どもたちに向かって叫んでいる」
「(昼食の時間)男の子がおしぼりを手にし、椅子に座ったが足をぶらんとテーブルに乗せてしまった。その瞬間に、力の強そうな男性保育士が『行儀が悪い!』と怒鳴りつけ、鬼の形相で、その手からおしぼりを奪い取り、テーブルにバシンとたたきつけた。そして、次の瞬間、その子の足を怒りにまかせて強くたたいた。まだ物事のよしあしも分からない一歳の子どもを、だ」

 その風景は食事というより餌やりだったという。しかも、遊びのスペースは狭く、余裕のない保育士はきつい顔をして金切り声を上げ、言うことを聞かない子どもを乱暴に抱き上げたり引っ張ったりする。泣いている子どもも放置しっぱなしだ。

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