「ブサイクは怠惰の象徴」古市憲寿のブス差別がヒドい! 容姿差別は合法だと開き直り

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 もう一点指摘したいのは、古市くんが挙げる「対処策」の浅はかさだ。メイクや整形は、本当に容姿に悩む人々の問題を解決する万全の方法と言えるのか。これに関しても、既に別の問題点が指摘されている。

 西倉実季・和歌山大学准教授は、外見への侮蔑・からかいなど、外見の美醜に関する「美醜ハラスメント」(美ハラ)の問題に目を向け、被害を緩和させる方法を検討している(「美醜評価の中を生き抜くために――美醜ハラスメント被害とその対処方法」/「女性学」vol21/新水社)。美ハラを乗り越えるための対処策のひとつに挙げられるのは、やはりカバー・メイクをはじめとする身体加工だ。しかし、そうした手段を用いることで、かえって本人の苦悩が増す場合もあるというのだ。

 西倉は、顔に抱えたあざを隠すメイクを試みた結果、かえって罪悪感に苛まれることになった町野美和という女性の存在を挙げる。町野はこの「罪悪感」を以下のように語っている。

「アザをないことにしたい私の心は、私自身を見えなくさせていった。クラブ仲間やクラスメートに化粧をしていることを気づかれないよう、バレないよう、嘘に嘘を上塗りするみたいに私はコソコソと無駄な努力をしていた。(略)私は人並みに見られる対象として化粧をしたため、アザという深くて重いコンプレックスを化粧の下に埋め込んで他人に対してアザを、タブーにした。私自身はそうすればそうする程、『アザを隠している』という自意識に振り回され支配された」(町野美和「女の価値は顔」/駒尺喜美・編『女を装うー美のくさり』/勁草書房)

 これを読んでも古市くんはなお「整形が一般的になった社会で『ブス』や『ブサイク』は怠惰の象徴」と口にできるだろうか? 町野が訴えるように、「『見た目』を良くする努力」が当事者に新たなプレッシャーを生みかねないとしたら、その努力を奨励する古市くんの発言も「美ハラ」の一種と呼べるのではないだろうか。

 容姿や美醜というテーマを研究に絡めて書こうとするなら、フェミニズムを看過することはできない。曲がりなりにも「社会学者」を名乗るのなら、こうした批判にも堪えうる論考を発表すべきだった。

 しかし実は、こうした批判を行うのは本稿が初めてではない。彼の社会学者としての力量についてはそもそも、師匠である小熊英二・慶應大教授が、さんざん苦言を呈し続けているのだ。

 形に残っている記録のなかで、確認できる最初のものは2011年に遡る。古市くんの『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)出版後に行われた小熊×古市の対談イベント(小熊英二他『真剣に話しましょう――小熊英二対談集』新曜社に所収)では、小熊が古市くんの本に対して「調査がとても粗い。(略)あなたが自分の持っている憶測や仮説を当てはめて全体を作ったように感じます」と、強烈な一撃をたたみかけるところから始まる。続けて古市くんが「若者論」を語り続ける難点を指摘し、最後には「あなたはたぶん、今は若者のつもりでいるのでしょう。しかし経験からいっても、いろいろな人の事例を見ても、未来で評価される期間はそんなに長くないんですよ」とまで言い放っているのだ。

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