昔なら有吉の年収もわかったのに…長者番付はなぜ廃止されたか? 背後に格差助長政策

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 また、自民党の支持母体である財界も、かなり前から自分たちの年収や節税が白日の下にさらされる長者番付の発表に不満をもっており、ことあるごとに廃止を自民党に求めてきた。そこに個人情報保護法が登場したため、格好の機会とばかりに一気に廃止にもっていったと言われている。

 メディアは、制度が廃止されて以降もなんとか長者番付的なものを報道しようとはしてきた。たとえば、米国経済誌「フォーブス日本版」の「日本の億万長者」シリーズもそのひとつだ。ちなみに、14年のランキングのベストスリーは「1位:孫正義(ソフトバンク創業者)1兆9700億円、2位:柳井正(ユニクロ創業者)1兆7800億円、3位:佐治信忠(サントリーホールディングス社長)1兆1200億円」である。

 しかし、この「日本の億万長者」は総資産額(ストック)を対象としており、所有株式の時価総額の評価の影響が大きいと見られている。単年度に発生した所得(フロー)を対象としている「長者番付」との大きな違いだ。出所が明らかにされていないこともあって「信用性に劣る」というのが一般的な評価である。

 一方、「上場企業の役員報酬」ランキングもわかるようになっている。これは、民主党政権時代に、当時の亀井静香金融担当大臣の意向で内閣府令が改正され、「年俸1億円以上を支給している企業役員」の個人名と報酬額の開示を義務づけたためだ(2010年3月期より)。

 最新の14年3月期のベスト3は「1位:橋本浩(基板メーカー・キョウデン最高顧問)12億9200万円、2位:樫尾和雄(カシオ計算機社長)12億3300万円、3位:樫尾幸雄(カシオ計算機特別顧問)10億8300万円」となっている。

 このように、企業の役員報酬に限定ながらも、部分的には長者番付が復活している。しかし、である。これは「上場企業」の「役員報酬」に限定されており、配当所得などがまったく明らかにされていないのだ。

「現代ビジネス」(2010年12月15日)の記事「初調査 配当金で分かった本当の“億万長者”役員報酬なんかじゃ分からない 任天堂・山内溥相談役は年収131億円、ユニクロ・柳井正社長は65億円!」では、配当金による億万長者として、ユニクロ・柳井氏や、ソフトバンク・孫氏などの名前をあげる。

〈たとえばユニクロの柳井正氏は役員報酬こそ3億円ですが、ファーストリテイリングの株式を2800万株ほど持っている。直近の有価証券報告書によれば、同社の年間配当金は230円。単純計算で役員報酬の20倍以上、約65億円の配当収入を得ていることになる〉
〈港区の高級住宅地に豪邸を構える孫氏は、約2億2000万株(全体の約21%)の株式を所有。ソフトバンク株の配当金は5円と高くないが、莫大な数の株式を持っているため、11.4億円ほどの収入を得ている。孫氏の役員報酬は約1億円、配当収入とあわせれば年収は12.4億円になった〉

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日本の長者番付: 戦後億万長者の盛衰 (平凡社新書)

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