「日本は金持ちの税金が高い」は嘘! 医者、大企業、投資家に有利な税制

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
zeikinwoharauyatsu_01_150220.jpg
『税金を払う奴はバカ!』(ビジネス社)

 格差拡大、富の集中という資本主義への処方箋として、グローバル累進資本課税が必要だとしたトマ・ピケティの『21世紀の資本』。世界で、この“ピケティ税”の実現可能性、実効性が議論されているが、日本の税制の現状は、その導入の議論をする以前の問題かもしれない。

 実は日本の税制には抜け穴があり、その抜け穴からとるべき税金が漏れている──というのは『税金を払う奴はバカ!』(大村大次郎/ビジネス社)だ。著者の大村氏は10年間主に法人税担当調査官として勤務した経験のある元国税調査官。『あらゆる領収書は経費で落とせる』(中公新書ラクレ)など節税に関する著書が多く、この2月~3月の確定申告の時期にもっとも読まれる著者の一人だが、今回は日本の税制の抜け穴の多さに憤っているのだ。

「ネットの掲示板などを見ても、『日本の金持ちの税金は世界一高い』ことを前提に経済を語る人がかなりいる。しかし、これは大嘘である。政府と財界の嘘にまんまと引っかかっているのである。
 確かに日本の所得税の税率は、高額所得者には高く設定されており、税率だけを見るならば、日本の金持ちの税金は世界的に見て高い部類に入る。しかし日本の金持ちの税金にはさまざまな抜け道が用意されており、実質的には冗談のように安い税金しか払っていないのである」

 たとえば、先進主要国の国民所得に対する個人所得税負担率を見ても、日本は7.2%。アメリカ、ドイツ、フランスはどこも国民所得比で10%以上の負担がある。イギリスにいたっては13.5%で日本の約2倍なのだ。

「先進国の所得税収の大半は、富裕層が担っている。だから国全体の所得税負担率が低いのは日本の金持ちがどれだけ税金を払っていないかということになる」

 具体的には、配当所得の分離課税と開業医の優遇税制だ。まずは配当所得の分離課税。所得が高ければ高いほど税率も高くなる累進所得税から分離しているのだ。

「会社経営者(兼オーナー)は、自社の株を保有しているわけであり、投資家でもある。この投資家に対する税金が、日本は著しく安いのだ。日本では配当所得は分離課税となっていて、他の所得税の税率よりも相当に低い。(略)現在の税率はなんと20・315~20・42%である。つまり、配当所得は何千万円、何億円収入があろうと税率は20・315~20・42%なのである」

 主要国の税率に比べても低い。もし、日本の金持ちが先進諸国と同程度の税金を払ったらどうなるか。

「単純に考えても、今よりも10兆円以上(所得税、住民税合わせて)は税収が増えることになる。10兆円の税収というと消費税を5%増税したときとほぼ同じである。つまり、金持ちが先進国並みに税金を払ってさえいれば、消費税の増税は必要なかったということなのである」

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

「日本は金持ちの税金が高い」は嘘! 医者、大企業、投資家に有利な税制のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。富裕層小石川シンイチ税金の記事ならリテラへ。

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄