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松坂桃李が玉川徹に『新聞記者』主演の理由を語る! 安倍政権の暗部暴く映画出演「怖くなかったか」の質問に松坂は明快な意思表明
松坂桃李が出演した映画『新聞記者』
安倍政権を批判する内容でありながら、日本アカデミー賞6部門にノミネートされた望月衣塑子記者原案の映画『新聞記者』。来週の発表が楽しみだが、そんななか、主演の松坂桃李がテレビではじめて、この映画について語った。しかも、この映画が政権の暗部に踏み込んでいることについても、逃げずに正面から答えた。
2月28日放送『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)でのことだ。松坂は3月1日放送のテレビ朝日のドラマに出演するためその番宣で出演。コメンテーターの玉川徹がインタビューしたのだが、玉川が最初に切り出したのが、映画『新聞記者』についてだった。
「以前から気になっていたこと、聞きたい話として。『新聞記者』主演されましたよね」
たしかに、玉川が松坂にインタビューするなら、この映画出演について聞こうとするだろう。
前述したように『新聞記者』はここ数年のあいだに安倍政権下で起こった数々の事件を総ざらいし、あらためてこの国の権力の暗部を暴き出した映画だった。森友公文書改ざん問題での近畿財務局職員の自殺や、加計学園問題に絡んだ前川喜平・元文科事務次官に仕掛けられた官邸による謀略、伊藤詩織さんによる性暴力告発などをモチーフとするエピソードがいくつも描かれた。
なかでも衝撃的だったのが、官邸と一体化した内閣情報調査室の暗躍ぶりを描いたことだ。政権の方針に反抗的な官僚のスキャンダルをマスコミ関係者にリークしたり、“総理べったり記者”による性暴力と逮捕もみ消しを告発した女性のバッシング情報をネットに投下したり、といったマスコミやSNS利用した工作は、北村滋内閣情報官が率いる内閣情報調査室の謀略そのものだった。
そして、この内閣情報調査室のエリート官僚を演じたのが、松坂桃李だった。上司からの命令と、官僚としての理想や良心との狭間で葛藤・苦悩するエリート官僚を好演したのはもちろん、松坂が出演したことで一気にポピュラリティが高まった。
しかし、安倍政権やネトウヨによる表現への圧力が高まっている状況下で、こうした政権批判に踏み込む映画に出演するのは大きなリスクだ。実際、もうひとりの主人公である女性新聞記者は『サニー 永遠の仲間たち』などで知られる韓国の実力派女優・シム・ウンギョンが務めたが、当初日本の女優にオファーしたが断られるなど、キャスティングが難航したとの報道もあった(結果的には、シム・ウンギョンが出演したことによって、よりスケールの大きな映画になっていたが)。
だが、松坂は今をときめく人気俳優でありながら、この“危険な”映画『新聞記者』に出演するという勇気ある決断をした。それはなぜなのか。そして、いま、この映画についてどう考えているのか、聞いてみたいと考えるのは当然だろう。
松坂「番宣はほとんどできなかった(笑)」に玉川が「それが忖度」
しかし、問題は松坂だ。テレビではさすがにハレーションが大きすぎるため、『新聞記者』について触れられたくない、そう考えても不思議はない。しかし松坂はまったくそんなそぶりは見せなかった。
松坂は玉川から最初に『新聞記者』のことを切り出されたときも「ああ、はいはい」と当然のように反応し、次に、玉川が「内調(内閣情報調査室)をやったわけでしょ」とつっこむととこう応じた。
「やりました(笑)、やりましたね」。
そして、玉川が「あの映画は、いまの政権に対して、ある種ものを言うような形の脚本になっているわけですよね」と本題に踏み込んだのだが、松坂は、ウンウンと大きくうなずき、そのあと、こんなやりとりがかわされた。
玉川「ためらいとか、そういうのなかったのかなというのをちょっと」
松坂「まわりからあまりにも言われるので、「すごいね」「よく決めたね、出ること」と。そんなになのか?と思いながら」
玉川「圧力はないにしても、なんらかの形で社会的な信用落とすようなことをされたりするっていうのは、そこは怖くはなかった?」
しかし、「ためらいはなかったか」「怖くなかったか」という玉川の問いに松坂はきっぱりとこう答えた。
「この作品を通してちゃんと伝えたいなという思いがあったので出ました。まわりの情報などに惑わされずにちゃんと自分の目で自分の判断で選択できる意思を持とうよっていうメッセージ性を込めた作品なので」
しかも、松坂は「ただ!」と少し声を強くして、茶目っ気たっぷりに、こう付け加えた。
「あのお、番宣にいたってはほとんどできなかったです(笑)」
そして、これを聞いた玉川が「それが忖度なんですよ」と一刀両断すると、松坂も「ていうことなんですかね」と応じたのだ。
松坂桃李「自分の目で自分の判断で選択できる意思を持とうよ」
実際、公開前後、『新聞記者』の宣伝活動には大きな障害があった。『新聞記者』がテレビのプロモーションをことごとく拒否されているという問題だ。周知のように、人気俳優が出演する映画が公開される際は、その俳優たちがテレビのバラエティに出演し、映画の宣伝を行うのがパターンになっている。しかし、テレビで『新聞記者』が取り上げられることはまったくなかった。
松坂自身は公開前後にバラエティ番組に出演していたが、同時期に公開された別の映画の宣伝はしても『新聞記者』について触れることはなかった。
「宣伝はほとんどできなかった」という今回の松坂の発言を聞くと、やはりテレビでは、政権忖度による自粛があったということだろう。
それにしても、今回の『モーニングショー』インタビューで改めて感じたのは、松坂桃李の強さと聡明さだ。
『新聞記者』が「日刊スポーツ映画大賞」作品賞受賞の壇上でも、松坂は、「『これが公開されたら、僕らいないかもね』とプロデューサーに言われていました。無事公開できればいいなという思いが強かった」と語っており、この作品のリスクを覚悟して出演していたことは明らかだった。
しかし、松坂は今回の玉川のインタビューで、『新聞記者』に出演した理由として、こう語っていたのだ。
「この作品を通してちゃんと伝えたいなという思いがあったので出ました。まわりの情報などに惑わされずにちゃんと自分の目で自分の判断で選択できる意思を持とうよっていうメッセージ性を込めた作品なので」
権力者から直接的な命令はなくともその意向を忖度し、同調圧力のもと民衆同士も空気を読み合い監視し合う、そういう緩やかな全体主義ともいえる安倍政権下の日本。そこで奪われているものは何か、それを打破するために必要なものは何か。松坂はそれが「自分の目で自分の判断で選択できる意思」だと考え、まさにそのことを表現した映画に「自分の判断で」出演したのだ。
その結果、『新聞記者』はポピュラリティを獲得し、硬派な映画としては異例のヒットをした。
冒頭で触れたように、3月6日最優秀賞などが発表となる第43回日本アカデミー賞で『新聞記者』は、松坂が主演男優賞にノミネートされているのをはじめ、作品賞、監督賞、主演女優賞といった主要部門ふくめ、6部門にノミネートされ、台風の目となっている。アカデミー賞の授賞式は地上波で放送されるが、それこそ『新聞記者』がテレビで大きく扱われるのは初めてなのではないか。賞の行方とともに、授賞式で松坂桃李らが何を語るのか。あらためて注目したい。
(本田コッペ)
最終更新:2020.03.01 01:48
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