『報ステ』がいよいよヤバい! 世耕弘成へのお詫びのあとCP更迭、ベテランスタッフ切り、安倍シンパの笹川財団研究員が出演

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『報道ステーション』公式Facebookより


 前身である『ニュースステーション』から数えて今年で35年目を迎えるテレビ朝日の夜のニュース番組『報道ステーション』が、いよいよ岐路に立たされている。古舘伊知郎の番組降板以降、政権批判色が徐々に薄れていった同番組だが、最近、また異変が感じられるようになっているからだ。

 顕著なのが「桜を見る会」問題をめぐる報道だ。2月3日には国会で安倍首相が「前夜祭」が政治資金収支報告書に記載されていない問題について「私と同じ形式なら問題ない」と脱法行為にお墨付きを与えたほか、茂木敏充外相が閣僚席からヤジを飛ばしたり、衆院予算委員会の棚橋泰文委員長の安倍首相びいきの議事進行によって大荒れとなったが、同夜の番組では国会の話題自体を取り上げずじまい。

 同様に、5日には安倍首相が「(安倍事務所がホテル側と)キャンセルが発生しても問題ないという契約をしている」という以前の答弁を「事務所はホテルと合意し、仲介しただけ」と修正したが、やはり番組では取り上げられなかった。

 もちろん、いまのところ、政権追及がゼロにはなったわけではないが、明らかに少なくなっているし、取り上げるタイミングも遅くなっている。

 典型的なのが、検事長人事の問題だ。安倍政権はこの2月に退官が予定されていた検察ナンバー2で、これまで数々の安倍政権の疑惑を潰し 「官邸の代理人」と呼ばれてきた黒川弘務・東京高検検事長の定年を半年間、延長することを1月31日に閣議決定。この前例のない人事には検察庁法違反の疑いが指摘されている。以前の『報道ステーション』なら真っ先に取り上げ、徹底的に批判したはずだ。ところが、ライバル局の『news23』(TBS)がこの問題をしっかり報じた一方、『報道ステーション』はなかなか取りあげようとせず、結局、10日に立憲民主党・山尾志桜里議員が今回の定年延長が国家公務員法の特例規定にかんする過去の政府見解と矛盾することを指摘、その違法性を明らかにしたことで、ようやく初めて報道した。

 また、コメンテーターにも変化が起こっている。月〜木曜日のコメンテーターを担当していた後藤謙次氏が腰の手術を理由に昨年12月12日の放送以来、番組を休んでいるのだが、じつは前述した国会での安倍首相の脱法容認発言が飛び出した3日にコメンテーターとして登場したのは、笹川平和財団上級研究員の渡部恒雄氏だった。

 渡部氏は2015年の安保法制をめぐって参院地方公聴会で賛成の立場で意見陳述をおこなうなど、安倍政権の安全保障政策をバックアップしてきた人物であり、そもそも笹川平和財団は名誉会長を務める笹川陽平氏は安倍首相とゴルフや会食をおこなう仲にある。さらに、安倍首相がアメリカの笹川平和財団で講演したことの見返りに官邸が笹川平和財団に対して元TBS記者・山口敬之氏をアメリカのシンクタンクに派遣するよう求めていたという内部告発が伊藤詩織さんに寄せられ、それを伊藤さんが昨年末におこなわれた外国特派員協会の記者会見であきらかにしている。「デイリー新潮」によると、笹川平和財団は山口氏のシンクタンク就職のために約466万円の経費を捻出したことを認めているという。

 安倍政権寄りのコメンテーターを登場させ、「桜を見る会」にかんする安倍首相の驚愕答弁を取り上げず、安倍政権の強権性を象徴する官邸の人事介入問題にはなかなかふれない──その一方で、沢尻エリカに執行猶予付き有罪判決が下されたことや、年末には『M-1グランプリ2019』で優勝したミルクボーイが大阪で凱旋公演をおこなったことなどをわざわざ取り上げるなど、ワイドショー化に拍車がかかっているのだ。

 そして、こうした政権批判の弱まりとワイドショー化へのシフトチェンジの背景にあるのは、早河洋・テレ朝会長を筆頭にした『報ステ』リニューアルに向けた人事の影響だ。

世耕弘成参院幹事長の報道圧力に屈して「お詫び」、その直後に異常な人事が

『報ステ』は昨年12月11日の放送で、自民党の世耕弘成・参院幹事長に対して「お詫び」をおこなった。これは、前日10日の放送の「桜を見る会」問題を伝えるニュースのなかで会見でのコメントを「印象操作」して使用されたと世耕参院幹事長がツイートしたことを受けてのお詫びだった。当時、本サイトでもお伝えしたように(既報参照→https://lite-ra.com/2019/12/post-5140.html)、これは世耕氏の不当ないちゃもんをつけた報道圧力としか言いようのないものだったのだが、テレ朝上層部は簡単に屈し、『報ステ』に「お詫び」をさせてしまったのだ。

 だが、異常だったのはこのあと。世耕氏に「お詫び」した9日後である昨年12月20日、世耕氏のVTRを担当したデスクの経済部への異動が発表されたのだが、同時に、今年4月に鈴木大介チーフプロデューサー(CP)と筆頭デスクが交代する旨も発表されたのだ。

 さらに、問題はこれだけではない。同じ昨年12月20日には、社員スタッフ5人の1月1日付での異動と、社外スタッフ約10人に対しても3月いっぱいでの契約打ち切りが宣告されたのだ。

 この約10人の社外スタッフはニュース班のディレクターやデスクらで、10年以上も番組を支えてきたベテランたちだ。そんな『報ステ』の中心とも言えるスタッフたちに、唐突にクビを宣告する──。タイミングを考えても、テレ朝上層部が世耕氏のクレームに乗じて強行したとしか考えられないだろう。

 無論、ベテラン切りに着手したことからも、早河会長をはじめとする上層部の狙いは、政権批判封じにあることは明白だ。

 そもそも安倍首相に近い早河会長は、政権批判を封じ込めようと『報ステ』に2018年7月に自身の子飼いである桐永洋氏をCPとして送り込んだ。早河会長の期待通り、実際に桐永氏はCPに就任するや政権批判や原発報道を極端に減らしてスポーツなどをメインに据え、さらには小川彩佳を番組から追放し、早河会長お気に入りの徳永有美アナをMCに起用、金曜日にいたっては安倍応援団の野村修也氏をコメンテーターに起用するなど、『報ステ』を骨抜きにしてしまった。

 しかし、本サイトがいち早くスクープしたように、その桐永CPは昨年8月末、女性アナウンサーやスタッフへのセクハラが問題となりCPを解任。その後任である鈴木CPもたったの7カ月で更迭となってしまったわけだが、重要なのは社外スタッフへの“戦力外通告”のほうだ。

政権批判を抑え込むため長年、番組を支えてきた10人の社外スタッフを首切り

 実際、『報ステ』の人事問題を取り上げた「週刊文春」(文藝春秋)1月2日/9日号では、早河会長が周囲に漏らしているというこんな言葉を報じている。

「古舘(伊知郎)時代からの問題児がたくさんいるからなあ」

 今回、契約打ち切りを言い渡されたベテランたちは、臆さず政権批判をつづけてきたスタッフだ。実際、2015年にコメンテーターを務めていた古賀茂明氏の「I am not ABE」発言によって官邸から直接抗議を受け、その後、番組統括の女性チーフプロデューサーが更迭されたことをはじめ、古舘の降板後も前述したように『報ステ』はさまざまな圧力に晒されてきた。だが、そんななかでも、政権への批判が消えてしまうという状況には陥らなかった。現に、取り上げる回数は減ったとはいえ、いまも国会での安倍首相の無責任答弁など、政権批判につながる話題をまったく伝えていないというわけではない。ようするに、上層部の厳しい締め付けのなかでも伝えるべきことは伝えなければいけないと現場で奮闘しているスタッフは少なからずいる、ということだ。

 だが、そうして長年に渡って番組の支柱を担ってきたベテランの社外スタッフたちを、ついに契約打ち切りにしてしまおうというのだ。しかも、これによって「政権に批判的な取り上げ方をすると、自分も契約打ち切りにあうかもしれない」という萎縮が広がることを上層部は目論んでいるのだろう。

 また、これだけでは飽き足らず、早河会長はさらに政権批判を抑え込むため、今年7月の定期異動でもスタッフを入れ替えるつもりだといい、「報ステのカラーを事なかれ路線に塗り替える意向」なのだという(前出「週刊文春」より)。

 しかも、こうした早河会長の方針は、すでに安倍官邸にも伝わっているふしもある。というのも、世耕氏のクレーム問題が起こったばかりだったというのに、今年、安倍首相がテレビの新年を迎えての単独インタビューに応じたのは、テレ朝をキー局とするニュース系列・ANNだったからだ。

 報道機関のトップが時の総理大臣と会食をおこなうなど深い関係が取り沙汰されること自体があるまじきことだが、その上、政権の顔色伺いのために歴史ある報道番組を潰し、それを支えてきたスタッフを派遣切りしようとしている現実は、さまざまな意味で重大な問題をはらんでいる。今回の契約打ち切り問題に対して、契約終了通知の撤回を求めているメディア関連労組「日本マスコミ文化情報労組会議」が13日に緊急院内集会を衆院第一議員会館でおこなう予定だが、本サイトでは今後もこの問題についてお伝えしていくつもりだ。

最終更新:2020.02.11 08:49

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