横田一「ニッポン抑圧と腐敗の現場」52

安倍首相「サンゴは移した」の嘘に琉球新報編集局長が「民主主義国家の総理としてあるまじき行為」と痛烈批判

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『美しい国へ』(文藝春秋)を出版した安倍首相率いる“国土破壊違法集団”のような政権が、美しい辺野古の海をぶち壊しにする違法な土砂投入によるイメージダウンを緩和すべく、“現代版大本営”のようなNHKから“サンゴ移植フェイク発言”を全国の視聴者に垂れ流した。まるで環境負荷抑制に努めているかのような印象操作をしたのに、全く非を認めようとしていないのだ。 

 1月6日放送の『日曜討論』(NHK)で飛び出した自身の“サンゴ移植フェイク発言”は大きな批判を浴びたが、しかし安倍首相は1月30日、各党代表質問に対して訂正も謝罪もしなかった。

「保護対象のサンゴについては移植し、国指定の天然記念物や絶滅危惧種に指定している貝類、甲殻類なども移動させる方針であると承知している」「南側の埋め立て海域に生息している保護対象のサンゴは移植したと聞いている」と答えるだけ、事実誤認であることを認めなかったのだ。

 1月27日の『日曜討論』でも安倍政権の謝罪拒否の姿勢は一貫していた。1月16日に野党合同の辺野古現地視察をした森ゆう子参院議員(自由党幹事長)が、環境負荷の大きい赤土を含んだ「土砂投入問題」や大規模な地盤改良工事が必要となる「軟弱地盤問題」に加えて、「サンゴは移していませんから。総理の日曜討論での発言は間違いです」と指摘した。しかし萩生田光一自民党幹事長代行は、次のように否定したのだ。

「たびたびサンゴの総理の日曜討論での発言が指摘をされているのですが、総理は辺野古の大きな意味で辺野古一体のことを『あそこ』と指摘をしたのでありまして、この土の入っている映像のところは、環境省が定めるレッドブックに規定されている希少サンゴは存在しなかった。それ以外の場所については、移植を進めております。これは事実でありますので、この際、申し上げておきたいと思います」

 これに対して小池晃書記局長(共産党)がすぐに異論を唱えた。

「総理は、土砂投入している『あそこのサンゴを移した』と言ったのですから、率直に『間違っていました』と言うべきですよ。しかも、7万4千群体のうち、9群体しか(移植を)やっていない。そう言うから不信感が広がる」

 安倍首相も自民党幹部も非を認めようとしないので、問題の発言を忠実に再現してみることにしよう。  

「2019年 政治はどう動く」と銘打った1月6日放送の『日曜討論』は、与野党議員が討論する通常の形式ではなく、9党党首への単独インタビューを合体する形で、放送時間も1時間42分と長めだったが、冒頭の安倍首相インタビューは30分弱で、辺野古問題については約2分半にわたって話し続けた。

 安倍首相はまず辺野古新基地が世界一危険な普天間基地の危険性除去のための代替基地と強調。そしてスタジオのスクリーンには「住宅地に隣接する普天間基地」に続いて「住宅の上を飛ぶオスプレイ」が映し出された後、「辺野古新基地予定地への土砂投入」の映像が流れたのを受けて安倍首相は、次のような環境負担抑制をアピールしたのだ。

「いま、土砂が投入されている映像がございましたが、土砂を投入していくにあたってですね、あそこのサンゴについては、これは移しております。また、絶滅危惧種が砂浜に存在していたのですが、これは砂をさらってですね、これもしっかりと別の浜に移していくという環境の負担をなるべく抑える努力もしながら、(埋立てを)行っているということであります」

 土砂投入映像を見た後で安倍首相が「土砂が投入されている映像」と触れた後、「土砂を投入していくにあたって、あそこのサンゴについては移しています」と述べたのだから、平均的な視聴者は「土砂投入エリアのサンゴを移植した」と受け取るに違いない。萩生田氏の主張するように「辺野古の大きな意味で辺野古一体のことを『あそこ』と指摘」と理解する人は皆無に等しいのだ。

安倍首相、防衛省、NHKは「サンゴは移した」発言の嘘を認め事実を説明すべき

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昨年の自民党大会での安倍首相(撮影・横田一)

 このことは、1月16日の辺野古現地視察の後、那覇市内で開かれた野党合同ヒアリングでも防衛官僚が「あそこ」が意味するのは土砂投入エリアであることを認めていた。ヒアリング後の記者会見で、赤嶺政賢衆院議員(共産党、沖縄1区)から次のような総括的な発言が出たのはこのためだ。

「首相が日曜討論で『あそこのサンゴは移植した』というのは全くの嘘とデタラメで、(ヒアリングで説明した)防衛官僚も『あれは埋立エリア2の1のところだ』と仰っていましたが、『(埋立エリア)2の1』は防衛省においても移植対象のサンゴはなかったわけですから、『サンゴを移植したのは嘘だ』と。嘘を言わせたと。訂正をするべきだ」

 そこで質疑応答に入ったところで、「赤嶺先生が仰った『安倍総理の事実誤認のフェイク発言』について、事実を曲げて放送した放送法違反にも当たると思いますので、NHKが(安倍首相発言についての)訂正放送を流すか、『そう(事実誤認)ではない』というのなら安倍総理を囲んだ討論会で反論するか、あるいは国会で議論するなどの対応が必要だと思うのですが、その点はいかがでしょうか」と訊くと、赤嶺議員はこう答えた。

「フェイクですから安倍首相が『フェイクを発言した』ということをきちんと認めさせる。訂正させることをまず最初にやりたい。その上で、NHKに対しても明らかな事実を曲げた発言をそのまま放送した責任については問うていきたい」

 続いて川内博史衆院議員(立憲民主党)は、安倍首相発言が文書に基づくものではなく、口頭説明の記憶に基づくものだったと指摘した。

「今日のヒアリングで防衛省は『(サンゴを含む)底生生物について総理レクした資料はない』『口頭でレクをする時にサンゴについて触れることはあったと思います』と言ったのです。総理のあの発言は目茶目茶いい加減な発言だということなのです。根拠なく、総理がテレビであのような発言をする。その総理自身の総理としての発言の本意というものを確認する必要がある。『何で、そんないい加減なことを言うのか』ということだと思います」

琉球新報・編集局長「民意を事実誤認で誘導するのは、民主主義国家の総理としてあるまじき行為」

 しかし『日曜討論』や通常国会代表質問で野党が追及しても安倍政権は、いまだに事実誤認であることさえ認めていない。「沖縄県知事選に関する情報のファクトチェック報道」で本年度の「第23回新聞労連ジャーナリズム大賞」を受賞した琉球新報の普久原均編集局長は、安倍首相発言についてこう話す。

「安倍首相が事実誤認のフェイク発言をしたのは、国民に誤った事実認識を意図的に刷り込むのが目的だったのではないか。“確信犯”だったのではないか。それは、民主主義の社会としていかがなものかと思う。民主主義社会は民意に基づいて動く。その民意を事実誤認で誘導しようとするのはあるまじきことだと思う。国民にありのままの事実を伝えて、事実に基づいた判断を仰ぐべきであって、意図的かどうかは断定できないが、明らかに事実と異なることを国民の意識に刷り込んだ上で、判断を仰ごうとするのは、民主主義の手法としても完全に間違っている」
「事実とは異なるプロガンダ(政治的意図を持つ宣伝)で世論を誘導することが横行する独裁国家であるならいざ知らず、民主主義国家の総理としてはあるまじき行為だと思っています」

 安倍首相サンゴ移植発言に対して琉球新報は2日後の1月8日、「事実を誤認して発言」とすぐに指摘。翌9日付の社説でも「首相サンゴ移植発言 フェイク発信許されない」と批判した。新聞労連ジャーナリズム大賞を受賞した「沖縄県知事選に関する情報のファクトチェック報道」に関わった琉球新報の滝本匠東京報道部長(県知事選取材班キャップ)はこう話す。

「沖縄県知事選でファクトチェックの記事を出してきたことが、事実誤認と指摘する従来よりも踏み込んだ書き方をすることができた」

 ちなみに琉球新報社編集局は『これだけは知っておきたい 沖縄フェイク(偽)の見破り方』(高文研)も出版。「県知事選で新しいことをやろう」と提案したフェイクニュース検証の産みの親といえる普久原均編集局長は、前書きで「われわれは、愚直に根気強く、虚構を一つひとつ覆したいと考えている」と記していた。
 
 安倍首相ら政権トップが平然とフェイク発言を繰り返し、その非を認めない今、ファクトチェックの重要性は増すばかりなのだ。

最終更新:2019.02.05 07:29

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