国連も「組み体操」の危険性を指摘! 重大事故多発もなぜ放置? 安倍政権の復古的教育政策との親和性

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組み体操に「うるうる」…(義家弘介公式HPより)


 小中学校などの運動会で行われている組み体操について、国際連合の「子どもの権利条約」委員会が審査対象とすることがわかった。

 本サイトでもこれまで取り上げてきているが、組み体操については日本国内でも以前から危険性が指摘し続けられてきた。

 組み体操は事故が頻発している競技で、独立行政法人日本スポーツ振興センターがまとめた「体育的行事における事故防止事例集」によれば、2015年度には組み体操が原因の事故が小学校だけで5879件も報告されており、中学校、高等学校も合わせると7858件にもおよぶという。

 なかには取り返しのつかない事故が起きた事例もあり、同調査報告書によれば、1969年以降、9件もの死亡事故が報告されている。

 2016年には広島県の中学校で、生徒が3段に重なる移動式ピラミッドの2段目にいた男子生徒が運動会の2日後に脳内出血のため死亡する事故も起きている。落下するとき後頭部に強い衝撃が加わったのがその要因と考えられ、遺族は「事故を未然に防ぐ安全対策を講じていなかった」として学校側を相手どり、約9600万円の損害賠償を求める裁判を起こしている。

 こういった実例からも組み体操の危険性は明らかだが、それにも関わらず、組み体操は学校の教育現場から姿を消すどころか、むしろ巨大化の一途をたどっている。

 現在では、157名が参加する10段のピラミッドがつくられるケースもあり、2015年には大阪市の中学校で、校舎の2階よりも高くなったピラミッドが崩壊し、男子生徒1人が右腕を骨折する大けがを負ったほか、5人の生徒も打撲などのけがを負った。

 カルロス・ゴーン氏逮捕で浮き彫りになった「中世並みの司法制度」や、「現代の奴隷制度」とも指摘された外国人技能実習制度の問題など、ここ最近、日本の人権意識が国際社会から問題視されるケースは多いが、以上あげてきたようなデータからもわかる通り、子どもの生命にも関わる明らかに問題のある組み体操が、なぜ国連に指摘されるまで存続し続けているのか。

 そもそも、子どもの権利条約自体、日本は批准するまでに非常に時間がかかり、アメリカを除いた先進国のなかではもっとも遅い158番目の批准であった。また、里親制度や特別養子縁組の取り組みが不足していることや、児童養護施設において虐待が広く行われていることなどを理由に、子どもの権利委員会から勧告を受けたこともある。

 この国において子どもの人権をめぐる状況は問題を抱えているのだが、それにしても、子どもたちを命の危険に晒す組み体操が続けられてきた背景には、にわかには信じがたい、驚くべき理由がある。

 2018年1月30日放送の『NEWS23』(TBS)で名古屋大学大学院の内田良准教授はこのように語っている。

「組み体操に対する根強い期待というかですね、『感動するからいいじゃないか』みたいな。『来年はもっと盛り上げよう』という、そういうかたちで組み体操は巨大化してきたと」

 感動するからいいじゃないか。組み体操存続の背景には大人による身勝手な欲望があったわけだ。

 さらに、この危険な組み体操を後押ししているのが、安倍政権の教育政策との親和性の高さだ。

義家弘介・元文科副大臣は危険な組み体操に「うるうるきた」と擁護

 象徴的なのが、2016年1月29日付東京新聞の取材に対し、義家弘介文科副大臣(当時)が放った発言である。

 義家氏は「組み体操はかけがえのない教育活動で、悪いことではない」「危ないのは組み体操だけではない。何件だから危ない、と線引きすることには慎重な対応が必要」「事故が起こって問題になったからと上から目線でずばっと何段と切るのは、指導上は不幸なこと」「事故が起きているのは組み体操だけでない。柔道、剣道などあらゆるところに規制を出さなければいけなくなり不健全」などとして、すでに十分過ぎるほど危険性を指摘されている組み体操を徹底的に擁護したうえで、こんな戯言まで述べたのだ。

「(組体操は)自分も小中学校で行ったし、小六の息子も去年やった。五~六段の組み体操で、息子は負荷がかかる位置にいて背中の筋を壊したが、誇らしげだった。全校生徒が羨望のまなざしで見る中で、「ここまで大きくなった、見事だ」と私自身がうるうるきた」

 自分を犠牲にしてでも他に奉仕することを強い、それに美しさを見出す組み体操をめぐる彼らの思考回路は、「国のために“個”は捨てろ」と全体主義的な価値観を国民に強要させようとする安倍政権の思想と完全に合致する。

 教育勅語を再評価する動きにも共通するが、1958年に岸信介内閣が「道徳」授業を復活させるなど、右派による教育政策におけるバックラッシュの動きは長くあり段階的に進んできたものではある。しかし、「教育勅語」再評価の動きや「道徳」教科化などに象徴的なように、近年の安倍政権による戦前回帰・復古的な教育政策はやはり際立っているだろう。

 前出の内田良氏は、著書『教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」』(光文社新書)のなかで、組み体操は戦後教育のなかでいったんは廃れていたものであったと説明している。

 戦後まもなくの時期には〈小中高すべての学習指導要領に記載があ〉ったものの、死亡や重度障害の事例が後を絶たず訴訟に発展することもあり、〈おそらく組体操の文化は少しずつ、衰退していったものと推測される〉というのだ。実際、現在の30代・40代は子ども時代に、現代のような巨大な組み体操はやったことがないという人のほうが多いだろう。

 しかし、それが2000年代に入ってから復活した。内田氏はこのように綴る。

〈組体操において、子どもたちは痛みや恐怖を感じる。だが、それは他者のためであり、そのようにして皆で相互に耐えることで1つのものをつくりあげていくという教育的物語が、そこにある〉

「伝統をつなごう!」や「我慢し、努力し、一生懸命な姿が感動を生む!」といった安倍政権の復古的価値観が生み出した負の産物が、いまようやく国際社会から判断をくだされようとしている。安倍政権はこの状況を真摯に受け止めるべきだ。

最終更新:2019.01.18 11:45

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