入管が「難民を解放せよ」落書きに「ひどくないですか」と非難ツイート! ひどいのは入管の人権無視のほうだ

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問題の入管公式Twitter


 先週、法務省による失踪した外国人技能実習生の聴取票「データ捏造」問題が発覚した出入国管理法改正案(入管法)だが、そんな矢先、法務省の入国管理局が唖然とするような態度を露わにした。

 昨日、東京入国管理局の公式Twitterアカウントが、こんな投稿をした。

〈~落書きは止めましょう~
 11月19日早朝,港南大橋歩道上にて。
 表現の自由は重要ですが,公共物です。 少しひどくはないですか。。。〉

 そして、歩道や歩道橋などに「FREE REFUGEES」(難民を解放せよ)「REFUGEES WELCOME」(難民を歓迎する)とスプレーで書かれた写真が一緒に投稿されていたのだ。

 入管をめぐっては収容期間の長期化など深刻な人権侵害が指摘されつづけており、収容されている人のなかには難民申請者も数多い。「FREE REFUGEES」という落書きには、人権も無視して難民申請者を強制収容、拘束しつづける入管に対する抗議のメッセージが込められていると推測されるが、それを当の入管は〈少しひどくはないですか〉などと被害者ヅラで非難したのだ。

 言っておくが、東京入管の公式Twitterがこれまで路上の落書きを取り上げて「ひどい」と取り上げたことは一度もない。その落書きが「難民を解放せよ」というメッセージだったからこそ「ひどくないですか」と取り上げたことは明白だ。

 しかも、東京入管はこの投稿を「固定ツイート」にしてトップに表示されるようにしており、批判が殺到してもなお、21日17時現在、いまだに謝罪はおろか削除もせずに固定ツイートにしたままだ。

 まったく、「ひどい」のはどっちだ。今年4月、茨城県牛久市にある東日本入国管理センターでは、難民認定申請中に在留資格を失ったことで収容されたインド人男性のディパク・クマルさんが、9カ月にもわたる長期収容の末、自殺。その後、入管施設では自殺や自殺未遂が相次ぎ、東京入管の収容施設でもわかっているだけで3件の自殺未遂が発生している。

 こうして収容された人々を自殺に追い込んでいるのは、入管による人道的にありえない収容期間の長期化と、次々に報告されている収容者への虐待、暴力行為だ。

 たとえば、東日本入国管理センターでは昨年、体調不良を訴えていたベトナム人男性グエン・ザ・フンさんに診療を受けさせることなく放置し死亡させていたことが発覚。グエンさんが体調の悪化を訴えるものの職員は適切な対応をおこなわず、「痛い、痛い」と叫ぶグエンさんに職員は「静かにしろ」「うるさい」などと言い放ち、その後、くも膜下出血で死亡したという(「週刊金曜日」6月16日号Web記事)。

 また、東日本入管は収容者が使用するシャワー施設の脱衣所などに監視ビデオカメラを設置。これはあきらかに人権・プライバシーを侵害する行為だが、その上、今年1〜6月のあいだに収容者に支給する食事への異物混入が80件も発生したことが明らかとなった。

 さらに、2011年8月には、東日本入管で中国籍の男性に対して職員が「外国人をいじめるのが楽しい」と暴言を浴びせ、それが発覚すると入管センターが謝罪するという事件も起こっている。

 このような、入管における収容者への人権を蔑ろにした行為は常態化しており、実際、国連の拷問禁止委員会や人権理事会からは何度も改善の勧告を受けている。だが、一向に改善されることはなかった。

 SNS上では「落書きはダメ」「落書きは犯罪」などという道徳ファシズム的な声もあるが、事の軽重を見失っているとしか言いようがない。落書きは消せば済むが、暴力や長期収容によって絶望へと突き落とした結果、失われてしまった命は、もう取り戻せない。そもそも国家による人権侵害という人命にもかかわる重大事態と、それに抗議するたかが落書きと、いったいどちらが危険かつ非難されるべきか、明白だろう。しかし当の東京入管は、そうした重大な国家的犯罪をおかしていることをまったく自覚していない。だから「難民を解放せよ」という深刻なメッセージに対し、〈少しひどくないですか〉などという無神経かつ被害者ぶったツイートができるのだ。

入管の人権無視を放置したまま、入管法改正を強行成立させていいのか

 いや、それどころか、東京入管はつい最近も、自分たちが国際的に非難されている非人道的な行為を棚に上げ、安倍政権が今国会での成立を目論んでいる入管法改正案のための「PR」に勤しんだばかりだ。

 10月6日にフジテレビが『密着24時! タイキョの瞬間 出て行ってもらいます!』というタイトルで法務省・入国管理局の入国警備官などに密着した番組を放送した。この番組では、技能実習生として来日していたベトナム人女性について、なぜ不法滞在に至ったのかといった事情やバックグラウンドにまったく触れることはなく、「技能実習生の無許可の資格外活動は不法就労」だとして断罪。ナレーションで何度も「追い出す」「出て行ってもらいます」と繰り返した。さらに、同月10日にもテレビ東京が入管の警備官たちの捜査などに密着した『密着! ガサ入れ』なる番組を放送した。

 そして、これらの番組は、ともに放送前から東京入管の公式Twitterアカウントが「現場で奮闘する入国警備官と入国審査官の姿をぜひご覧下さい!」などと番組を紹介、番組ホームページのURLを貼り付けてPRまでおこなったのだ。

 東京入管が全面協力した公認のPR番組を連続して垂れ流すことで、入管法改正案での「外国人の監視強化」をアピールする──。安倍首相はこの法案を成立させ、来年4月には施行させるつもりだが、もちろん、人権無視の入管の問題はいまなお放置したままだ。

 しかし、このような状況で同法案を成立させることなどできないだろう。法務省が隠しつづけた失踪した外国人技能実習生たちの聴取票からは、最低賃金以下で過労死ラインの長時間労働を強いられた例や、暴力、セクハラ、いじめ、恫喝、送り出し機関への莫大な借金を抱えざるを得ない構造など、追い詰められた末に「逃げ出すしかなかった」実態があきらかになった。だが、そうした人びとに次に待ち受けているのが、入管の非人道的な扱いなのだ。

 失踪せざるを得なかった技能実習生たちや難民認定申請者を強制収容した挙げ句、人間扱いしない入管の“犯罪性”そのものが、いま問われなければいけない。

最終更新:2018.11.21 08:29

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