百田尚樹も拡散!「沖縄で基地反対派が女児を暴行」のデマが県知事選を前にゾンビのように復活

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デマを指摘する安田浩一の『沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』(朝日新聞出版)

 8月28日から、Twitterで「沖縄で女児が基地反対派から暴行された」という情報が拡散している。最初に言っておくが、これはデマだ。

 本サイトが確認した限りでは、プロフィール欄で「富国強兵こそ日本を発展させる道。反日を蹴散らそう」と自己紹介しているあるアカウントが、28日未明、以下のようなツイートを投稿したことが、拡散のきっかけとみられる。

〈沖縄で6歳の女の子が「なんでアメリカ人がこんなところにいるんだ」と基地反対派と見られる集団に声をかけられ複数の男たちに暴行されるという事件が起きました。〉

 このツイートには、出典を明記せぬまま新聞記事の画像が添付されていた。そこには「読谷 背景に反基地感情? ハーフ女児押し倒す」と題された記事が掲載されている。ツイートは31日21時現在、約3万5800もリツイートされており、短期間で一気に拡散されたことがわかる。

 著名人もこれにくいついた。たとえば作家の百田尚樹氏は、このツイートを引用して〈許せない!! 絶対に許せない!! 絶対に許せない!! 怒りではらわたが煮えくりかえりそうだ〉〈こんなことをやる人間に、平和を語る資格はない!! 基地反対派のクズども、この犯人を探して警察に引き渡せ!!〉と連投した。

 だが、百田氏が拡散するこの「沖縄で基地反対派が女児を暴行」なる情報は、本サイトが、3年以上も前に取材・検証し、明らかなデマであることを確定させている。愚劣な連中が性懲りも無くデマを拡散し続けるなら、こちらも改めてそのことをきちんと突きつけておく必要があるだろう。

 そもそも、例のツイートに添付された記事は、沖縄県石垣市に本社をおく地方紙「八重山日報」2015年4月3日付の記事だ。この記事は当時、極右政党・次世代の党に所属していた中丸啓元衆議院議員が、記事の画像とともに〈沖縄の基地反対派による女児暴行事件。大の大人が5人がかりで腹部を踏みつけるという鬼畜な犯行。絶対に許せない。沖縄県警よ、徹底的に取り締まれ!【拡散希望】〉とツイートするなどし、拡散された。

 ところが、その八重山日報の記事を読んでも、どこにも「基地反対派」が沖縄で女児に暴行を加えたとする証拠や根拠を示す記述は見当たらなかった。後述するが、根拠らしきものは唯一、手登根安則という人物が「米軍基地に対する怒りのはけ口がハーフの女の子に向けられたのかも知れない。平和運動の名のもとに事実上のヘイトスピーチが横行している実態がある」と憶測のコメントしていることだけだった。八重山日報はそれだけで「背景に反基地感情」なる見出しを立てていたのである。

 この時点ですでにフェイクのにおいがぷんぷんしていたが、本サイトは念のため、当時、「事件」が発生したとされる読谷村を管轄する嘉手納警察署に取材、さらに、これを報じた八重山日報に電話で直撃取材を行った。

 すると、嘉手納警察署は八重山日報が報じた「事件」の発生日から2週間が経っていた段階でも捜査をしておらず、署の担当者は「今日の時点(15年4月7日)ではまだ暴行の事実は確認できていません」と回答した。そもそも、事件にすらなっていなかったのだ。

 また、報道した当事者である八重山日報の関係者も、本サイトの取材に対して、犯行が基地反対派であるとする確たる根拠をなにひとつもっていないことを認め、こう語っていた。

「証言を聞いた女児も、まだ6歳ですから、中高生と大人の区別はつかなかった。ただ、その『5人』のなかのすくなくとも一人は、明らかに子供だったという話もあります」

 ちなみに、本サイトの取材に応じたこの八重山日報の関係者は、当人の立場に配慮し、記事内ではあえて細かい肩書を明記しなかったが、事件の取材や編集に直接、関わっていた人物だった。

基地反対運動を攻撃するデマで知られる手登根安則が八重山日報に

 いずれにしても、八重山日報がなんの根拠ももってないどころか、「(犯行)一人は明らかに子供」とする、基地反対派であることを否定する証言まで得ていたことが明らかになったのだ。

 さらに、八重山日報への取材では、もうひとつ決定的なことがわかった。それは、この報道が八重山日報の記事に「米軍基地に対する怒りのはけ口がハーフの女の子に向けられたのかも知れない」という憶測コメントを出していた手登根安則氏の“プロデュース”によるものだったことだ。

 手登根氏は沖縄で米軍基地反対運動をバッシングする“反・反基地運動家”として知られている人物。しかも、米軍基地反対運動に参加する人々は「日当」をもらっている等、事実無根のデマをたびたび拡散。例の『ニュース女子』による沖縄デマの回(2017年1月6日)にも出演している。

 その手登根氏が、Facebookに〈(友人の)下の6才の娘が、大人か子供か分からない5人位に囲まれ その内の一人に、押し倒され お腹を踏まれ アゴをつかまれ「アメリカ人が、こんな所に居るな」と言われたらしい…〉という投稿があるのを見つけ、母親にアプローチ。一緒に警察署へ行こうと持ちかけたという。そして、八重山日報に「警察に行くから取材に来て」とネタを持ち込んでいた。

 八重山日報側は当初、「基地反対派の犯行」の線で取材を進めたようだが、警察に取材しても、母親から話を聞いても、それを裏付ける話はまったく出てこない。そのため、しかたがなく手登根氏のコメントを使って、タイトルだけ「読谷 背景に反基地感情? ハーフ女児押し倒す」という、中身のない記事をつくった──。

 これが当時、本サイトが八重山日報関係者への取材によってつかんだ、報道の裏側の一部始終だった。

「リテラ以外の証拠を出せ」という百田尚樹に証拠を突きつける!

 ようするに、いま、Twitterで拡散されている〈沖縄で6歳の女の子が「なんでアメリカ人がこんなところにいるんだ」と 基地反対派と見られる集団に声をかけられ複数の男たちに暴行されるという事件が起きました〉なる情報は、本サイトによってとっくに事実無根のデマと確定されていたのである。

 実際、今回のデマ拡散に際しては、本サイトが2015年4月7日に公開した検証記事をもって事実無根を指摘する声も多く見られた。ところが、そうした追及に対して「ソースはリテラだけか」などと嘯く拡散者が少なくない。たとえば、一般ユーザーからリテラの記事を提示された百田尚樹氏はこんなツイートをぶっている。

〈3年前の記事についてツイートすると「それ、デマだよ」というリプライを大量にもらった。
私が「デマの証拠を教えて下さい」とお願いすると、ウソ捏造で有名な「リテラ」の記事を出してきた。それ以外のソースは一切なし!
しかもリテラも見出しは「デマ」となっているが、記事では否定していない。〉
〈デマの証拠を教えて下さい。
リテラの記事以外でね。
デマ絶対許さないなら、そこのところをよろしく!〉

 これまで散々デマをふりまき、『殉愛』裁判では名誉毀損まで確定した作家に「ウソ捏造」呼ばわりされるとは片腹痛いが、「リテラの記事以外でデマの証拠を出せ」というなら、出してあげよう。

 実はこの「沖縄で基地反対派が女児を暴行」デマについては、ジャーナリストの安田浩一氏も検証している。安田氏は2016年6月にノンフィクション『沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』(朝日新聞出版)を出版しているが、そのなかに、八重山日報の記事をめぐる記述があるのだ。

 安田氏は同書で、〈記事を注意深く読んでみたが、コメント以外に犯人が「基地反対派」であるといった情報は皆無だ〉と断じたあと、八重山日報の記事を書いた記者に電話で取材をした内容をこう書いている。

〈この記者によれば、事件の情報を同紙に持ち込んだのは、記事中にコメントを寄せている「沖縄教育オンブズマン協会会長」の手登根安則氏(52)だという。
 記者は手登根とともに女児の母親にも会い、「確度の高い情報」だと判断して記事を書いた。ただし犯人像については被害者が6歳ということもあり、少年なのか大人なのか、そのあたりは判然としないという。
 結局のところ「基地反対派」なる犯人像は、暴行時に犯人が叫んだとされる「何でアメリカ人がこんなところにいる」といった言葉と、手登根のコメント以外には存在しないこともわかった。
 正直、事件ものにしては、相当に脇が甘い記事だと思った。被害者の証言をもとに記事を書くことに異存はないが、犯人像を見出しで示唆した以上は単なる推論以上の確証があってしかるべきだし、しかも、これだけの反響を呼びながら、追撃の記事がまるでない。もちろん他紙の後追いもなかった。
 これでは一部から指摘されている通り「基地反対派のイメージダウンを狙ったデマゴギー」だと思われても仕方がない。〉

安田浩一の追及に発信源の手登根安則は「断定してない」と逃げの一手

 また、安田氏は「事件」から2カ月後に嘉手納警察署を訪れ、広報担当の副署長に話を聞いている。副署長は当惑した表情で「事件があったかどうかの確認ができなかった。いまは捜査はしていない」と語ったという。

 いずれも本サイトの報道を裏付けるものだが、さらに安田氏は手登根氏にも直撃している。手登根氏は「ネットユーザーがセンセーショナルに騒ぎすぎたきらいはある」と言って、「反基地の運動家が関与していると断言したわけではありません。ただ可能性として、そうした人間が関与した疑いもあるという見解を示しただけです」と述べたという。

 あまりに言い訳がましいが、結局のところ、安田氏の取材からも裏付けされているように、「基地反対派が女児を暴行」なる情報には根拠がまったくない。これが客観的事実だ。

 もっとも、筆者もまた、警察が事件化しなかったことをもって、何者かによる女児への暴行それ自体が存在しなかったと断言するつもりはさらさらない。しかし少なくとも、その「犯人」を「基地反対派」だとする客観的事実も合理的理由は皆無であって、ネトウヨたちによるミスリードは極めて悪質である。手登根氏が「疑いもあるという見解を示しただけ」と釈明したのが、その何よりの証左だろう。

  以上、本稿では、現在、Twitterで再燃している「沖縄で基地反対派が女児を暴行」という情報が、いかにデマであるかについて説明してきた。恐ろしいのは、こうしたデマが検証されてもなお、ゾンビのように復活して、ネット上で一人歩きしているという事実だ。

 2018年8月末というこのタイミングに、またぞろ、この基地反対運動をめぐるデマが息を吹き返した背景には、翁長雄志沖縄県知事の逝去と、新基地建設の是非が争点となる9月の沖縄県知事選が関係しているように思えてならない。冒頭に触れた今回のデマ拡散に火をつけたアカウントは、そのプロフィールや過去のツイートからも、あきらかにネット右翼的なユーザーだった。
 
 筆者は、3年前の検証記事の最後を、〈デマは戦中や終戦直後などの、社会的不安と混乱のなかで発生しやすいとされている。今やこの国は、戦中なみのメンタリティに覆い尽くされているのかもしれない〉と締めくくった。いまは、認識を改めなくてはならないかもしれない。

 デマは、単に社会の混乱時にのみ顕現するのではない。その裏側には特定の意図が潜んでいる。たとえ拡散者に悪意があろうがなかろうが、そのデマを増幅させるのは、人間の負の感情にほかならないからだ。だからこそ、こうして何度でも蘇るデマに対し、私たちは繰り返し反証し、徹底的に批判する必要がある。「真か偽か」はもちろんのこと、それ以上に、「善か悪か」を自問しなくてはならないだろう。

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