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強行採決許すな!「共謀罪は全ての人に萎縮をもたらす」周防正行、平野啓一郎、柳広司…表現者たちが猛反対の声
共謀罪に反対する周防監督(アルタミラピクチャーズ公式HPより)
自民党が今国会での強行成立を目論んでいる共謀罪法案。金田勝年法相がいまだかつて一度もまともに答弁ができていないような状態であるのに採決してしまうとは「数の力」による横暴以外のなにものでもないが、一方、日に日に共謀罪に反対する声は大きくなっている。とくに表現者から「絶対に反対」という強い発言が相次いでいるのだ。
本サイトではすでに、マンガ家の山本直樹氏やASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文氏、作家の浅田次郎氏らが共謀罪にNOと声をあげていることを伝えたが、同じように警鐘を鳴らす表現者はまだまだいる。
そのひとりが、ハリウッドでもリメイクされた『Shall we ダンス?』などで知られる映画監督の周防正行氏だ。周防監督は加瀬亮主演で刑事裁判の不条理を描いた『それでもボクはやってない』を監督したことから、「新時代の刑事司法制度特別部会」の委員にも選出。取り調べの可視化など刑事司法改革を訴えてきたが、今回の共謀罪にも猛反対している。
たとえば、5月12日に出演した『報道ステーション』(テレビ朝日)では、一般人は捜査対象にならないと無根拠に言い放つ金田法相の国会答弁のVTRを受けたスタジオトークで、周防監督は開口一番「一般の人も対象になります」と明言。すかさず富川悠太キャスターは「って言いたくなりますよね」と合いの手を入れたが、周防監督は「いや、言い切れます」と断言し、こうつづけた。
「ようするに共謀罪を立件しようと思えば、コミュニケーションを取り締まる以外にないんですよね。だから一般の人かどうかも、それは調べなきゃわからないことなわけで」
そして、番組では放送中に国会前で行われていた共謀罪に反対するデモの様子を中継。その映像を見ながら周防監督は、まさにこうしたデモが捜査対象になる危険性と活動の萎縮を指摘したのだ。
「たとえば安保法案のときもそうでしたけど、国会前のデモを『テロ行為だ』というふうに言った政治家もいるわけですよね。だからいま、ここにいる人たちが一般人なのかどうかという判断も、捜査機関の恣意的判断で(どうにでもなる)。ここに加わっていることで、自分が何か嫌疑をかけられ取り調べを受けるんではないかと思えば、この場所へも行かなくなるっていうのは、普通に考えればそうなるでしょう」
共謀罪の恐ろしさのひとつは、捜査機関の解釈ひとつでどうにでもできる、という点だ。周防監督はそれによって市民による政権批判が封じ込められること、ひいては表現にも影響を与えることを予見する。
〈政府は否定するだろうが、権力に都合の悪い主張をする人を立件する武器を手に入れることになる。時の政権に声を上げることがはばかられる社会になるだろう。表現をする立場には確実に影響が出る〉(朝日新聞4月19日付)
〈何が罪に当たるのかよく分からず、突然警察に「悪いことをしようとしただろう」と言われ、捜査されるかもしれない。「だったら何もしないほうがいい」という発想に陥りかねず、創作に携わる人はもちろん全ての人に萎縮をもたらす〉(東京新聞5月9日付)
さらに、安倍政権は“強制捜査の前には裁判所の令状審査があるから捜査権限の乱用はあり得ない”などと説明するが、周防監督は〈裁判官は人権を守る最後の砦ではなく、国家権力を守る最後の砦と化している〉(前出・朝日新聞)と喝破。政権が「監視社会にはならない」といくら説明しても、〈安倍政権は安全保障関連法案を成立させるために、憲法という国の最高法規の解釈までも変更したのだから〉(同前)、そんなものは信用に足らないと反論するのである。
作家・平野啓一郎は「いつ自分が関わるかわからない」
この周防監督と同じように、メディアで積極的に共謀罪批判を展開しているのが、作家の平野啓一郎氏だ。
平野氏といえば、デビュー作『日蝕』(新潮社)で第120回芥川賞を当時最年少で受賞、最近では、昨年発表した『マチネの終わりに』(毎日新聞出版)が大きな評判となり、『アメトーーク!』(テレ朝)の人気企画「読書芸人」では又吉直樹やオードリー・若林正恭もそろって大絶賛したことでも話題を集めた。
そんな平野氏は、共謀罪に「表現の自由を奪う」と反対している日本ペンクラブの抗議集会に参加。テレビやラジオなどのメディアにも出演して共謀罪の危険性を訴えているが、平野氏が警戒するのは、やはり「国民の萎縮」だ。
「日常のほんとうに細かなレベルで『これ言っちゃいけないんじゃないか』『こんなこと言うと、こんなことになるんじゃないか』というふうに萎縮して、それに適応するように先回りして先回りしてというふうに考えていくと、どんどん社会の言論活動、あるいは社会の活動そのものが萎縮していってしまいます」(RKBラジオ『櫻井浩二インサイト』4月20日放送)
そして平野氏は、創作活動を行う自分にとって共謀罪は無関係ではない、と述べる。
〈本には人と人とを結びつける作用がある。小説を書く時は色々な人に取材するし、ぼくの本が誰かの何かの原動力になることもある。それが政府に批判的な運動かもしれない。本を書く限り、いつ自分が関わるかわからない点に懸念を感じる〉(朝日新聞4月21日付)
さらに、安倍政権の乱暴さにも平野氏はこう言及する。
「安保法制のときもそうだったし今回も、ものすごく多くの犯罪にふれるような問題が含まれていて、ひとつひとつについて全部説明しなくちゃいけないんですね。だけど、とてもそんな余裕のないなかで法案が提出されていて、例によって首相も、たぶん官房長官も、『ていねいに説明しつづけていく』ときっと言うと思いますけど、1回もそれやったことはないですから、いままで。絶対にやらないと思います。だから、この法案はけっして通してはいけないと思っていますね」(前出『櫻井浩二インサイト』)
人気作家が新聞読者欄に投稿「早晩国民に牙をむく「悪法」になるのは火を見るより明らか」
また、平野氏と同じように共謀罪に声をあげた作家が、戦前の日本の諜報機関を描き、亀梨和也と伊勢谷友介、深田恭子出演で映画化もされた人気シリーズ『ジョーカー・ゲーム』で知られる推理作家の柳広司氏だ。
しかも、柳氏はなんと、朝日新聞の「声」欄に〈小説家・柳広司〉として投稿。そのなかで柳氏は治安維持法と共謀罪の類似点の多さについてふれ、歴史からの教訓を忘れてはいけないことを読者にこう促した。
〈治安維持法は、成立当初、政府も新聞各社も「この法律は一般人には適用されない」「抜くことはない伝家の宝刀」と明言していました。しかし、法律制定後の運用は事実上現場(警察)に丸投げされ、検挙率を上げるために多くの「一般人」が検挙され、取り調べの過程で殺されたり、心身に生涯癒えぬ傷を負わされたりしたことは周知の事実です。
この結果に対して、治安維持法を推進した政治家や官僚たちが責任を取ることは、ついにありませんでした〉
〈「共謀罪」は、治安維持法同様、必ずや現場に運用を丸投げされ、早晩国民に牙をむく「悪法」になるのは火を見るより明らかです〉──新聞へわざわざ投稿するほどに、柳氏が共謀罪に強い危機感を抱いていることがよくわかるが、ここまで表現者たちが共謀罪を危険視しているのは、それは“誰もがターゲットになる”法案であり、わたしたちの“内心”に踏み込むものだからにほかならない。
最後に、周防監督が前述した東京新聞で述べた言葉を紹介したい。
〈今われわれが手にしている自由を得るため、歴史上どれだけたくさんの人が闘ってきたのか考えてほしい。国家が唱える「安全」という言葉の先にどんな社会が待っているのか、想像力を働かせなければならない〉
いま、わたしたちは、引き返すことのできない歴史の分岐点に立っている。そのことを、絶対に忘れてはいけないだろう。
(編集部)
最終更新:2017.12.04 01:06
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